あの時、もしもあの時真実に気付いていたら
貴方達は今此処で笑っていてくれたのかしら?
―― 最期の嘘 ――
「今日も雨…」
此処の所ずっと振り続けている雨を硝子越しに見詰め一人溜息を吐く。
こんな日はキライ。
この季節はキライ。
秋雨の降る夜。
思い出すのは貴方の顔。
雨脚の強まる音。
思い出すのは貴方の声。
この季節はキライ。
雨の音はもっとキライ。
だって、それは全てあの日の貴方へと繋がる物。
あの日も雨が降っていた。
彼が居て、彼の大切なあの人が居て。
そして私が居た。何時もの様に。
少しずつ秋の訪れが分かる位に寒くなっていて。
彼の身体はその寒さに少し震えていて。
それを暖めてくれていたのは他でもないあの人。
3人で居る事が日常になっていた。
3人で語る事が全てだと思っていた。
それが浅はかな思い込みだったと知ったのは、それからまもなくの事。
『戻ってくるよ』
そう言ったのはあの人。
『大丈夫。帰ってくるさ』
そう言って笑ったのは彼。
でも、彼らは帰っては来なかった。
私は知っていた。
彼らが二人だけで組織を潰した事。
彼らは知っていた。
それだけでは終わらない事を。
生気を失って、元から白かった彼の顔はより一層青白かった。
そんな彼を最期まで守るかの様にあの人の腕は彼を抱いていた。
全てを葬り去る為には彼らの死さえ必要だった。
復讐すら、相手に与えない為に。
「ずるいじゃない。私だけ置いてけぼりなんて…」
墓守は私の仕事。
だから死ねない。
私が死んでしまったら真実は誰が覚えているの?
「本当にずるいんだから…」
零れ落ちた雫は止めどなく溢れ続けた。
END.
またも哀ちゃん独白。
最近浮かぶのが哀ちゃんネタばっかり…。←快新サイトとしてそれはどうよ?
back