一番大好きな人に殺されるなら
それは一番幸せなことかもしれないね
〜一番の君だから〜
人が死ぬのは自然の理
それが明日なのか明後日なのか
一年後なのか十年後なのか
それとももっともっと先なのか
それは誰にも解らないけれど
どうせ死ぬなら君の手で殺されたい
「…死に様?」
高校生がリビングで語るには些か重すぎる話題を突然振って来た快斗に新一は首を傾げる。
どうして今その会話なのかは解らないけれど、次の瞬間には快斗にとって今必要なのだろうと一人納得した。
「そう、死に様」
新一がまともに取り合ってくれると判断した快斗はそれ以上にその話題を深いものにしていく。
「格好良く死ぬって結構難しいよね」
俺の場合ヘマして死ぬ可能性が高そうだし。
そうなったら格好悪いし。
「…お前それ洒落になんねーだろ」
茶化して言われた言葉にすっと新一の瞳が細められる。
けれどその視線を真っ直ぐ受け取りながら快斗はなおも続ける。
「ん〜まあ、洒落になんないけど事実だし?」
最近追っ手が増えて撒くのも一苦労だし。
「…確かに最近増えてるな」
先週の予告の時は狙撃者が3人も居ただろ。
「だからさあ…俺が死にそうになったら殺してくれない?」
「お前それ…」
本気で言ってるのかと新一が言おうとしたところで、今までとは比較にならない程真っ直ぐに真剣に見詰めてくる快斗と視線がかち合う。
「――俺は本気だよ」
どうせ誰かに殺されるなら一番大切な人に殺されたいし。
「お前は俺を殺人犯にしたいのか?」
殺される側はいいかもしれねえが、俺にお前を殺させるのかよ。
「…だって死ぬなら新一の腕の中が良いし」
そりゃ俺だって我が侭言ってる自覚はあるけどさ。
「………」
そこまで言えば、新一は一人顎に手を当てて何やら考え込んでしまって。
快斗はそんな彼をただ見つめる事しか出来ない。
自分勝手な言い分なのは解っている。
犯罪に潔癖な彼に、あれだけの殺人事件を見てきた彼に自分を殺せなんて酷い事を言っている自覚もある。
それでも言った言葉は全て本音。
どうせ殺されるなら、一番大好きな彼に殺されたいから。
「…なら交換条件をつけろ」
暫くして言われた言葉に快斗は首を傾げた。
「交換条件?」
「ああ。お前が俺に殺されたいんなら…」
―――お前が先に俺を殺せ。
新一の答えに快斗は息を飲んで。
そして次の瞬間には苦笑した。
「それじゃ俺殺してもらえないじゃん」
流石に俺でもそれは出来ないって。
苦笑しながら言われた言葉に新一は不敵に笑ってみせる。
「流石の怪盗KIDにも不可能はあるんだな」
お前なら可能かと思ったんだが?
「名探偵…喧嘩吹っかけてくれるねぇ…」
俺の性格完璧に読んでくれちゃってるじゃん?
お互いにお互いの言葉に笑い合って。
何時の間にかシリアスな雰囲気も消え去ってしまっていて。
「でもな快斗…」
「ん?」
抑揚の無い声で呼ばれた名前に首を傾げれば、真っ直ぐに射抜くように向けられた蒼に引き込まれて。
「…お前がもし……」
お前がもしも俺の目の前で俺以外の奴に殺されそうになったなら…。
そして俺がお前を絶対に救えないのだとしたら…。
「?」
「――俺が殺してやる」
「…新一……」
その答えが欲しかった筈なのに、ありえないと思っていたから。
告げられた答えの重さにそれ以上言葉が出てこない。
「俺以外の奴になんかお前は殺させない」
他の奴に殺されるぐらいなら俺が殺してやる。
「…ありがとう」
青より蒼い彼の瞳を見詰めたまま微笑んで。
その深い深い愛情を受け取った。
一番大好きな人に殺されるなら…それは一番幸せな事かもしれないね
END.
だから何故これをクリスマに持ってくるんだ自分は…ι
来年はもうちょっとクリスマスらしいものにしよう…(ぇ)
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