苦しくて痛くて辛くて

 でもだからこそ今は幸せ…






障害の向こう側






「恋は障害が多い程燃えるって言うけど俺達って障害ばっかりじゃない?」


 すっかりおねむモードに入っているのを承知で腕の中の新一に尋ねれば、意外にもまともに答えが返ってきた。


「何今更な事言ってんだよ…」


 質問に対してなのか、眠い事に対してなのか解らないが非常に機嫌悪そうに言われては快斗も苦笑するしかない。


「だってさ、俺は新一に捕まる筈の『犯罪者』で新一は俺を捕まえる筈の『名探偵』じゃん」


 正に天敵。正に宿敵。正に対極の関係。
 障害なんて可愛らしい物では済まない様な気がするのは俺だけだろうか?


「………でも、だからこそ会えたんじゃねえか…」


 眠さの為にとろんとしている瞳で、けれど紡がれた言葉はしっかりとしていて。
 新一から珍しく聞くことの出来た素直な言葉に快斗は目を細める。


「そうだね」


 俺が『KID』で、新一が『コナン』だったからこそ出会う事が出来た。
 お互いに偽りの姿で、偽りの称号で、だからこそ出会う事が出来たから。

 ある意味ではそんな関係にも感謝なのだけれど。

 でもそれも今この幸せがあるからこんな事が言える訳であって…。


「でも当時は結構辛かったなあ」


 一目見たときからその瞳の輝きに心奪われてしまって。
 けれどその立場の違いから手を伸ばす事を諦めて。
 それでも他の誰かが彼の隣に立つのを許せなくて。

 随分葛藤に苦しんだものだった。


「ンなもん俺だって同じだよ…」


 少し感傷的になりながら呟けば、一人だけ辛かったような言い方をするなと怒られて。
 まあ今だから新一の気持ちも解るんだけど。


「うん、新一も俺と同じ気持ちでいてくれたんだよね」


 満面の笑みでそう言えば、自分の言った言葉の意味に気付いたのか新一は真っ赤になって腕の中に隠れてしまって。
 そんな微笑ましい様子に快斗は幸せを覚える。

 だってこんな姿は自分にしか見せないと知っているから。


「新一。ありがとう」


 俺と同じ気持ちで、俺と同じ苦しみを乗り越えてくれてありがとう。
 そのお陰で今の幸せがあるのだから。


「………俺も…」
「ん?」
「ありがとう…」


 恥ずかしいのか腕の中に隠れたままだったけれど、素直にそう言ってくれた新一を快斗はぎゅっと抱きしめた。
 新一と、今ここにある幸せ全てを抱き締めるように…。








END.


ある意味らぶらぶバカップルv(笑)


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