人には生きて行くうえで悩みが付き物である


 それは稀代の名探偵といえども例外ではない…








困ったときはお隣へ?
〜哀ちゃんのお悩み相談(?)室〜








「…で、どうしたら戻ってくると思う?」
「だからどうしてそれを私に相談にくるのよ…」
「こんな事他の奴に言えるかよ…」


 珍しくしょんぼりとしてしまっている新一と、その様子にため息をつく哀。

 どうしてこんな事態になっているのか?
 それは三時間程前お隣で起こったある事件が原因だった。










「新一の馬鹿〜!!」
「馬鹿はお前だバ快斗!!」


 傍から見れば工藤邸の何時ものやり取り。
 けれど、何時もと違うのは快斗が泣き真似ではなく本気で涙ぐんでいたという事。


「何で俺との約束より白馬との約束優先するの〜!!」
「しょうがねえだろ! 明日までなんだよ!」


 事の起こりは3日前の水曜日。
 事件帰りにたまたま白馬に出会って、今度の日曜日にホームズの展示会に行かないかと誘われた。
 もちろん三度の飯よりホームズが好きな新一が断る筈もなく、白馬の思惑通りに二つ返事で了承した訳だが…。


「でも俺の方が先に約束してたじゃん!!」


 そう、今日の今日までさっぱり忘れていたが明日快斗と買い物に行くという約束を先週からしていたのだった。


「買い物は来週でも行けるだろ? 展示会は明日までなんだよ」


 何とも勝手な言い分ではあるが、快斗も新一のホームズ好きは嫌と言うほど知っている。
 だから泣く泣く、快斗も妥協案を出してみる。


「解った、買い物は諦めるから。だから、あいつと行くぐらいなら俺と行こ?」


 しかし、快斗が出した妥協案も新一には通じないらしい。


「あのな…俺は行きたい奴と行きたいんだ」

 行きたい訳でもない奴を無理矢理連れてったらホームズに失礼だろうが!


 新一さん…正論なんだか正論じゃないんだか解りませんι


「…新一は俺とホームズとどっちが好きなのさ…」
「んなもんホームズに決まってんだろ」


 そう、即答で言ってしまったその一言がいけなかった。
 一週間前からそれこそ指折り(…)新一とのお買い物を楽しみにしていた快斗に、このタイミングでそれは非常にいけなかった。


「…解った、もういい! ………黒羽快斗、実家に帰らせて頂きます!!


 工藤邸に最後に響き渡ったのは、快斗の切実な叫びだった…(爆)










「それで本当に出て行ったの? あの人は…」
「ああ…」
「馬鹿ね」


 新一の話を聞いていた哀の口からは大きなため息が漏れるばかりである。


「大体何なのその台詞は」

 どこかの専業主婦じゃあるまいし。

「でもあいつの実家は別にある訳だし…」

 それに主婦業はやってたんだから、一応間違ってはいないだろ?


 新一さん…間違ってはいないですがそれで納得して良いんですか?(爆)


「工藤君…問題はそこじゃないでしょ?」

 お願いだからこれ以上事をややこしくしないで頂戴。


 逃げるようにコーヒーに口をつける哀に新一もため息を零す。


「そりゃ俺だって悪かったとは思ってるけどさ…」

 約束は約束だったし…。

「だったら素直に一緒に買い物に行ってあげればいいでしょう?」

 電話でもして、素直に「明日買い物に行こう。」とでも言えば直ぐに戻ってくるわよ。

「でもホームズの展示会は譲れない!!」
「………工藤君。貴方本当に黒羽君に戻ってきて欲しいの?」
「ああ」


 新一の表情が至って真面目なものである事に哀は更にため息を零す。


「このまま行くと永遠に平行線よ?」

(まあ3日もすれば我慢できなくなって戻ってくるんでしょうけど)


 心の中ではそう付け足しながらも、表情には微塵もそんな事は出さない。


「そうなんだよな…」


 どうやら相当悩んでいるらしい新一は何時ものパターンからすれば快斗が直ぐ帰ってくるという事すら頭にはない様で。
 仕方なく哀は救いの手を差し伸べてやる。


「3人で行けばいいじゃない」
「……え?」
「だから、明日の展示会に3人で行けばいいんじゃないかって言ってるのよ」
「3人…?」
「そう。それなら帰りに黒羽君と買い物も出来るし、貴方の大好きなホームズを語り合える人も居て万々歳じゃない」

 二人っきりで買い物、とは約束してないんでしょ?それなら約束は果たした事になるんじゃないの?

「そうか…そうだよな!」


 哀の言葉になにやら物凄く深く納得している様子の名探偵。
 目の前の哀が妖しげな笑みを浮かべている事などまったくもって気づいていない(笑)


「さんきゅー灰原。俺快斗に電話してくる」
「いいえ、どういたしまして。そうそう、黒羽君に何か文句を言われたら私の提案だと言っておきなさい」
「ああ、そうする」


 そのまま走って家に向かう新一を哀は非常に楽しげに見送った。


「明日帰ってきた後が楽しみね」


表面上は爽やかにそんな事を言ってみたりもするが心持は…。


(まったく…工藤君の体調管理を放り出して実家なんかに帰った罰よ)


 であったりする。
 灰原哀…またの名を工藤新一至上主義者(爆)



 次の日の快斗が不機嫌ながらも、新一にも哀にも文句一つ言えなかったのは言わずもがな…。









END.


快斗のあの台詞を書きたかっただけ(爆)
やっぱり哀ちゃん最強っていうことで…(笑)

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