欲しいかったものは一つ

 手に入れたかったものは一つ


 どんなに手を尽くしても

 どんなに願っても


 もう二度と手に入れることは出来ないけれど








欲しいもの








「ねえ、快斗の欲しい物って何?」


 いつもの様に青子との学校の帰り道、何故か突然そんな事を聞かれた。


「は? 欲しい物?」
「そう、欲しい物」


 欲しい物か…。


「それは物じゃなきゃ駄目なのか?」
「え?」


 突然の俺の問いに青子は不思議そうに首を傾げる。


「それは願いみたいなもんじゃ駄目なのか?」
「願い?」
「そう、例えば何かの才能が欲しい、みたいな」
「ん〜、そこまで考えてなかったんだけど…」


 そう考え込む青子に思わず苦笑する。
 自分は何をこんな事に真剣になってるのか。

 もう叶わないと知りながらそれでも望むもの。


「じゃあ、願いみたいなので良いとしたら快斗は何が欲しいの?」
「…人を一人生き返らせる事が出来る力、かな」
「…え…?」
「んじゃ、俺こっちだから。」


 またな、と言って戸惑う青子を置いて俺はさっさと家に向かう。

 家と言っても自分の自宅ではないそれ。
 かの有名な名探偵が住んでいた家。

 もう彼は居ないけど…。

 けれどここを離れる事は出来なくて。
 何時か彼が帰って来るかもしれない。
 そんな事を思う反面、もう二度と彼は帰って来ないのだと頭では解っていて。


「お帰りなさい、黒羽君」
「ああ、ただいま志保ちゃん」


 きっと彼女の思いも同じ。
 結局は二人とも彼の帰りを待っているのだ。

 もう二度と会えないと知りながらも。






 もしも君が帰って来てくれるなら

 俺は自分の命と引き換えにしてもいい


 たとえ悪魔に魂を売り渡しても

 キミガカエッテキテクレルナラ…








突発的に書きたくなった物。
結局よく解らない物になってしまった…。





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