ずっとずっと心の中に居る人

 それは離れてしまった今でも変わる事は無い








別れても好きな人








「新一。支度出来た?」
「あと少し。直ぐ行くから下で待っててくれねえか?」
「うん、解った。じゃあ待ってるから早くしてね?」
「ああ。解ってるよ」


 新一にそれだけ言って去っていく蘭の後姿に新一は微笑んで、彼女が完全に居なくなってからその表情を硬いものにする。

 彼女の明るさと優しさに救われてここまで来た。
 そして今日この日を迎える事が出来た。
 それは決して後悔のない日々。

 けれど一つだけ…独りだけ胸の中にまるで燃え残って燻っているものがある。




 そっと手を伸ばして鍵のついた引き出しを開ける。

 それはこの二年間ずっと封印してきた写真や貴金属等が入った箱。
 彼との思い出の品々。
 2人して笑いあっている写真だとか…記念日に貰った思い出の品だとか。

 ずっとずっと目を背けて、けれど大切に大切に仕舞われていた思い出の品々。


「快斗…」


 その中の一枚の写真を手に取り、小さな小さな声で二年間呼ぶ事のなかった彼の名前を紡ぐ。


「俺は今でもお前を……」


 呼ぶ事はなくなっても、会う事はなくなっても、何時も思うのは傍に居る蘭の事ではなく別れた彼のことばかり。


「新一〜!」
「ああ…直ぐ行く」


 じっと写真に見入っていた新一に下にいる、今日この日妻になる蘭から声がかかる。
 その声に答えながら新一はそっとその写真を元の引き出しに戻し、再び鍵をかける。

 その鍵を再び開ける日が来るのか、開けるとしたら何時になるのか解らないけれどこれは自分にとってかけがえのない宝物だから。


「お前も…幸せになれよ…」


 別々の道を歩んだ自分達だけれど。
 それでも彼の幸せを思う気持ちは変わらないから。

 其れは例えどんな人間の隣に立っていようとも変わらない真実。






「悪かったな待たせて」
「もう!新一ったら女の子より用意が遅いってどういう事なのよ!」
「悪かったって」


 くすくすと笑い合いながら教会へ向かう為の車へと乗り込む。

 けれどその心の中には…。




 ―――快斗…俺は今でもお前を…








END.


この題名が使いたかっただけ…(死)
蘭ちゃん…ごめんね…ι


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