この花が色褪せる頃

代わりの花と共に

貴方の元へと参ります






 またしても突然家に届いた真っ赤な薔薇の花束とそれについていたカード。
 差出人の名前すら無かったけれど、こんな事をする奴なんて他には思い付かなかった。








ほんのちょっぴりの悪戯(リベンジ?編)








「あら、またきたの?」


 花束を抱えてリビングに戻ってきた新一に、送り主の予想がついている志保は呆れた様に呟いた。


「ああ、しかも今回もご丁寧に歳の数だけな」


 そう、前回届いたのも、今回届いたのもぴったり17本。
 これがロマンティックな女の子なら喜ぶところだろうが…。


「馬鹿ね」
「馬鹿だな」


 この二人に掛かればその一言で済まされてしまうのである。


「そうそう、また変なカード付いてきたんだよな」


 これ、と言って新一はカードを志保へ差し出した。


「この花が色褪せる頃ねえ…ちょっとは学習したのね」


 前回のようにドライフラワーにしてしまっては色褪せたと言えてしまう。


「そうみたいだな。まあ、それ以外はまるっきり一緒なんだけど…」
「捻りが足りないわね」
「ああ、あいつ俺相手だからって手抜きしてんじゃねえのか?」

 今度から暗号じゃなかったら受け取らないようにしてやるか。

「あら、『好きな人には直球勝負』派なんじゃないの?」

 それはそれで可愛いところあるじゃない。

「そうか?」


 流石黒の組織を潰したお二人。
 怪盗KIDすら『可愛い』で片付けてしまうのである。


「で、次はどうする気だ?」
「工藤君…あなた少しは自分で考えなさいよ」

 前回案を出したのは私でしょ?

「う〜ん…」


 首を捻りながら、何か良い案はないかと部屋中を見渡していた新一の目にある物体が飛びこんできた。


「宮野。アレ」
「あら、いいじゃない」

 次はアレにしましょう。


 そう微笑み合う二人の笑みは美しかったが、その背中には黒い羽が見え隠れしていた。




















(そろそろですかね…)


 薔薇の花束を届けてから5日、もし仮に名探偵がしっかりと世話をしてくれていたとしてもそろそろ色褪せてくる頃だ。
 つい2週間前と同じ様に当たりをつけ、KIDは工藤邸のベランダへと降り立つ。



(…こうきたか………)



 窓の前に置かれていた物体と、2週間前と同じ様に窓に貼られていたメモにKIDはがっくりと肩を落とした。
 窓の前に置かれた物体は只のおよそ8cm四方ほどの透明なプラスティックで出来たような物体だった。

 けれど、その中身が問題な訳で…。


(ここまでして会いたくないのか?)


 その中には、自分が送った花が綺麗な色と形を保っていた。

 おそらくは送られてきてから直ぐに中に閉じ込めたのだろう。
 それを手に取って、窓に貼ってあるメモの内容をもう一度確認してKIDは溜め息をついた。



《色は綺麗なまんまだろ?》



(もう俺拗ねそう…)

 名探偵の意地悪…。


 心の中で盛大に涙を流しながら、次こそは!と誓うとKIDは泣く泣く工藤邸を後にするのだった。





「だから、どうしてここに居るのに気付かないのかしら?」

 ここに隠れたの二回目よ?

「危機感感じてないからだろ?」

 てか、ここ狭いから嫌なんだけど。


 そう嫌味を言いながら、新一と志保は前回と同じく潜んでいたベランダの隅の植物の陰から這い出した。


「で、良い絵取れたか?」
「ばっちりよ」


 志保の手には阿笠博士が最近発明したばかりの高性能ビデオカメラ(ちょっと進歩)が握られていた。


「それにしても、よくポリエステル樹脂加工なんて思いついたな」

 うちにあったのは確か硝子製の置物だったぞ。

「ポリエステル樹脂の方が軽くて良いでしょ」

 だいたい、硝子は作るのが大変なのよ。
 あれも気泡が入らないように作るのは大変だったけど。

「まあ、確かにな。あ、それダビングしてくれよ」
「ええ、もちろんよ。これテレビ局に持って行ったらいくらぐらいで売れるかしら…」
「ん〜結構な値段にはなるんじゃないか?」

 泣きそうな顔した動く怪盗KID(笑)なんてそうそうお目に掛かれるもんじゃねえだろう。

「まあ、可哀想だからそれはしないであげましょうか」
「そうだな。それにそれでまた遊べそうだし」


 そう呟く二人の脳裏には次の悪戯の計画が思い描かれていた。










END?


KID様リベンジ出来てねえし(笑)
てか、二人とも手間暇かけて悪戯しすぎよ〜(爆)
続き…欲しいですか?←誰に聞いてるんだ?



こんどこそは!編


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