「ふんふ〜ん♪」
ルンルンとして郵便箱に向かえば
今まさにインターフォンを押そうとしている郵便屋さんを発見した
〜新一君のお年玉事情〜
「明けましておめでとうございます♪」
「あ、快斗君。おめでとうございます」
何気に顔馴染みになっている彼に新年のご挨拶をする。
「元旦からご苦労様ですね」
「まあ仕事だからね」
苦笑する彼と少しだけ世間話をして年賀状を受け取る。
流石に有名な彼宛の年賀状は多く、その量は半端ではない。
袋を用意してきて良かったなと心底思う。
「多分また後で届くと思うから」
僕だけじゃ全部持ってくるの無理だったんだよ。
「そ…そうですか…ι」
一体どれだけ届くのか…去年の量を思い出して溜め息を吐く。
整理するのは自分だから。
「あ、そうそう。これは年賀状じゃないんだけど…」
「?」
はい、っと渡されたやたら分厚い封筒に入ったそれ。
それを渡されて快斗は首を捻る。
差出人は…『工藤優作』
何だか嫌な予感がしなくもないのだが…。
「どうも♪」
「いえいえ。それじゃまた」
「ご苦労様でした♪」
そんな嫌な予感はおくびにも出さずにっこりと営業スマイルを振りまいて、年賀状の入った袋とその分厚い封筒を持って家に入る。
「新一〜。年賀状来たよ〜」
「ん」
今日も今日とて本の虫の新一の視線は相変わらず本に落とされたままで。
構って貰えないのは解り切っているから、諦めて快斗は年賀状の分類を始める。
友人、警察関係者、事件関係者からのお礼も兼ねたもの、それからファンの方々。
それら全てを整理しつつ、頭に入れていく。
この中から彼に仇なす者が現れないとも限らないから。
そうやってテキパキと整理していれば、肩の辺りに気配を感じた。
「ん?」
「…お前自分の年賀状はいいのか?」
広さがある為ダイニングテーブルの椅子に座って整理している快斗の後ろから可愛らしくその手元を覗き込んでくる新一に笑みが零れる。
無意識でやっているから更に可愛い。
「ああ、後で取りに行って来るよ」
「…正月ぐらい実家に帰ればいいのに」
「い〜や♪俺は新一とお正月したいのv」
にっこりと微笑んで年末からずっと言われ続けている事に同じ言葉を返して。
呆れた様な顔を浮かべる新一の瞳がそれを裏切っている事に内心でほくそ笑む。
何だかんだ言っても新一だって一緒に居たいと思ってくれていることは解っているから。
「あ…」
「ん?」
どうやら何かに気付いたらしい新一の視線を追って見れば、その視線の先は先程受け取った封筒。
「ああ。優作さんから来てたよ」
「…やっぱり」
「?」
どうやら差出人の予想がついていたらしい新一に首を傾げつつ、その封筒を渡してやる。
「…ったく、今年もこれかよ」
「??」
ぶつぶつ言いながら新一は封筒を開封していく。
「新一それ…」
「ああ…」
「何でまた……図書カード??」
そこから出てきたものは、可愛らしいピーター○ビットの絵が描かれている図書カード。
一体何枚あるのか解らない程の図書カードの束に快斗は首を傾げる。
確か優作は新一にカードも預けてあるし、新一自身の口座にもこの自宅にもそれこそ使い切れない程の現金がある。
どうして今更こんな図書カードが必要なのか解らない。
「………お年玉」
「………は?」
「だから親父から俺へのお年玉なんだよ」
ぼそっと言われた新一から聞くには些か可愛らしい言葉に一瞬呆けた快斗に新一は再度同じ言葉を繰り返した。
「お年玉って……」
何で図書カード!?
漸く自分を取り戻したらしい快斗の反応すら新一は予想の内だったらしく、溜め息を吐いて快斗の横の椅子に座ると仕方なく説明してやる。
「うちの両親ってそれなりに有名だろ?」
「…いや新一君。それなりどころじゃなくかなり有名です…ι」
新一の些か間違った認識を正そうと快斗は口を開くが、「そんな事はどうでもいい」と言われてしまう。
「で、小さい頃から結構色んな人にお年玉貰ってたんだよ」
「ああ。それは俺も解るかも」
快斗の父親も有名なマジシャンだった為、快斗も正月にはやはりかなりの量のお年玉を確保していた。
「だから額も結構な額になるだろ?」
「うん。俺は母さんに預かって貰ってた」
小さい子供が持つには些か大きすぎる額のそれをしっかり管理していてくれたのは快斗の母親。
極力普通の子供と同じように育てようとしていてくれたのには快斗も感謝している。
「うちの場合は親父だったんだよ」
「…何となく解る気がする」
「でもある日親父が気付いたんだよな」
「ん?」
「俺がお年玉使うのが本買うのにばっかりだって事にさ」
「…………ι」
何だかその図が容易に想像出来てしまった快斗はそれ以上言葉が紡げない。
けれどそんな快斗を気にする事無く新一の説明は続く。
「だからさ、図書カードなら普通より多く持ってても普通に持ってるよりは危なくないだろうって」
だから毎年貰ったお年玉は図書カードにして貰ってたんだよ。
でも後から聞いたら代えた振りして口座に溜めててくれてたらしいんだけど。
「………そ…そうなんだ…」
「それでその名残で今でも親父からのお年玉は図書カードなんだよ」
「成る程…ι」
とっても新一らしい理由に快斗も妙に納得してしまう。
けれどそれはそれとして、聞きたい事もあるらしい。
「…新一……それ全部使うの?」
「ああ。使うけど?」
「………そうですかι」
見えていた結果に快斗はがっくりと肩を落とす。
これでまた新一は当分は本に没頭してしまって構って貰えないから。
泣きたい気持ちを抱えながら、優作さんに頼んで来年は図書カード以外のお年玉にして貰おうと快斗は本気で思ったのだった。
END.
またくだらんネタを…(爆死)
図書カードネタが使いたかっただけ(オイ)
back