【この中ではKID様が大変ご乱心(…)なさっております。
恰好良いKID様をご所望の方は見ない方が宜しいかと…(読んでからの苦情は受け付けませんよ?・苦笑)】
「…ん……」
「気がつきましたか?」
「KID…?」
「そうですよ、名探偵」
「ここどこだ…?」
「ここは………」
〜檻〜
「ここは私の隠れ家ですよ、名探偵」
気がつくとKIDの腕の中に居て、奴が言うにはここはKIDの隠れ家で…。
どうしてここに居るのか解らなかったけれど酷く眠いことは確かで。
「まだ、薬が効いているようですね」
ゆっくり眠っていて構わないんですよ、と耳元で優しくそう囁かれ余計に眠気が増した。
そして、その日はそのまま眠りへと落ちてしまっていた。
「名探偵。お目覚めになられましたか?」
「ん…あぁ…」
目が覚めるとベッドサイドにKIDの姿があった。
どうやら昨日はあのまま眠ってしまったらしい。
日の光が射し込んできているから今は恐らく朝なのだろう。
「今朝食の準備をしてきますから、しばらくそこで大人しくしていて下さいね」
そう言ってKIDは恐らくキッチンがあるのだろう方向へ行ってしまった。
寝起きでまだはっきりしない頭を何とか起こして新一は昨日の行動を思い返してみた。
昨日は普通に学校に行って、その後中森警部に呼び出されて。
どうやら今回のKIDの獲物はまたしても鈴木財閥の宝石で。
園子が裏で手を回したらしく俺まで捜査に協力を頼まれて…。
その後…俺はKIDの予告状の暗号を解いて…その後…………。
自分の記憶がそこで途切れていることに気づく。
KIDの暗号を解いてその場所に行った所までは覚えているのだがその後が思い出せない。
(いったい俺はあの後どうしたんだ? なんでKID隠れ家なんかに居るんだ?)
いくら思い出そうとしても思い出すことは出来ないのでその事に関しては考えるのを諦め、変わりに部屋を観察することにした。
部屋の間取りは自分が今寝ている方のフローリングと、その隣にあるリビングダイニングキッチン。
恐らくこちらの部屋だけで20畳程の広さはあるだろう。
しかし、あるのはベッドとノートパソコンと救急箱だけ。
あとはクローゼットがあるが閉まっているので中は確認できなかった。
(生活感ねえなぁ…)
余りの物の無さに思わず苦笑が漏れる。
けれど隠れ家だと言っていたから余計な物は置いていないのだろうと勝手に納得する。
「何か面白いものは見つかりましたか、名探偵?」
先程のきょろきょろとしていた新一を恐らくは見ていたのだろう。
キッチンから戻ってきたKIDは満面の笑みで、どうぞと新一にお盆を差し出した。
「………これ、まさかお前が作ったのか?」
目の前に差し出されたお盆に乗っていたもの…それは…。
『ご飯、大根の味噌汁、肉じゃが、きんぴらごぼう、海苔、沢庵』というラインナップ。
これで『鮭の塩焼き』があればまさに『典型的な日本人の朝食』である(笑)
「そうですが、お気に召しませんでしたか…?」
「いや…」
あの世界の怪盗KIDが台所に立って、あまつさえ『和食』なんか作っていたと…。
これを世界中のKIDファンが見たらどう思うであろうか…。
ある意味卒倒するかもな、と新一は内心脱力気味だった。
「…毒味しましょうか?」
何やら考え込んでいた新一の様子にどうやらKIDは新一が警戒していると思ったらしい。
「いや、別にそれを疑ってたわけじゃない」
今まで薬を盛ろうと思えば幾らでもチャンスはあった筈だ。
わざわざここでリスクを犯してまでそれをする理由はない。
どうやら彼は新一が戸惑っているのは、自分の異常な(…)行動であるという事に気付いていないようだ(笑)
むしろ、異常だという事に気付かないぐらいこいつはいつもこんなもん作ってるのか?などと考えてしまう。
「でしたら、冷めないうちに食べてくださいね」
味は保証しますから、なんてKIDのイメージからは縁遠い言葉を掛けられ新一はふと気付いた事を言ってみることにした。
「魚が足りねぇな…。」と。(爆)
その瞬間、それまでポーカーフェイスを保っていたKIDの顔が見事に青ざめた。
「め、めいたんてい…」
その瞬間、新一は悟った。
KIDの敵は白馬でも、中森警部でも、厳重なセキュリティーでもない…魚なのだと…(笑)
しかし、敢えてそれを言おうとはしなかった。
これはいざという時の切り札になる(め、名探偵……byKID)そう確信したからだった。
「でも、俺こんなに食えねえぞ?」
KIDの弱点をひょんな事から知ってしまったが、それは敢えて伏せてこの目の前の朝食を片付ける事にした新一からはごく普通の言葉が発せられた。
何せそのお盆に乗っている量はおおよそ一人では大の大人でも食べきれなさそうな量なのだ。
おそらく2人分以上はあるであろう。
それを新一に全て食べろと言うのは余りにも無謀である。
只でさえ食の細い新一は低血圧な事も災いして朝食は殆ど食べない。
食べてもトースト半分にサラダが少し、それにコーヒー一杯がせいぜいだ。
そんな新一には到底このお盆の上の物体を全部胃に収めるなんて芸当は出来ない。
「大丈夫ですよ。一緒に食べ様と思いまして、私の分も一緒によそってあるだけですからv」
そう言うとKIDは沢庵を一つ摘み上げ自分の口へと運んだ。(似合わねぇ…by新一)
「んじゃ、ご馳走になるかな」
流石に冷めてしまうと思ったのか、新一は料理に箸をつけた。
「…………うまい」
思わず目を見張ってしまう。
それほどKIDの作った料理は美味しかったのだ。
「それなら良かった」
KIDは一安心、という感じで自分用に何処からか箸を出して一緒に食べ始める。
「一体何処から出してきたんだ…」
その準備の良さに感心するより呆れてしまった新一ではあるが。
そして、和やかムードで二人して食事をし終えた後新一ははたとある事に気付く。
「ごちそうさま。…って、そういや何で俺お前の隠れ家に居るんだ?」
「名探偵…そういう事は先に言うもんじゃないんですか……」
それは新一を連れてきたKIDも思わずそう言ってしまう程だった。
「いや、別に害はないからいいかなあと思って」
(害が無ければ貴方は誰の部屋に居てもいいんですか…)
KIDが心の中でそう思って思わず天井を仰いでしまったのも仕方ない。
「で、何で俺がお前の隠れ家にいるんだよ」
そんなKIDの態度にむっとしたように新一は言った。
「私がお連れしたからですよ」
「んな事は解ってんだよ!!」
「では何が聞きたいんですか?」
「目的だよ。お前が俺をここに連れて来たな」
「目的ですか…」
それはもちろん…。
「『工藤新一ラプンツェル計画!!』の為ですよVv」
「は?」
普段のKIDからは考えられないようなやに下がった顔でそう言われ、新一の思考回路は一瞬完全にストップした。
「名探偵をここに閉じ込めて、誰も他に入れないようにして…」
嬉々としてその計画の細部を語ろうとするKIDに、ようやく自分を取り戻した新一は至極真っ当な返答をする。
「なあKID…」
「何ですか名探偵?」
「それ一般的になんて言うか知ってるか?」
「え…?」
「そういうのはな…一般的には『拉致監禁』って言うんだよ!!!」
はっ!しまった。
余りの馬鹿さ加減に思わず叫んじまったじゃねえか…。
ここが何処だかもわかんねえのに…。
(ま、いっか。ここがばれて困るのは俺じゃねえし)
そこは流石幾多の危機を潜り抜けてきた名探偵。
切り替えはすこぶる早かった。
「『拉致監禁』なんて失敬な。私はそんなに手荒な真似はしませんよ」
「つうかもうしてるし…ι」
(てか、お前そんなキャラだったのか?)
目の前に居る人物は決して『月下の魔術師』なんて呼ばれている怪盗には見えなくて…。
(結構イメージ崩れたかも…)
なんて新一が心の中で落胆している間にもKIDの勝手な言い分は進んで行く。
「同意されている場合は『拉致監禁』とは言えないでしょう?」
「いつ俺が同意したよ!」
「先ほど『別に害はないからいいかなあと思って』と仰って下さったでしょう?」
自分のが言った言葉の部分だけしっかりと声を新一の物にして言ってくれる怪盗に新一はがっくりと肩を落とす。
「それは同意とは言えねえだろ…」
「おや、違いましたか?」
「…百歩譲ってそれが『監禁』に対する同意だったとしても、『拉致』には同意してねえぞ」
「そうですね…どうしましょうか?」
いや…俺に聞かれても困るんだが…。
少し困ったようにKIDにそう素直に尋ねられ、新一は一気に毒気を抜かれてしまった。
「で…お前はどうしたいんだよ」
「ですから名探偵をここに閉じ込めて…誰も他に入れないようにして…」
先ほどと同じ様に嬉々として『工藤新一ラプンツェル計画!!』を話し出すKIDに、新一は大きく溜め息をついた。
「あのな…取り敢えずその計画名はやめねえか?」
聞いててすげえ恥ずかしいんだけど…。
「駄目ですか…?」
結構気に入ってるんですけど。
「頼むからやめてくれ…」
「仕方ないですね。名探偵のお願いとあらば」
素直に頷くKIDに取り敢えず新一は話しを先に進める事にする。
「で、お前は俺をここに閉じ込めて、誰にも会わせないようにして何がしたいんだ?」
「そりゃもちろん監禁は男のロマンですから!!」
「………」
思いっきり話しが噛み合っていない模様です。
「なあ…KID…」
「何ですか名探偵?」
「……おやすみ♪」
「…えっ………っ………」
満面の笑みでそう言った新一は腕に嵌めていた時計形麻酔銃を躊躇うことなくKIDに使った。
コナンから戻った後も、何かと危険なことが多い為愛用しているのだ。
麻酔銃をうけた次の瞬間、KIDは新一の寝ているベットの横へと倒れこんだ。
「……ったく…こいつ何したかったんだか…」
すっかり眠ってしまったKIDに向かい新一は一人呟く。
だいたい、拉致監禁の場合は相手の持ち物を取り上げておくのが基本だろうが。
などと少々物騒な事を考えつつ、目の前に転がったKIDをベットから少し出した脚の先でつつき意識がないことを確認すると今度こそベットから完全に抜け出した。
「ん〜取り敢えず書き置きでもしてくか?」
その辺は律儀な工藤新一。
何処か常識的にはずれているが、取り敢えずいきなりいなくなったらビックリするだろうからと書置きを残す事にしたらしい。
取り敢えずその辺にあった紙に書置きを残すと、その部屋から出ようと玄関のドアのドアノブを握る。
………が、開かない…。
「流石は怪盗KIDの隠れ家。一筋縄じゃ出れないって訳か♪」
何やら新一さん、物凄く楽しそうです。
「ん〜これどういう仕掛けになってんだろうな〜♪」
新一は楽しげにドアを観察してみる。
普通のものの様にドアノブの中心に直接鍵は付いていない。
が、よく観察するとドアの横には暗証番号入力用の数字キー、そしてドアノブの横にはほんの5mm程の小さな鍵穴が開いているのに気付いた。
「なるほど。出るのにもパスワードと鍵がいるって訳か…」
と、言う事は鍵を持っているのはKID自身である可能性が高い訳で…。
「身体検査といくか♪」
楽しげにKIDの横たわっているところまで新一は戻って行ったのだった。
それから10分後…。(10分で目覚める辺りは流石KID様・笑)
「ん……」
KIDは覚醒してくる頭の片隅で、眠りにつく前の事を考えて…。
「名探偵!?」
どうやらIQ400だけあって覚醒も早い模様(関係ないって)
直ぐに起き上がり彼の姿を探す。
が…そこに新一の姿があるはずも無く…。
「鍵持ってかれてるし…」
入り口の扉の鍵の入っていた場所を探ってKIDは溜め息をついた。
それにあのパスワード結構自信あったんだけど…ι
「ふぅ…計画は失敗か………ん?」
そこまで確認して、ようやくベットの上に置いてある一枚の紙に気付いた。
そこには…
『俺を監禁したいならうちの書斎と書庫にある本と同等の物を揃えておくんだな』
と、僅か一行だけ書いてあった。
「め…名探偵?」
それって本があれば監禁してもいいって事?
でも工藤邸の書斎と書庫にある本と同等の物って…ι
無理難題を吹っ掛けられたKIDが名探偵を監禁する事が出来る日はいつになるのか。
それは誰にもわからない事だった…。
END.
ははぁ〜ん♪(笑って誤魔化し)
ええ…隠しだまです(何が?っていう突っ込みはなしですよ?・爆)
いやぁ…自分が書くブツの中でここまでKID様を壊しきってるブツも中々ないので…隠し玉(爆)
(快斗は何時も壊しまくってますけどね・苦笑)
出だしと題名を決めた時点ではこんなに壊れた物じゃなかったのに…(もっとシリアスの予定だった)
やっぱりギャグ路線人間なんですかねぇ?(爆)
back