昔誰かに聞いた事があった…
一度目の偶然は『偶然』
二度目の偶然も『偶然』
けれど三度目の偶然は…?
〜Inevitable encounter〜
一度目の偶然は、あの時計台。
お互い顔すら合わせる事なくただ対峙しただけ。
本当に偶然の出来事。
二度目の偶然は、雪山のロッジでの出会い。
まさか奴が現れるなんて、蘭達を送って行っただけの最初は思ってもみなかった。
これも偶然の出来事。
けれど…今回の…この三度目の偶然は…。
「で、お前おっちゃんは何処に隠したんだよ」
「おや、流石は名探偵。気付いておいででしたか」
「当たり前だろ」
グランドピアノに書かれた文字に夢中になって見入っている茂木の後ろで密やかに交わされる会話。
もちろん、それは茂木の耳には届いていない。
「完璧だと思ったんですがねぇ…」
「お前煙草吸わねえだろ」
「あ…」
「ったく、他は結構完璧に近い割りに案外そういうとこは抜けてんだなお前って」
もっとも、普段吸う習慣の無い者が気付く事の方が普通は少ないのだろうが。
「まぁ、俺の他にももしかしたら気付いてる奴がいるかもしれねえな」
なんたってここには探偵ばかり揃って居るのだから。
そう、静かに告げられた言葉にKIDは苦笑するしかなかった。
「気をつけますよ」
「まあ、別に俺はお前が捕まろうと捕まらなかろうと関係ないがな」
それは暗に『俺は泥棒に興味はない』と告げられているのと同じで…。
「貴方は私を捕まえる気はないんですか?」
他の方々は私を捕まえたがっていらっしゃる様ですが。
自分でも大人気ないと思ったが、ついそんな言葉が口をついて出てしまった。
「俺の専門は殺人だ。今はお前の事より、お前の名を語ってここに俺達を誘い出した奴を誘き出す方が先だ」
「そう…でしたね」
その言葉にKIDは胸を抉られた様な気がした。
彼の目には何時だって殺人の犯人しか映っていなくて…。
自分はあの日…あの刹那の邂逅の時からこの人しか見えなくなっているというのに…。
「ったく…お前とはほんとによく会うよな」
ふと、突然思い出した様に言われたコナンの言葉にKIDはにっこりと微笑む。
「努力してますからね」
「何だよ…努力って…?」
俺達がよく会うのは偶然だろ?
「あの時と、今回は違うのではありませんか?」
確かに、『時計台』と『スキーロッジ』で会ったのは只の偶然。
けれど、あの刹那の邂逅も…そして今日も出会ったのも………『必然』。
いや、寧ろ前回も今回も彼が自分を追いかけてきてくれた様なもの。
「まあ、な…」
KIDが何を言おうとしたのかを察知したコナンは複雑な顔を見せる。
それは『探偵』としての『江戸川コナン』でも。
『小学生』としての『江戸川コナン』の表情でもなく…。
その表情の変化にすらKIDは魅せられていく。
「名探偵…知っていますか?」
「あ?」
「一度目の偶然は『偶然』…二度目の偶然も『偶然』…けれど三度目の偶然は…」
「『必然』だろ?」
「ええ」
誰が言ったのかすら解らない言葉。
けれど耳にした事ぐらいはあったその台詞。
「で、お前はこれを『必然』だと言いたい訳か?」
「ええ」
(貴方と私が出会うのは必然だったんですよ…名探偵)
心の中で、ひっそりと付け加えるその言葉。
決して表に現す事のできないその感情。
「まあ、次に会うのは他の時にして欲しいな…」
「…え?」
「お前とは純粋に頭脳戦をしたいだけだからな」
「名探偵それはどういう意味…」
「しっ……。あれ〜? おじちゃん調べ終わったの?」
小さな口元に人差し指がそっと当てられる。
そして、コナンは『小学生』としての『江戸川コナン』へと見事なまでに豹変する。
見れば、茂木が気が済むまで調べたのかこちらを振り向こうとしていた。
KIDはコナンにばかり気を取られ、茂木が調べ終わった事にすら気付いていなかった事に苦笑する。
――――ダァン
そして、そこに鳴り響く銃声。
これから始まる事は全て予定してある事。
犯人以外しか知り得ない…完璧な計画。
「さて…それではまいりましょうか…」
誰にも聞こえないようにそっと呟くと『小五郎』は茂木と共に銃声のした方へと走って行った。
『お前とは純粋に頭脳戦をしたいだけだからな』
コナンからのその一言を大切に胸の中へと仕舞い込んで…。
END.
えー…すみません…ほんとマジで…。
こんなブツしか書けなかった僕を許してください、雪花姉ι(しかも短いし…)
修行して出直してきます…(逃)
ちなみにタイトルの意は『必然的な出会い』………そのまま…(爆)
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