『愛してる』


 それはきっと世界で一番綺麗な言葉













LOVE始めました














 『好き』よりも『大好き』よりも、それはきっともっとずっと輝く言葉。
 温かくて、優しくて、何よりも人を幸せにしてくれる言葉。





 『愛してる』





 それはきっと世界中探しても他に代わりが見つからない程、綺麗な綺麗な言葉。















「新一」


 快斗――新一の恋人であるこの男――は真っ直ぐに自分の名前を呼ぶ。
 真っ直ぐに俺を見詰め、真っ直ぐに言葉を紡ぐ。
 唯、真っ直ぐに俺を射抜く術を既に心得ている。


「ん?」


 唯普通に返事を返しただけの自分の声が多少なりとも上擦ってはいないかと新一は不安になる。
 慣れないのだ。
 何時まで経っても快斗の真っ直ぐな言葉には。

 けれど、それは決して不快な物ではなく新一を幸せにしてくれる類の物だけれど。


「好きだよ」


 唯真っ直ぐに向けられる言葉。
 それは確実に俺を貫いていく。


「愛してる」


 『愛してる』
 そう、快斗はよく新一に告げる。

 何の脈絡もなく。
 唯、今告げたいから言葉を紡いだのだと言う様に。

 『愛してる』
 快斗がそう新一に告げる度、その言葉は新一の内へと浸透し全てを浸食しソレで一杯にしてしまう。
 新一はその瞬間だけは何もかも忘れて唯その言葉と想いだけで一杯にされてしまう。

 きっとソレは快斗だけが使える魔法なのだと思う。


「俺も…」


 次の瞬間、快斗と同じ言葉を新一も紡ごうとして――戸惑う。

 『好き』『大好き』『愛してる』

 どれが一番快斗の内には届くのだろう。
 どれが一番快斗を満たせるのだろう。

 そんな事心が覗ける訳は無いから分からない事は解っていたけれど、それでも言葉を発する瞬間、新一の中には確かな戸惑いが存在する。
 だから、一瞬…ほんの一瞬だけれどそこに間が生じる。


「………」


 その間すら快斗は見逃してくれない。
 唯静かに、唯真っ直ぐに俺を見詰め続ける。

 何かを見極める様に。
 何かを探しているかの様に。


「愛してる」


 漸く言葉を紡いだ俺を快斗は唯優しく抱き締めてくれた。













『愛してる』


 俺はまだお前と同じ様にその言葉を紡げないけれど。
 でも、それはきっと俺が紡ぐ事が出来る言葉の中で一番綺麗に響く音。















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