「お前その香り似合わない」
「え?」
言われた言葉にちょこっとショックを受けてみたり
香水
ちょっと甘めのムスクの香り。
既製品そのままでは詰まらないから自分で調合したソレ。
勿論お仕事の時は無味無臭(…)が基本だけど、私生活ぐらいいいかと作ったソレ。
周りの女連中には評判も良かったし、似合っているとも言われた。
男連中には妬みも籠められていたのか「嫌味なぐらい似合っている」そう言われる事も多かったのに…。
「そんなに似合わない?」
「似合わない」
自分的には結構気に入っていたのにと、ちょっとへこんで。
でも、人を見透かしてしまう程のこの慧眼の持ち主の恋人が似合わないというのだから本当に似合わないのかもしれない。
本当の自分には。
「何か作り物っぽい…」
ああ、まったく。
何とも確信めいた事を言って下さる。
「じゃあ、新一はどんな香りが俺には似合うと思う?」
「んー…」
いつもの様に顎に手を当てて考え込む彼。
その考え込んでいるところにつけこんでぎゅーっと彼を抱き締めてみる。
思ったように何の抵抗も返って来ない。
調子に乗って彼の体温を楽しんでいると、
「何やってんだよ…」
呆れた顔と平手打ちが返って来た。
どうやら結論に至ったらしい。
「新ちゃん…痛い;」
「誰が新ちゃんだ」
「じゃあ…女王様?」
「もういっぱつ引っ叩かれたいか?」
ふるふると精一杯に首を振って。
先程思いっきり叩かれた頬を押さえた。
何だか熱を持ってきたような気がするソコ。
後で氷でも当てておかないと明日は酷い事になってしまうだろう。
「で、新一くんは結局どんな香りが俺には似合うと思うの?」
もう一発は叩かれたくない。
そんな気持ち+αから彼がもう結論に達したであろう事を聞いてみる。
何ていうかその辺は彼。
先程の女王様(…)の片鱗すら見せずにまともにその質問に答えてくれた。
「んー…お前に似合うのはこんな作り物っぽいのじゃなくて…」
「…?」
「もっと…。そう、太陽の匂いかな」
「太陽…?」
「ああ。俗に言う『お日様の匂い』ってやつ?」
ふむっと彼が考える時と同じポーズをして。
その後、ポンッと手を叩いて納得した。
「つまり、俺は新一のお日様って事でv」
「どこをどうしたらそうなるんだ?」
彼にとっては俺の発想は飛躍的発想過ぎて謎らしい。
「いや、新一くんってさ全然外出ないじゃん?」
「そんなことない」
「あ、事件とか新刊が発売になったとか、そういうのは抜きでだよ?」
「………」
「だからきっと時々お日様の匂いが恋しくなるんだよ」
うんうん、と納得して。
ぎゅーっと新一を抱き締めた。
「だから俺が新一のお日様なのv」
おまけ:その後の座談会vv
「いや、そういう訳じゃないだろ」
「んじゃ、どういう訳?」
「多分…」
「…?」
「外に干してあった布団とか洗濯物とかそういう類いと同じって事じゃねえ?」
「!?」
「お前主夫だし」
「………」
「でもアレって妙にふわふわで気持ちいいんだよな…。布団とか無意味に寝転がりたくなるし…」
「じゃあ俺もお日様の匂いさせてたらぎゅーってしてくれるの?」
「………いっぺん洗濯物と一緒に干されてくるか?」
「じゃあ一緒に外でお昼寝しよv」
「お前一人でしてこいって……ι」