生白い手首
零れ落ちる紅
ただソレだけが俺を俺で居させてくれた
―― リストカット・シンドローム ――
「っ…」
零れ落ちるのは唯の紅。
その紅を真っ白なタオルで受け止める。
白に紅が広がる瞬間。
ソレが一番落ち着く時。
何時からか自分を傷付ける事を覚えた。
だってソレはバランスを取る為には一番手軽で、一番効果的な方法だったから。
最初は痛みを伴ったその行為。
――でも、時と共に感じなくなった。
最初は隠すようにしていた傷口。
――それすらどうでも良くなった。
60年代に流行した『リストカット・シンドローム』。
当時はディスコの客が次々と手首を切っていたなんて言われた位。
その状態に今自分がいるなんて何だか少し笑えてくるから不思議だ。
とある本によればリストカットで死ねる確立は5%ぐらいなのだという。
それを分かっていてやるのだから、リストカットをする人間は本当は死にたくないのだと言う人間も少なくない。
そう、例に漏れず自分も死ぬ気でこの行為を行っている訳ではない。
唯傷付けたいのだ。自分で自分を。
後は追わないと約束した。
だから死ねない。
それでも俺は俺を許せない。
だから自分自身を傷付ける。
俺は彼に守られて。
彼は俺を置いて逝って。
これからどうすればいいのかなんて分からなかった。
これからどうすればいいのかなんて分かりたくなかった。
唯分かるのは自分が犯してしまった確かな間違いと、それによって大切な人が居なくなってしまったという事実だけ。
取り返しなどつかない事は分かっていた。
どう足掻いても過去は変わらないと知っていた。
だからこそ、俺はどうする事も出来ず唯自分を傷付け続ける。
だって他にどうしたらいいかなんて分からなかったから。
だって他にどうしたいかなんて分からなかったから。
「どうして置いていったんだよ…」
守ってなんか欲しくなかった。
自分だけ助かったって何にもならないのに。
「 」
それは何時まで経っても朽ちる事の無い自傷行為と言う名の愛の形。
END.
最近書くものがみんな病んでます…(爆)
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