追う者と追われる者 この数日でその立場が逆転した けれどその事実を知るのは当の二人だけ 〜名探偵の口説き方(悩める名探偵?編)〜 最近煩いのに纏わり付かれるようになった。 けれどその原因は自分で作ってしまったもので。 最初は「やっぱり助けなきゃ良かったか…。」なんて溜め息をついたりしていたのだが。 「新一♪今日も一日お疲れ様♪」 ここ数日間、放課後同じ様に同じ場所で待っているこいつに苦笑する。 「…お疲れも何もただ学校に行ってただけだろうが」 「それでも疲れるでしょ?」 だから、お疲れ様♪ ニッコリと笑顔でそう言ってくるこいつこそ、最近纏わり付かれる様になった同じ歳の高校生。 本名『黒羽快斗』裏の顔は『怪盗KID』 つい10日程前に怪盗KIDに殺人容疑がかけられていて。 でも奴の事だからそんな事する筈はないと思って。 柄にもなく必至で証拠を探しまわって、やっと見つけて疑いを晴らした。 その帰り道で…。 公園のベンチに座って雨に打たれているこいつを見つけた。 直ぐに正体は解ったけれど、それだけなら別に声もかける事なんてなかっただろう。 こいつがあんな顔をしていなければ…。 「新一?」 「なんだよ」 「今日は追い返さない訳?」 何時もはあんなに蹴ったり殴ったりして追い返そうとするくせに。 不思議そうに、でも真面目に聞いてくる快斗に新一はぶっきらぼうに答えた。 「腕」 それだけ言えば充分だろ?と目線で相手に伝える。 つい3日前に負った傷は結構なものだったから。 「ああ、それでか」 心配してくれてるんだ。新一ってば優しいvv やっぱり愛かなVv 途端ににやけ顔になる快斗に新一はキッパリと言い捨てる。 「バーロ。怪我人蹴って余計に悪化でもされたらこっちが困るんだよ」 お前家に入れるの嫌だし。 「何で〜!! 快斗君はこうして毎日新一君をお家まで送ってるっていうのに〜!!」 ぐれてやる〜。なんて小学生並みの発言をしながら拗ねている快斗はあの日の…あの時のKIDには重ならない。 その事に何処かで安堵している自分に新一は戸惑う。 3日前、ベランダでおもいっきり青い顔をしているこいつを見つけた。 明らかに何処か負傷しているのは確かなのに。 それでもこいつはKIDとして振舞いつづけていた。 あの時の拒絶の言葉に、胸が痛んだ。 『怪盗』と『探偵』の関係である自分達なのだから、当然の反応なのに。 それなのに彼の言葉に酷く胸が痛んだ。 あの冷たい目線に…。 けれど一度家に引き入れてしまった後はいつものあいつで。 その出血量の多さに心中穏やかではなかったけれど、生きていてくれて良かったと思った。 生きていてくれればそれでいいと…。 「ねえ、新一?」 「何だ?」 「ほんとに怪我の事だけ?」 少し考えに浸ってしまった新一に何かを感じたのか、快斗は確信をついてくる。 「他に何があるって言うんだよ」 「ほら、快斗君の魅力にそろそろやられ始めたとか?」 「…寝言は寝て言え」 いや、寧ろそのまま安らかに眠っても良いぞ。 「新一君…酷い…」 よろよろと泣き崩れる真似をする快斗に新一は表面上は馬鹿馬鹿しい、という顔を作りながらも内心非常に焦っていた。 最近ようやく気付き始めたのかもしれないから。 自分のこの感情が世間一般で何と呼ばれているものなのか。 蘭に昔抱いていたものはもっと『家族愛』に近かったもの。 けれど今、彼に抱いているのは…。 でもまだ気付かれる訳にはいかないから。 だからこそ表面には決して出してはやらない。 (このぐらいで落とされてやる程俺は安くないぜ?) プライドの高い名探偵をレトロな怪盗が手に入れられる日は近いのか遠いのか…。 それは怪盗が探偵の本当の気持ちに気付くかどうかにかかっているのかもしれない…。 END? 何だか段々題名から更に離れて行ってるのは気のせいか?(自爆) と言う訳で、新一君編(略しすぎ) 何だかあんまり甘くならなかったのですが…ごめん、雪花姉…(そればっかやなぁ…ι) back