『新一、別れよう』

『なんだよ突然』


『だってもう必要ないでしょ?』










The heart which is not in sight










「どういう意味だよ?」
「そのままだよ」


 快斗の言った「必要ない」の意味が解らず新一は困惑のままに聞き返した。


「そのままって…」
「俺はもう新一には必要ない。それだけ」
「それだけって…俺が何時そんな事言ったんだよ!!」
「言わなくても解るよ。新一に俺はもう必要ないんだ」


 話しを聞こうともせずに、頑なにそう言い続ける快斗に新一がついに切れた。


「俺はお前が必要なんだよ!! 勝手に必要ないなんて決めつけんじゃねえ!」
「………ありがとう新一Vv」


 途端に満面の笑みを浮かべる快斗。
 その瞬間…新一は快斗に嵌められた事を悟った。


「てめえ…嵌めやがったな!」
「だって…新一最近全然俺の事構ってくれないし」

 ねえ、気付いてた?
 ここ6日間で話したのって朝の挨拶ぐらいなんだよ?


「それは…俺もお前も仕事で忙しかったから…」
「で、時間空けば新一君はご本とお友達だしね?」
「うっ………それは…悪かったよ」


 確かに快斗の言う通りここ最近まったく構ってやっていなかった。
 事件が結構立て続けにあって、読みたい本の新刊も立て続けに発売されて…。

 だからって…だからってこのやり方は卑怯過ぎる。

 今にも手元にある本を投げつけそうなぐらい怒っている新一に対し、快斗はただ静かに新一を見詰めた。


「でも、俺本気だったんだよ?」


 そりゃ、別れる気なんて全く無かったけど。
 それでも、俺は必要ないかもしれない…そう思ったのは事実だから。

 そう寂しげに語られれば、新一が怒れる筈などなくて。


「…だったらもうちょっと心臓に良い方法で解決しろ」
「え?」
「例えばその辺にある本全部燃やしてみるとか…事件の要請きても外出さない様にするとか…」
「新一…それ全然心臓に良くないと思うんだけど」

 むしろ俺そっちの報復のが絶対怖いと思うのは気のせい?
 相当口聞いてくれなくなりそう…。

「うるせえ! あんな事言うよりは…まだましだろ…!」


 怒鳴りながらも、新一は目元を真っ赤にさせ瞳からぽろぽろと涙を流してしまう。


「…そうだよね。ごめん」

 本当にごめんね。


 そんな新一に快斗はそう何度も何度も囁きながらそっと新一の身体を抱き締める。


「馬鹿野郎……」

 そう思うなら、もう二度とあんな事言うんじゃねえ…。


 腕の中で泣きながらも、しっかりと睨み付けてくる彼の瞳が綺麗だと思ってしまう自分は酷い奴なのだろうか。
 彼は感情を余り表に出さない人だから。

 時々、本当に時々だけれどこうして確かめたくなってしまう事がある。

 自分のせいで怒って、自分のせいで泣いている彼を心の底から愛しいと思う。

 自分にだけ向けられる感情。
 それが時々どうしても欲しくてたまらなくなる。

 彼の気持ちを解ってはいるけれど、それでも表情や言葉や態度で表して欲しくなる時が…。


「うん…。もう言わないから」

 だから俺の側にいて。
 新一の機嫌が直るまで何でもするからさ。
 新一の側に俺の居場所をちゃんと頂戴?


「もう…あるだろ」


 もうお前の分はちゃんとあるから。
 だから…俺の側から居なくなるなんて言うんじゃねえよ。



 新一が泣きながら呟いた言葉は快斗が一番聞きたかった言葉…。










 貴方は感情を余り表に出さないから
 貴方は素直に言葉で表してくれないから
 貴方は誰にでも優しくするから

 だから俺にだけは…どんな感情でもいいから、ちゃんと全部見せて?

 その為ならどんな事だってする
 その為ならどんな犠牲だって払うから…










END.


別れ話を書く予定が…結局自分が辛くなって書けなくなってこんな話に…(爆)
僕に痛い話しは書けません…(爆死)



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