彼が今日も怪我をしませんように
彼が今日も生きてここへ帰ってきますように
彼に悲しい事が起こりませんように
彼が何時も笑っていられますように
〜月に祈る〜
快斗がKIDの仕事で出かける晩、新一はリビングの窓から月を見上げる。
家の中で一番大きな窓。
ここなら良く月が見えるから。
そして、新一は祈り続ける。
KIDの守護星である『月』に。
「ただいま」
いつもの様に軽く警察を巻き、今日の獲物がパンドラでないことを確かめると早々に返却してきた。
そしていつもの様にリビングの窓から家に入る。
彼がそこで待っていてくれるのを知っているから。
「おかえり。早かったな」
いつもと同じように同じ場所で出迎えてくれる最愛の名探偵。
彼の元に帰ってきてやっと仕事が終わったと思える様になったのは何時からだったか。
「今日はね、白馬も居なかったからちょろかったよ♪」
「その言葉中森警部が聞いたら怒涛の勢いできれるだろうな」
そう笑い合い、KIDは黒羽快斗に戻る。
「新一、コーヒー飲む?」
「いや、疲れてんだろ? 俺が煎れてやるよ」
新一は先程まで手に持っていた本を片付けるとキッチンに行ってしまった。
「…ここはホント綺麗に見えるな」
快斗は新一がキッチンに行ったのを確認すると一人月を見上げ呟いた。
ここからは本当に良く見える。
自分の守護星である『月』が。
いつからだろう。
彼が仕事帰りの自分をここで待っていてくれる様になったのは。
いつだったろう。
ここが家の中で一番綺麗に月が見えるのだと知ったのは。
彼はここから見える月と自分を重ねているのだろうか。
彼は自分がいない間、月を眺めてどんな気持ちでいるのだろうか。
「快斗、コーヒー…」
窓からいつもは自分がしている様に月を眺めている快斗に新一は一瞬目を奪われた。
青白い月の光に照らされ、その身には凛とした冷涼な気配を纏い快斗は只佇んでいた。
その姿が強く、けれど儚くも見え新一は思わず快斗を抱きしめた。
「新一…どうしたの?」
「お前がどっかいっちまうんじゃないかと思ってな」
おもわず思ってしまった。
快斗を『月』に連れて行かれると。
彼が持つ雰囲気は漆黒の闇の中に輝く彼の守護星と同じモノ。
冷たく青白くそれでいて何処か温かみすら感じられる光。
彼の纏う気配は月そのもの。
だから何時か彼を『月』に連れて行かれてしまいそうだと。
「大丈夫だよ。俺はずっと側にいるから」
不安げに揺れる新一の瞳に快斗は苦笑する。
自分の帰る場所は彼の元でしかないのに。
新一を安心させたくてそっと抱きしめる。
その暖かさに新一は安堵する。
彼はまだここに居てくれる。
自分の元にいてくれる。
新一が快斗を抱きしめ返していた腕に力を込めると快斗はさらに苦笑しながら耳元で呟く。
「大丈夫。俺の帰る場所は『月』じゃなくてこの腕の中だから」
彼が無理をしませんように
彼が今日も自分を待っていてくれますように
彼に悲しい事が起きませんように
彼が何時も笑っていられますように
願わくば彼といつまでも一緒にいられますように
END.
感の良いもとい『GLAY』の古い曲が好きな方ならご存知かと。
そう、彼らの曲の『月に祈る』を聞いて書きました。
先日友人とカラオケに行った際初めて聞いたんですが、これは快新だろう!と(笑)
でも、元の曲は凄く良いんですよ。なのにこんなssしか書けませんでしたが…(苦笑)
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