「惜しいよな…」
夜空を見上げて快斗がふとそう呟いた。
〜満月マイナス1〜
「何が惜しいんだ?」
そんな快斗の横顔を見ながら新一が呟く。
「ねえ新一。今日何の日だか知ってる?」
「今日?」
確か9月10日だったよな…? 何かあったか?
「やっぱり解る訳ないよな…」
なんたって自分の誕生日まで忘れちゃうんだもんね〜。
からかいがちにそう言ってくる快斗に、新一はむっとする。
「うるせえ。で、何の日なんだよ」
「解らない?」
「解る?」
その快斗の一言に新一は首を傾げる。
普通何かの日であれば「知っている」という聞き方になるはずなのに…。
何故「解らない」なのか…。
その快斗の一言で新一は推理モードに切り替わる。
(あ…推理モードに入っちゃったか)
どうやら快斗の意図した事を理解した新一がすっかり思考の海に沈んでしまった事に快斗は苦笑する。
こういう時の新一には何をしても無駄で構ってもらえず普段は拗ねてしまうのだが、今日はそんな彼を鑑賞してみたいそう思ったから…。
敢えて彼が引っかかるであろう聞き方をしてみたのだけれど。
「……なあ快斗」
「なに?」
「まさかとは思うんだけど…」
暫く思考の海に沈んでいた新一はどうやら考えが纏まったらしく、静かに口を開く。
が、いまいち確信が持てていない様で…
「9月10日で、910だから…工藤の日…何て言ったりしないよな?」
「ピンポーン♪ 流石新ちゃん♪」
「………」
快斗の軽快な声に、新一は返事すら出来ず脱力した。
「ったく、無駄な思考力使わせんじゃねえよ」
「無駄じゃないでしょ!! 今日は新一の日なんだから♪」
「まったく…どうしてそうお前はくだらない事ばっかり考えるんだか…」
その無駄にあるIQ他のもっと有意義な事に回せよ。
「新一君。俺にとっては新一の事に頭使うのが一番有意義な使い方なんだけど?♪」
「…………///」
「どうかした?」
「べ…別に…///」
快斗の言葉に真っ赤になってしまいつつも、それを隠すかの様に新一はぷいっとそっぽを向く。
そんな新一の様子を心底愛しいと思いながら快斗はその肩をそっと抱き寄せた。
そして、新一の耳に唇を寄せるとそっと…甘く囁く。
「俺はいつでも新一の為に存在してるんだよ」
だから、いつもそれを忘れないでね。
「………///」
その快斗の追い討ちをかけるような言葉に新一は今度こそ本当に頬を真っ赤に染め上げた。
「……で、何が惜しいんだよ!///」
真っ赤になってしまったのを誤魔化す様にさっきの問題を蒸し返してくる新一に内心「可愛いなVv」と思いつつもそれを言葉には出さず、きちんとその質問に答える。
「ああ、それはね…」
「ん?」
「明日が満月なんだよ」
「満月?」
「そう、満月」
しかも中秋の名月…のね。
「それが何の関係があるんだ?」
明日が満月だと何かまずいのか?
「そうじゃないんだけどね…」
「?」
快斗の言おうとしている事がさっぱり解らず新一は困惑する。
別に明日や明後日が満月でも何も変わりはないと思うのだが…。
「どうせだったら、今日が良かったなぁ…と思ってさ」
折角の新一の記念日なんだから。
満月だったらそれこそKIDと運命的なもの感じない?
そう真顔で聞いてくる快斗に新一は苦笑する。
「そんなの最初から感じてたよ」
運命なんて決して信じていなかったけれど、あの強烈過ぎる屋上での出会でそれが塗りかえられた。
あの一瞬で『運命』なんて物を信じてしまった自分に苦笑してしまうぐらい…。
「新一…それ凄い口説き文句」
「お前に言われたくねえよ」
そう軽口を叩き合いながら、まるで示し合わせたかのようにごく自然に同時に月を見上げた。
「いいじゃねえか。視覚的にはほぼ満月だろ?」
「でも…」
「それに、どうせ明日も一緒に見るんだろ?」
明日も、明後日も…その後もずっとずっと一緒に…。
「そうだね」
その新一の言葉に快斗は満面の笑みを浮かべる。
そう、ずっとずっと君と一緒に見ていくんだからいつが満月でも変わりないのかもしれない…。
明日の満月も次の満月も…ずっとずっと君と共に……。
END.
最初に書いた『新一君記念ss』に殆どと言っていい程新一君が出てこなかったので…もう1本と思って作成。
惜しい…と思ったのは僕です(爆)
ちなみに『9月10日記念』ってことで9月末までフリーにしようかなぁ…と。
持っていってやろうというお優しい方、どうぞお嫁に貰ってやって下さいませ☆
その際BBSかメールで一言頂けると嬉しいですVv
フリー期間終了致しました。
貰ってくださった方々、有難うございました(平伏)
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