この花が枯れる頃

代わりの花と共に

貴方の元へと参ります






 突然家に届いた真っ赤な薔薇の花束とそれについていたカード。
 差出人の名前すら無かったけれど、こんな事をする奴なんて他には思い付かなかった。








ほんのちょっぴりの悪戯








「一体誰からかしら?」


 花束を抱えてリビングに戻ってきた新一に志保は至極真っ当な質問を投げかけた。


「差出人の名前は無いんだけど、多分アイツ」

 てか、他にこんな事するような奴俺は知り合いに居ねえぞ…。

「あらあら、もて過ぎるのも困りものよね」

 一般のファンや警察関係者のみならず、あの怪盗にさえもててしまうのだから。


 思っていた事を違わずに理解している志保に新一の口元には小さく笑みが浮かぶ。


「それにしても相変わらず気障な野郎…」


 花束に付いていたカードを弾きながら新一は嫌そうに呟いた。


「あら、それは彼から?」
「ああ」


 見るか?と言って新一はカードを志保へと渡した。


「この花が枯れる頃ねえ…」

 気障な怪盗さんらしいわね。


 溜め息と共に吐き出された言葉には呆れた響きしか含まれていなかった。


「薔薇ってどれくらいもつんだ?」
「さあ? 環境にもよるでしょうし」
「そっか…」

 世話すんの面倒だな。


 嫌そうにしながらも真面目に世話をするつもりらしい新一に志保はふと、面白い事を思いついた。


「工藤君。面白い事してみない?」

 上手く行けばあのレトロな怪盗さんのポーカーフェイスが崩れるところを見られるかもしれないわよ?


 楽しそうに語られた志保の企みを、新一は二つ返事で了承したのだった。




















(そろそろかな…)


 薔薇の花束を届けてから5日、もし仮に名探偵がしっかりと世話をしてくれていたとしてもそろそろ枯れ始める頃だろう。
 そう当たりをつけて、KIDは工藤邸のベランダへと降り立つ。



(…やられた…)



 しかし、予想に反してベランダの窓から見えた光景と、窓に貼られていたメモにKIDはがっくりと肩を落とした。

 逆さに吊るしてある薔薇の花。
 それは綺麗に等間隔で吊ってあり、見事なドライフラワーへと変化していた。

 そして、メモに書かれていた内容。



『これは枯れったって言わねえよな?』



「…敵いませんね。名探偵には」

 今日のところは御暇しますか…。


 KIDががっくりと肩を落としながら飛び去ったのを確認すると、新一と志保は潜んでいたベランダの隅の植物の陰から這い出した。


「どうしてここに居るのに気付かないのかしら?」

 あれで怪盗やっていられるんだから、警察の面々も無能よね。

「いや、普通気配消せる警官なんていねえし…」

 まあ、仕事の時だったら気づくんじゃねえの?

「まあ良いわ。良い写真が撮れたし」
「それ焼き増ししてくれよ」
「ええ。もちろんよ」


 志保の手には阿笠邸博士が最近発明したばかりの高性能カメラが握られていた。


「これ新聞社に持って行ったらいくらぐらいで売れるかしら…」
「ん〜、結構な値段にはなるんじゃないか?」

 あれだけ情けない顔した怪盗KIDなんてそうそうお目に掛かれるもんじゃねえだろう。

「まあ、可哀想だからそれはしないであげましょうか」
「そうだな。それにそれでまた遊べそうだし」


 そう呟く新一脳裏には次の悪戯の計画が思い描かれていた。










END?


KID様がお労しい…(笑)
いや、思いついた最初はこんなギャグじゃなかったのに〜!(必至の言い訳)
続き…書くかなあ…どうしよう?(消化できてない続き物いくつかあるしな…)



リベンジ?編


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