ミュージカル エリザベート 


         

                                 博多座 1階 A席  I列22番
                                               



                     当日のキャスト



   エリザベート 一路真輝  トート 内野聖陽  フランツ・ヨーゼフ 鈴木綜馬
   ルドルフ 浦井健治  エルマー 藤本隆宏  少年ルドルフ 光平崇弘
   ルキーニ 高嶋政宏   マックス 村井国夫 

2004年10月25日(月)ソワレ

エリザベート初のマチ・ソワ観劇です。 
ソワレまでの間、博多座の隣にあるファッションビルのカフェで、友人とお茶して
おりました。 
思い起こせば今年の1月、マチソワ観劇というものを初めて経験したのも博多座。
演目は「レ・ミゼラブル」でしたが折しも大雪、同じ窓からスノーボールの中に 
閉じこめられたように、降りしきる雪を眺めましたっけ。 
ほんの9ヶ月前のことなのに、なんだか何年も前のように感じられるのは、その間に
色々な舞台を見て、精神的には世界旅行状態(笑)だからかもしれません。 


さて、ソワレもほぼ満員のお客様です。 
内野トートにお会いするのは3回目。すっかりお馴染みになりましたが、マチネで
山口トートの魅力にも改めてハマリそうだし、ちょっと揺れる乙女ゴゴロですわ☆ 
 


 
第1幕 
 
 
内野トート登場 
 
ゴンドラでの登場シーン、ここの姿勢から両トートって違いますね。山口さんは 
正面を向いているけど、内野トートは左手をゴンドラ正面の鷲の首にかけ、 
右手は後ろの壁の上の方についています。 
身体をちょっとひねったようにしていて、ドラマティックで悩ましいポーズ。 
もうこの場面から、内野ファンはセクシー光線にヤラレちゃうわけですね〜。
私も最初から血圧上がりそうです(笑) 
 
 
一路シシィが白いドレスで棺桶から蘇ります。
ほっそりして身体が軽そうなのが一路シシィの素敵なところ。 
他の死者たちと違って、彼女だけはゾンビみたいじゃないんですね。 
トートがシシィの棺だけ上の方から引き出してくるのを初めて見たとき、特別の存在を
表しているんだなあと思いました。 
 
 
そう、あの棺はたとえるならトートの宝石箱なのでしょうか。 
 
一番愛しい女性を永遠にしまっておく美しい箱。 
トートは時々シシィの死に顔を眺め、冷たい頬や髪の毛に 
触れて愛おしんでいるのかも。 
 
 
 
ポッセンホーフェン城 
 
村井マックスとシシィの会話の場面。ここでちょっとしたハプニングが。 
一路さん 「ママは言うことあるらしい」 の後の歌詞がちょこっと飛んでしまいました。 
ん?って考えているうちに 「逃げてみたいわ」 とつながったので、何が 
不足していたのかよくわからなかったけど、何百回も歌っていても、たまには 
こういうことがあるのですね。 
一瞬ハッとした村井さん、歌がちゃんと復活してホッとした反動なのか、マチネより
テンションが高くて、力が入った様子でした。
「アデュー、シシィ」の後は聞いたことないくらいの高笑い☆ 
 
 
 
冥界〜愛と死の輪舞 
 
以前の演出では、この場面のトートは退屈しのぎにチェスをしているという設定 
だったと聞きました。 
人間の生と死をもてあそぶトートのけだるい雰囲気に、チェスという小道具は 
ピッタリだと思うんだけど、どうしてやめちゃったのかなあ。
お盆の上でまわる舞台装置を今回採用しなかったことと関係があるのでしょうか。

 
マチネで山口トートにお会いしたばかりなので、どうしても両トートの違いが色々と
目につきます。 仮死状態だったシシィへの命の与え方も違うのですね。 
内野トートは、右手でさっと吹き払うような仕草が合図になっていました。 

 
「待って」と声をかけられて、じっと何かを考えているような内野さんの背中。 
いえ、決して山口さんが何も考えていないと言うわけでは(笑)。 
でも、内野トートの方が時間が少し長いのかな。 
こちらには見えないけど内野さん、「憶えていたのか・・・」って、小さく微笑みを
浮かべているんですねきっと。 
 
 
 
バートイシュル
 
フランツもマチネとソワレは別キャスト。 
石川フランツが女顔で優しい皇帝なら、鈴木フランツはもっと男性的で高貴な 
雰囲気の皇帝、どちらもそれぞれの魅力があって好きです。 
フランツとシシィが恋に落ちる場面、シシィの「自由に 生きていくのよ」で、 
楽しそうに笑うフランツ。  

一路さんと鈴木さんは夫婦役が多いという話をインタビュー記事で見かけましたが、 
デュエットの声の重なりが包み込むように穏やかで、とっても良かったです。
なぜかお二人のデュエットを聴くと、女性の手を包み込む男性の手を
連想するんですよね〜。
このコンビの声は相性が良いんだなあとつくづく思いました。 
 
 
 
結婚式 
 
高嶋ルキーニ 「ウイーン・アウグステン教会のたそがれどきの結婚式」 の
セリフが以前よりかなり早口で、芝居がかった言い方に変わってきました。 
 
うーん、この日は初見の人には全く聞き取れないスピードだったなあ。 
不幸の始まりはこの結婚からなのに、何も知らないのはおめでたいねって
揶揄してるのかな。
でも高嶋さん、観客はある意味あなたのセリフが頼りなんだから、 
ストーリーテラーの役目を忘れないで頂きたいですわ〜。 

 
シシィがドレスを目の前で着替える演出、もう慣れましたけどやっぱり正直言って
役柄にそぐわない印象がぬぐえません。
仮にも皇后様なんだし、お客様の前で着替えないといけない必然性もないしね〜。


ベールだけ、トートダンサーが付けてあげるとか、そういうのでも良かったのかな
・・・でもそれだと、絶対にオペラ座の地下の場面、クリスにベールをかぶせるところを
思い出してしまうでしょうね〜(笑)
上から厳かな様子で見下ろしている内野トート、「間違いはないか」の時だけ 
ふっと優しい表情になるところが、かえって残酷な魔物っぽくてツボでした☆ 
 
 
 
シェーンブルン宮殿 
 
結婚話を悔いる、村井パパと初風ゾフィのナンバー、安定した歌と演技で
楽しめるところですね。  


ところで余談ですけど、初風さんといえば、私はなんといっても宝塚の
「ベルサイユのばら」初代マリー・アントワネットの歌声が忘れられません。
二十数年前だけど初風さんのアントワネット、王妃にふさわしい気品と
鈴を転がすような美声、鳳蘭フェルゼンとのバランスも良かった記憶があります。 

当時テレビ放映で、何度か見たのですが、
「わたくしはフランスの女王なのですから・・!」の決めゼリフに、
子供だった私「ははーっ」とひれ伏すばかりでしたっけ(笑)。 
 
 
 
最後のダンス 
 
今日の内野トートは、全体的に熱くて激しいな〜。

 
トートのジェラシーと独占欲をあらわにするナンバーですけど、それに加えて
シシィのことを悪い女だと無言のうちに責めているような、シニカルな表情。 
「俺さ〜〜!」のシャウトも激しくて、皇帝の穏やかさとの対比が鮮やかです。
なにもかもかき乱すようなスピード感と熱に圧倒されました。 


フランツが律儀で礼儀正しく、ちょっと退屈な夫だとしたら、トートは不埒で
セクシーで刺激的な情人って感じかしら。まぁ奥さまどうしましょ(笑)

 
お隣の二人連れのお客様、以前から内野トートをご覧になっていたみたいで、
この暗転の時 「うまくなったね〜〜」 とタメ息みたいにお話していらっしゃって、
別に身内というわけじゃないのに 「うふふ。そうでしょう、そうでしょう。」 って
嬉しくなってしまいましたわ☆


ところで、この場面のシシィはトートに「嘘よ!」と言い放ちます。
相手は黄泉の帝王、生身の人間ではないけど、シシィは少女の頃に助けてくれた
トートを恐れてはいないのですね。


「我思う、ゆえに我あり」、シシィの想いがあるからトートが現れるわけで、
婚礼の夜にシシィを甘く責めるのは、トートの姿を借りた彼女自身の想いのような
気もいたします。

ま、こんな麗しい「死」なら自分の空想の産物であっても見てみたいですよね。
自分の部屋で、大音量で歌われるのはちょっと大変だけども(笑) 
  

 
ウイーンのカフェ 

男性ばかりの歌声が力強く響きます。
最近お気に入りの野沢ジュラ、「チェコスロバキア」の声がいつも抜きんでて
聞こえて綺麗です。
野沢さんはミュージカル初挑戦がこの「エリザベート」だそうですが、
華があるというか目をひく俳優さんですね。これからの活躍が楽しみ。


トートとの握手の後、藤本エルマーはあまり手を見ていませんでした。
細かいところだけど、エルマーがトートの手の冷たさに驚くという演出は
面白いと思うし、ハッキリ見せていただきたいなあ。 
 

 
シシィの部屋 

鈴木フランツ 「せめて今宵だけは」 で、ドアに手をついて、声を伸ばすところが
繊細で良かった。
石川フランツはシシィを愛しているけど、鈴木フランツは彼女を必要としている、
似ているけど求め方が違うような気もします。
母親への愛情と妻への愛情、彼にとってはどちらも大事なものなのだけど、
その表し方が不器用で、結局どちらにも不満を残してしまう。
フランツを見ていると、こういう男性ってたしかにいるよね〜と思ったりして。


燭台の炎が蒼く変わり、だれも入って来れないはずの部屋に座っている。
トートのこの登場シーン、いかにも魔物らしい雰囲気が好きですね〜。
歌詞にもありましたが、いつでもシシィを暗闇から見つめている。
この世の人間でないものに愛されてしまった不気味さ、それに慣れてしまって
いるシシィの異常さも感じられてゾクゾクするところです。


あいかわらず机の上での仕草がセクシーな内野トート、
優しく甘い声でシシィを誘います。「永遠の世界へ」のところでシシィのガウンを
肩からすべらせ、誘惑モード全開(笑)。

彼女の肌の香りを楽しむように顔を寄せたりして、ホントに今日の内野トートは
熱くからみつくように迫ってて、また私も血圧が・・(笑)。


 

第2幕 


 
戴冠式 
 
藤本エルマー、やっぱりかんしゃく持ちの乱暴者だなあ。 
「そう熱くなるな エルマー」 となだめる同志の腕を邪険に払いのけたりしてます。 
野沢ジュラと縄田シュテファンが、「リーダーがこれだと苦労するよな、お互い」
みたいなタメ息をついてるのが、なんだかリアルで笑えました☆ 
 


とにかく攻撃性が強い今日の内野トート、馬車の上の歌声も凄い。
「歯車を 止められはしないさ〜〜」 のラストで、音程をさらにあげて
シャウトするのは初めて聴いたような気がします。 
「私が踊る時」はシシィとの攻防が一番激しいところだけど、なんだか
今日の一路さんはちょっと気圧され気味かな。 
 

 
ルドルフの部屋 
 
光平ルドルフ、ちょっぴり最初の音程が危なっかしかったけど、後半はしっかり。 
内野トートはルドルフ君が向こうを向いたときに、目の表情をくるりと変えるのが
鮮やかですね〜。 
好奇心で小さな魂をもて遊ぼうとしている猫みたい。
あそこで舌なめずりしても不思議じゃないわ(笑) 
マチネで大天使みたいな山口トートにお会いしたあとだとなおさら、内野さんが 
表現する悪魔的なトートぶりが際だって感じられます。 
 
 
 
エリザベートの体操室 
 
内野さんの老ドクトル 「どうなさいました」 が、わざと年寄りっぽく声を
抑えてるんですけど、舞台らしいねばっこい発音が個人的には密かなツボ(笑)。


トートが正体をあらわした時、一路さんがすんでのところで逃げたら、
内野さんが勢いあまってソファにキスしたのに、ちょこっと笑ってごめんなさい閣下☆
思惑通りに手に入らないシシィを、ちょっとにらみつけるようにして去る気持ちも
よーくわかります。


黄泉の国に帰って、物陰から様子をうかがうトートダンサー達を尻目に、
爪をかんだりイライラする閣下を想像してしまいましたわ〜♪
 

 
ルドルフ登場

浦井ルドルフはマチ・ソワ両方で登場でした。
浦井さんは、もともと戦隊もののヒーロー役で芸能界デビューされたそうですが、
きっとお母さま方にも人気があったのでしょうね〜。つくづく美少年というか
女の子みたいに可愛い皇太子です。


 
ハンガリー独立運動
 
マチネで山口トートが浦井ルドルフを馬車に乗せたとき、笑顔で視線を交わすのに
びっくりしたのですが、内野トートはこの場面で全くといっていいほどルドルフを
見ていないんですね。
浦井ルドルフの方は、反対にトートの方を不安そうにじーっと見つめているのが、
まるで子犬みたいで可愛い。



逮捕
 
照明のトラブルなのか、ソワレは上から放射状にいくつか注ぐはずの照明が、
少なくなっていました。暗い中でほとんどスポットライト状態。
オペラ座公演の時にも似たようなことがありましたけど、照明ひとつでずいぶん
印象が変わるものです。緊迫感はこんな風に暗い方があるかな。
 

 
マイヤーリンク
 
トートダンサーから逃れて、奥に駆け込もうとするルドルフ。
最後に立ちふさがる内野トートが素早くターンして追いつめます。
冷たい猛禽類のような目がコワイ〜。


なんの躊躇もなく、とどめを刺すような内野トートの長い死の接吻は、
やっぱり鋭い刃物のイメージ。


ピストルを手にした瞬間、浦井さんにちょっと動揺の色が見えたけど、
キスされたあとは操り人形みたいになるパクルドの方が、内野トートとの雰囲気には
あっているような気がします。
ここでも内野トートはキスしたら、あとはルドルフに見向きもしない残酷な悪魔。


彼のターゲットはあくまでもシシィひとりなのですね。
可哀想だけどルドルフは利用されたに過ぎなかったんだなあと納得。
マチネで見た山口トートとの違いが面白いな〜。


 
夜のボート 
 
年老いたフランツとシシィの悲しい場面、この日ふと思ったのですが、
ここって雨が似合うような気がするのですが、いかがなものでしょうか。


夜のコート・ダジュールに音もなく降る霧雨。 
ぼんやりとかすむように見える二人の姿が、長い年月の後悔と寂寥感、 
それでもどこかに残るかすかな情感を感じさせてくれそうです。 


 
悪夢〜暗殺  

歌詞がかなり聞き取りにくいけど、トートとフランツの直接対決がドラマティック。
死と不幸に満ちたハプスブルク家のいずれ来る破滅の予兆が満ちてくる
ナンバーですが、私が一番好きなのは

「沈む世界に 別れを告げたなら」 という部分なのです。

生身の人間ではなくなり、遙か高みからトートと共にシシィが見下ろす世界の黄昏。

 
長い年月を闇とともに待ったトート、最後は正面を向き、両手を広げて
愛しい女性を腕に抱く瞬間を待っています。 
しっかし内野さん、シシィへの死の接吻が、えらく熱烈でしたわ〜。
気持ちの高ぶりの全てがこのキスにこもってます!!って感じ。
まさに一球入魂(爆)
抱きしめ方もしっかり、最後まで恋に燃えた閣下でした 


 

カーテンコールは全員で2回、お二人で2回だったかな。 
内野さんと一路さんだけのカーテンコールは、幕が上がったら内野さんが
スカートみたいに衣装の裾を両手で広げ、そのかげに小さくしゃがんだ一路さんが
隠れていて皆さん大笑い。
すっかり恒例になった一路さんの手へのキスと、客席への投げキスの嵐で
華やかに「幕」となりました。 



 
さて博多座でのエリザベート観劇はこの日がラスト。



しかし実は、このあと11月に上演された大阪梅田コマ劇場にも
2回、遠征して観劇することになりました。
結局都合7回、史実と幻想的なフィクションがからんだこのストーリーは、
個人的にツボにハマリましたね〜☆


山口祐一郎さんと内野聖陽さんという「歌」と「演技」のタイプが違う俳優さんの
両方の魅力があますところなく生かされたこの演目、今後もさらなる
進化と発展を心から祈っておりますわ。



でも、電光くんだけは新しい就職口を世話してあげた方が良いかもね・・笑 

 


さて「エリザベート」観劇日記、2004年版のしめくくりに、 
終演後のホワイエをご用意いたしました。 
 

 
恒例の(?)お遊び空想キャストもありますが、「エリザベート」という演目を見て
最初から持っていた疑問について、ちょっと浮かんだことなどを記しております。 
おつきあい頂ければ幸いでございます。 
 
 
 
ではお嬢さま、閉まるドアにご注意のうえ、 
ご用の階をお申し付け下さいませ。 
 
はい。かしこまりました。  
地階 ホワイエへ参りま〜す(なぜかデパガ・・笑)。



                   →エリザベート終演後のホワイエへ