「お前俺と甘い物とどっちが好きなんだ?」
これが本日の工藤邸のお茶請けになるのだった
〜『好き』と『好き』〜
「な…なんで突然…?」
クッキー片手にルンルンと、それはそれは幸せそうに三時のティータイムを楽しんでいた快斗は新一のその質問に思いっきり目を見開いて固まった。
新一の口から出てきたとは思えないその台詞に、もしかして焼きもち焼いてくれてる?何て期待してみたりしたのだが…、
「いや、お前が『甘いもの好き〜♪』って幸せそうにクッキー食ってたから聞いてみたくなっただけだ」
そこら辺はやっぱり新一で、言外に「深い意味はない、気にするな。」と言うのがありありと解り快斗は内心でため息をつく。
焼きもち云々はこの際良いとして、どうしてこの人は今まで散々…それこそ毎日言っているのに理解してはくれないのだろうか。
「もちろん新一に決まってるでしょ?」
俺の一番好きなのは新一だって毎日言ってるじゃん。
「じゃあ甘いものは好きじゃないのか?」
快斗の熱烈な告白にも新一は思いっきり真顔でそう答えてくれる。
いや…だからそいういう意味じゃなくて…ι
「あのねえ、新一と甘い物を同列で扱える筈ないでしょ?」
「そうなのか?」
何とか説得を試みればわざとじゃなくて本心から首を捻ってくれる恋人に泣きたくなるのを抑えつつ、取り合えず解りやすい例を提示してみる事にした。
「じゃあ新一は俺と推理小説だったらどっちが好きな訳?」
「推理小説」
「………」
思いっきり惨敗ι
しかも即答はないんじゃないかな新一君…。
そりゃさあ…新一にそれを聞いた俺が馬鹿だったって言われればそうなんだけど…。
「どうした?」
新一の答えに、思いっきり机に突っ伏してしまった快斗に新一は何か悪い事言ったのか?とさっぱり解っていないようで。
その姿に快斗は更に机とお友達になってしまう。
「もういいです…俺が悪かっただけだから…」
新一にそれを聞いちゃった俺が悪かったね…うんうん。
「何だよ」
快斗の少々投げやりな態度に新一はむっとすると、抗議の代わりとばかりに机とお友達に快斗の手から問題のクッキーを奪い取りそのまま自分の口の中へと放り込んだ。
「あっ! ちょっと新一〜!」
それ最後の一枚だったのにぃ〜!!
「………甘い」
快斗の泣きながらの訴えも、新一の嫌そうに言われたその言葉に遮られる。
「そんなに嫌そうに言わなくたって…ι」
そりゃ新一君には甘いだろうけどさぁ。
「何でお前こんなもん『好き』なんて言えるんだよ」
俺からすればある意味尊敬ものだぞ?
「そんなので尊敬されても嬉しくないし…」
てか、寧ろ嫌…ι
何処までもゴーイング・マイ・ウェイな新一にはあ…と一つ快斗はため息を吐くと、ふと目に入った新一のマグカップにふむ、ともう一つの例を思いついた。
「じゃあさ新一?」
「ん?」
「俺とコーヒーとどっちが好き?」
これなら結構俺に対する質問に近いんじゃない?
「コーヒーとお前?」
「そう。どっちが好き?」
「んー……」
快斗の質問に何時もの推理時のポーズで難しい顔をして考えている新一に快斗は、おや?と少し意外そうな顔をしていた。
(もしかして…俺コーヒーには勝てる?)
推理小説とまではいかないが、それでも無類のコーヒー好きの名探偵。
そのコーヒーに勝てるとなれば快斗としても嬉しい訳で、悩む新一に対して少し頬が緩みそうになった刹那…。
「コーヒー」
と見事なまでにある意味予想通りな答えが返ってきた(爆)
「………そうだよね…新一が俺って言ってくれる訳ないし…ι」
期待した俺がいけませんでしたね…はい…。
「何だよその言い方は」
まるで俺がいけないみたいじゃねえか。
ぷぅっと頬を子供のように膨らまして拗ねてしまう新一がものすご〜く可愛らしくて、机に突っ伏していた顔を上げると快斗はそのまま目の前の真っ白な手をぎゅっと握り締めた。
「新一ってばかわい〜♪」
「可愛いって言うんじゃねえ!」
俺はお前と同い年だ!!しかもお前より年上だ!!(一ヶ月とちょっとだけじゃんιby快斗/それでも年上は年上だ!by新一)
「だって可愛いんだもんv」
同い年でも年上でも新一君は可愛いの〜vv
そうやってムキにる所がますます可愛いんだよねvvと頭の中でもハートを乱舞させまくりながら快斗はテーブルの上に乗せられているすべすべの新一の手に頬を寄せてみる。
「ん〜すべすべ〜vv」
「こら快斗! 何すんだよ!」
「だって新一の手ってすべすべなんだもんvv」
「理由になってねえだろうが!!」
調子に乗って新一の手にすりすりとしていれば思いっきり振り払われて、文句を言おうと口を開けば思いっきりお茶請けのマフィンを突っ込まれた。
「んっ!? …ふぐっ……」
「ったく…油断も隙もありゃしねえ…」
ぶちぶちと文句を言いながらも、ふがふがと口の中のマフィンを必死に消費しようとしている快斗の姿に笑いを誘われたのか新一の口元に笑みが浮かぶ。
「いいだろ?お前甘いもの好きだし」
「……んんっ…ふぐふぐっ…」
「わあった。わあったから食ってから喋れ」
口にマフィンを含んだまま抗議の声を上げようとする快斗に新一は取り合えず快斗の手元にあった紅茶を差し出してやる。
それを快斗は素直に受け取ると、紅茶でマフィンを喉に流し込んだ。
「しんいち〜! 苦しいってば〜!!」
「お前が悪い」
「でも死ぬかと思ったじゃん!」
「怪盗KIDがそんなもんで死んだらお笑い種だな」
「新一の意地悪…ι」
どんなに抗議したところで新一に勝てる筈が無くて、快斗は泣く泣くそれ以上の抗議の言葉を飲み込んだ。
「でもでも新一の手って綺麗で好きなんだもん!」
「………好きねえ…」
快斗の一言にそう呟きながら何時もの推理ポーズで考え込んでしまった新一に快斗は首を傾げて。
(おれそんなに新一の興味引くような発言した?)
と頭の中で考え込んでみるが何時もと同じ様な発言をした事しか解らず、諦めて結論を出す事を放棄した。
「新一?」
「……日本語はややこしいよな…」
「もしも〜し?」
「…漢字で書き分けも出来ねえしな」
「…しんいちく〜ん?」
「やっぱりこういう時は英語の方が便利だよな…」
「し〜んいちぃ〜?」
すっかり自分の世界に入ってしまっている新一の意識をこちらに向けようとするが、それも叶わず。
快斗は新一を引き戻すのを諦めて仕方なく再び紅茶に口を付ける。
すると何やら一人で頷いていた新一の考えが纏まったのか、やっとその視線が快斗に合わせられる。
「新一。何考えてたの?」
「ん? いや、日本語は便利だけど不便なあ…と思ってな」
「??」
新一の返答に思いっきりはてなマークを浮かべまくっている快斗に苦笑を一つして、とりあえず答えを導き出す手伝いをしてやる。
「お前が俺の事『好き』だって言っただろ?」
「うん」
「で、甘い物も『好き』だって言っただろ?」
「うん。言ったけど…」
未だ良く解っていない快斗が首を傾げつつ新一にその先を尋ねるように言葉を切れば新一はその先をにこやかに続ける。
「だから英語なら解り易いと思ってな」
「ああ…『love』か『like』って事か…」
「そういう事」
納得した快斗に新一も頷いてみせて、これで三時のお茶会は終わりだとばかりに手近にあったお皿を片付けようと手を伸ばす。
「ああ、いいよ新一。俺がやるから♪」
「そうか?」
「うん♪ あ、コーヒーもう一杯飲む?」
読書のお供に必要なんじゃない?
「ん。貰う」
快斗の申し出を有難く受け取って、新一は素直に伸ばしかけた手をしまい座っていたダイニングテーブルの椅子からソファーへと移動しようと席を立つ。
が、そこで何を思ったのかいそいそと片付けだしている快斗を振り返る。
「ん? どうしたの新一?」
「いや…お前に一個だけ言っててやろうと思って」
「何?」
「………俺のお前に対する好きは『like』じゃねえから」
「え…新一それって……」
「皆までは言ってやらねえ///」
言葉にしなくても真っ赤になった新一の顔が全てを物語っていて。
そんな新一に快斗はにっこりと微笑んで告げたのだった。
「俺も新一の事愛してるよv」
END.
………時間を空けて続きを書いてはいけないとひしひしと感じました(爆死)
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