「え!? じゃぁ、あの時俺のこと知らなかったの!?」
「泥棒に興味はなかったからな」
半ば涙目になっている快斗と、うっとおしいと言うように頭を押さえる新一。
その原因は新一がある昔の事件を快斗に話した事だった。
〜another meet by chance〜
「そういや、あの時計台どうなったんだろうな…」
「ん? 新一なんか言った?」
ふんふ〜ん♪とご機嫌に鼻歌を歌いながら快斗はキッチンからテレビを見ている新一の方に顔を出す。
「いや、昔携わった時計台の事件があってな。あの時計台どうなったかなぁ、と思って」
「あぁ。あの時計台ね♪」
「ちょっと待て。…何でお前があの時計台で解るんだ?」
「し、新一!? もしかしてあれ俺だったって知らなかったの!?」
「え!? あれKIDの仕事だったのか!?」
余りの予想外の事態にかなり驚いている新一と、かなり落ち込んでいる快斗。
それもその筈、快斗はあの時計台の一件のあと自分をあそこまで追い詰め、ついでに拳銃までぶっぱなしてくれた(…)JOKERが一体誰だか気になって散々調べたのだ。
そのおかげでメモリーズエッグの時は新一にすぐに変装できたわけだが…。
当然新一も知っているものだと思っていた。
むしろKIDだったからこそ来てくれたのだと。
泥棒に興味はないという彼だが、恋人になった今でもKIDの現場にだけは来てくれる。
どうやら泥棒でもKIDには興味があるらしい。
だからあの時も来てくれたのだろうと思っていたのだが…。
「新一酷い…俺あの後新一の事色々調べたのに…」
「だから、俺は泥棒に興味はないって…ちょっとまて! 色々って何だ! 色々って!」
「そりゃねぇ、色々は色々ですよ名探偵v」
さっきまでの落ち込み具合は何処へやらちゃっかりKID口調になっている快斗に新一はため息をつく。
そりゃ確かに誰かさんが色々調べておいてくれたおかげで蘭に正体がばれずに済んだのだから感謝はしなければならないだろう。
しかし…一体快斗が己の何処まで調べ尽くしているのか、それが気になる。
誕生日、血液型、身長、体重、何てのは当たり前で、この間なんか両親の別荘がある場所まで知っていて関心半分呆れ半分だったのだ。
「で、あの時計台はどうなったんだよ?」
このままいくと快斗が自分でも思い出したくない過去の話までしてきそうなので、彼がどこまで知っているのかはこの際置いておく事にした。
「無事に移築されずに済みましたよ♪」
新一の疑問に快斗は嬉しそうに答える。
そう、始めからKIDの狙いは短針の宝石ではなかった。
あの時計台を移築させないようにするのが彼の目的。
なんたって『コノカネノネハワタセナイ』なんて暗号を残して行ったぐらいなのだから。
「そうか…でもなんであの時計台の宝石が偽者だってわかってたんだ?」
「あぁ、裏ルートに時計台の短針にある筈の宝石が出てたからね」
宝石を専門に手がける彼は正規の展示品以外の裏ルートで出まわる宝石にも目を光らせている。
もしかしたら正規の宝石よりもそちらのほうがパンドラに当たる可能性が高いかもしれないから、と。
「なるほどな。しかし…時計台に暗号を掘り込んで行くなんて無茶な事するよな…」
「だって〜ああでもしなきゃ時計台移築されちゃってたでしょ〜」
キッチンにフライパンを放り出して(…)快斗が半泣きになりながら新一の足元に擦寄り…。
快斗君一生懸命考えたのに〜、なんてうるうるした目で快斗は新一を見つめてくる。
(勘弁してくれ…その目には弱いんだよ…。)
まるで捨て猫のようなその目に、実は新一はひたすら弱かった。
「解った…。うん、確かにあれは良い計画だった」
そう言って新一は捨て猫(もとい快斗)の頭を撫でてやる。
「そうでしょ、そうでしょ♪」
新一に誉められたのが余程嬉しかったのか快斗は本当に猫の様に新一に擦り寄ってくる。
(猫決定…)
その瞬間新一の頭の中で、『快斗=猫』に完璧に変換されたのは言うまでも無い。
(こうなったら、猫缶代わりに魚やるか?)
などと快斗が聞いたら死にものぶるいで逃げそうな怖い事を新一は思いついたのだった。
「快斗♪」
いつもの7割増しぐらいの機嫌の良さで呼びかけられた快斗は一瞬ビクっとする。
(なんか凄く嫌な予感するんですけど…)
「俺買い物行って来るから留守番頼むな♪」
(…語尾に音符が付いてますけど新一さん…)
機嫌良く出かけて行った新一に快斗は何か空恐ろしい事が起こる予感に身を震わせていた。
「…さて、どれにするかなぁ…」
新一がやってきたのはもちろん商店街のお魚屋さん♪(爆)
快斗に与える餌を本気で選びに来たのだった。
「あら、工藤君。珍しいところで会ったわね」
そこに表れたお隣の(マッド)サイエンティスト宮野志保。
「宮野。お前なんでこんなところに…」
「あら、私が買い物に来てはいけないかしら?」
「いや、そんな事はないんだが…」
片手に買い物袋を持っている志保を見て、思わず『試験管持ってた方が似合うな…』と思ってしまったのは秘密である。
「で、工藤君はこんなところで何をしているのかしら?」
「何って、買い物以外でこんなとここないだろ?」
「でも黒羽君は…」
「いいんだよ。あいつ今猫だから」
「猫ね…」
どうやらいつもの快斗の様子から想像がついたのか志保は苦笑した。
「だから、餌でも買ってってやろうかと思って」
「貴方それ本気で言ってるの?」
「ん? まあな♪」
あくまで楽しそうな新一の様子に志保は思いっきり溜め息をついた。
(黒羽君も苦労するわね…でも、たまには工藤君にも魚をとってもらわないと)
「なあ、何がいいと思う?」
「そうねぇ…これなんかどうかしら?」
流石は宮野志保、次の瞬間には猫に与える餌を一緒に選んでいるのだった。
「ただいま」
新一が帰宅する頃には日はすっかり傾いてしまって、家からは夕食の良い香りが漂ってきていた。
「おかえり新一v随分遅かったね」
心配したんだよ〜、と快斗はすぐさま新一に擦り寄ってくる。
(こういうとこが猫なんだよな)
擦り寄って来た快斗の頭を撫でてやる。
が、次の瞬間快斗は物凄い勢いで新一から後退った。
「ん〜? どうした快斗?」
その理由が解り過ぎる程解っているのに嫌味の如くにこやかに新一は尋ねる。
「し、新一…。それもしかしなくても…」
「ああ。お前へのお土産だ♪」
「……お土産って……ι」
「俺が買ってきた物をまさか受けとらないわけないよなあ?」
黒羽快斗…現在究極の選択を迫られております(爆)
「………喜んでイタダキマス………」
「よし。あ、今日の夕食にそれ加えろよ♪」
「……ハイ……」
その日の夕食に秋の代名詞…秋刀魚の塩焼き(大根おろし付き)が添えられる事になったのはお隣の科学者が選んだ結果であった…。
END.
そこのお嬢さん、「これって快新じゃなくて新快なんじゃ…。」なんて突っ込んじゃいけませんよ?♪(爆)
書いてたら何故か今までで一番新快臭くなってしまったι
でも快新なんです!(必死に言い訳)
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