好きだから言わない。愛してるから聞かない。

 愛してるから聞けない。好きだから言えない。


 2人の気持ちは同じなのに、だからこそ口には出来ない互いの秘密。




───罪 と 罰。【side C】




 深夜2時──丑三つ時。
 夜半の工藤邸にひっそりと明かりが灯る…。

「ぅわ…、やっぱり埃っぽいな…」

 明かりを付けたのは、今ではこの家の主となっている工藤 新一……の名を持つ子供。
 一身上の都合により、不本意ながらも2度目の小学生を全うしている──今は江戸川 コナンを名乗る人物。
 久々の我が家は長い間に人が住んで居なかったせいか、なんだかもの寂しく…心なしか冷たい空気を纏っている…

「…ま、仕方ねぇよな。オレが1人になれる場所って言えば、ここくらいしかねぇんだからな…」

 溜息混じりに自笑して、コナンはすぐに明かりを消した。
 本来なら、一瞬たりとも明かりなど…人がいる事を周囲に気付かれてはいけないのだ。
 当然その事を一番よく理解しているコナンも、当初はそんなつもりなどなく…
 それでも、自分の心を支配している感情を何とかしたくて……目の前に広がる暗黒を消し去りたくて…

 …思わず、スイッチに手が伸びた。

 それは無意識下でのSOSだったのかもしれない。
 今、心を支配しているモノが何なのか…それを一番よく解っているのもコナンだ。

 日ごろは決して口にはしない──出来ない思いが胸を締めつける。


「…いってぇ…なぁ、ホント」

 久方振りの自室に入り、コナンは倒れ込むようにしてベッド横へなる。
 今は小さな身体をより一層小さく丸め、何かに耐えるように蹲る。

「明日…、無事な姿でも拝ませろよ…? 快斗…」

 声に出して彼の名前を呼ぶ…
 そうする事で、彼が今日も無事に『仕事』を終えたであろう、と信じる事にする。


 月夜を翔ける白の魔術師。
 その正体を知ったのは…もう随分前かもしれない。

 一目見て、彼がKIDだと気付いた。

 工藤 新一とそっくりな顔を持ち…全く異なる空気と気配を持つ男…
 一瞬のすれ違いだったが、コナンにとっては充分過ぎるほどの時間。

 彼が…素の顔で自分の前に現れた時には、心底驚いたのを今でも覚えている。


 ──何も語らない月の化身。

 何の為に盗むのか…
 何故、周囲を欺いてまで1人、戦いの場へと身を躍らせるのか…

 その問いに答えられるのは、本人を除けばコナンだけだろう。

 でも、コナンは何も言わない。
 気付いた事を誰にも…本人にさえ言わず、そっと胸に仕舞い込んだ。

 だから時々こうして苦しくなる。
 彼の全てをかけた秘密は重過ぎて…

 ……何度も、彼に告げようと口を開いては…閉じる。


 彼は何も語らないから…。
 コナンが気付いているであろう事にも何も言わず…いつも太陽のような笑顔を向けるから…

 …だから、コナンも何も言わない。何も…聞かない。


 それが、快斗と…KIDに対する精一杯の愛情だから…



「さっさと奪って…帰って来い」



 ──深夜2時。丑三つ時…

 今日は、白い鳥が夜空を翔ける日…──





もう切なくて切なくて思わず泣きそうに…。
何時もとは違う雰囲気の作品でとても素敵ですVv
有難うございましたVv


【side K】

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