HEARTBEAT



 2.


「あら黒羽君…なにかあったのかしら?」

 トリの来訪を告げに隣家へやって来た快斗への女史の反応(笑)。

「哀ちゃん…トリが来るって、せっちゃんが…」
「…そう。雪花のことだから…いつ来るかも把握済みなんでしょう?」

 快斗の『トリ来訪』情報に表情が激変する哀。

 …しかし、彼の形容詞は『トリ』で通じるンだな(笑)。


 『トリ』と言う事葉にまだ違和感を持っていた快斗は、あっさりと受け取った哀に、少々の脱力感を覚える。

「あ、哀ちゃん…違和感ないのね;」
「そんな事はどうでもいいの。…それで? いつこっちに来るのかしら?」
「えっとね…」

 きょろきょろと辺りを一応見渡し、哀の耳元で先ほど与えられた情報を口にする。

 …が、ここは隣家。しかも今では哀専用となっている地下室である。
 快斗のこの行動は、全く持って意味を持たないのだが…まあ、気分だけは味わえるか(爆)。

「……そう。さすが雪花ね。時間までしっかり把握しているなんて…それで? 黒羽君はどうするつもりなのかしら?」
「そりゃもちろん『オレの』新一に手を出そうっていうんだから、それなりの報復は受けてもらわないとね♪」

 嫌に楽しそうな表情を浮かべた哀に、快斗もウインク付きで返答する。
 予測した通りだった答えに、哀は着ていた白衣のポケットから一錠のカプセルを取り出し…

「…それじゃあ、コレ…試してみる?」
「哀ちゃん…これはいったい…?」
「これは…私と雪花が共同で作ったものよ(妖笑)。昨日出来たばかりで、まだラット検査もしていないけれど…v」
「そ、それって…何の効果が…;」
「……知りたい(妖笑)?」

 かなり怯え気味な快斗君。
 どうやら『雪花と共同で作った』って辺りが余程怖いらしい(爆)。

 それとは正反対に、珍しい程もの凄く上機嫌な哀。
 薬の効能(…)を言いたくて仕方がないらしい(笑)。


「…是非…(絶対聞かない方が見の為のような気もするんだけど…;)」
「ふふ…v これを服用すると、もれなく身体中の毛という毛が生えてくるわ。数時間後には効果が現れる…(薬用)毛生え薬もびっくりの代物よ(妖笑)」


 ……それは一体、どっちの案で作ったンですか?




 ──その頃の雪花…

「ふんふんふ〜ん♪ …あ! この新一サンかっわい〜v ゲットゲットぉ♪」

 相変わらずのビデオ鑑賞会を続行中。

 …ただし。その手は謎の機械を操作している…;


「〜♪ あ。そぉいえばオレ、新一サン特製のカレー…食えるのかなぁ? 2皿は残しておいてくれるって約束だったよな…」

 ふと思い出し、もしも食べれなかった場合の時の報復を考え始める(爆)。
 ──が、どんなに凄い情報源を持っていようと、何処までも底深い腹黒の持ち主でも、基本はお気楽極楽人間な雪花(爆)。

「……ま、いっか♪ それより今はこっちの収拾〜♪」

 後のことよりも、今は目先のビデオ…である;




 ──戻りましょう(笑)。

「いいねえそれ♪ 街中で生えるようにしてやろうかな〜♪ そしたら何処にも行けないだろうしね(妖笑)?」
「服用したら当分は効果持続。…切れるのは…雪花に聞いてみた方が正確に解るわ。どうする? 使ってみる(妖笑)?」

 満面の笑み(しかも妖しい)を浮かべて問う哀。
 そこで、快斗は急に身を震わせた…。

「……ねえ哀ちゃん、冷房かけ過ぎじゃない?」
「冷房? ここは除湿程度のものしかかけてないけど…?」


 …どうやら、雪花の方の悪寒(…)を感じたらしい。


「おっかしいなぁ…確かに寒気感じたんだけど…」
「体調なんか崩さないで頂戴ね? 工藤君の心労が溜まるのはご遠慮願いたいわ」
「……ハイ、気をつけます…;」

 哀からの忠告に大人しく頷く快斗。嫌というほど解ってるらしい(爆)。


 …それはともかくとして。出来たてほやほやの新薬を既に使う気らしい快斗サン。

「効果持続か…ねえ哀ちゃん、それ液体に溶けやすく出来る?」
「液体に…? 出来なくはないと思うケド…その辺りは雪花に頼んだ方が早いかもしれないわ」
「そっか…じゃあせっちゃんに頼もうかな」
「なんだったら今から呼んでみれば? 時間的にも私がやるならギリギリかもしれないし…?」

 どんどん進んでいく会話。
 その内容から窺う限り…雪花の腕は哀ちゃんよりも上…?

「わかった。じゃあせっちゃん呼んでくるね〜♪」

 話は決まったとばかりに早速、雪花を呼ぶ為に隣りへと動き出す快斗。
 その様子に、哀が目を丸くしつつ呟きを漏らす…

「………工藤君の家にいたのね、雪花…;」


 …知らなかったらしい(爆)。




「? なぁんか今、呼ばれたような…?」

 快斗が動き出す少し前…ふいにそう呟く雪花。
 ちなみに、ビデオ鑑賞は既に制覇。当然、その映像の入手も完了☆

「! やっぱ呼ばれたわ。んぢゃ、そろそろコレ片付けて……このビデオは…どうすればいんだ…? このまま放置(しても良いンだけど)したら新一サンに見つかる、よねぇ…?」

 真っ先に謎の機械を仕舞う(笑)。一体何処に収納しているのだか…;


「…とりあえず、ビデオは元あった場所には戻したし…っと。帰ってきたみたいだね☆ んぢゃ、お出迎えにでもいこうかしら♪」

 隣家からの物音に反応する雪花。
 防音設備も程ほどに良い(ハズ)の工藤邸で、あっさりとそれを裏切る耳;


 …しかし、なんで「元あった場所」を知っているンだ?



「たっだいま〜♪ 新一はまだ帰ってないみたいだし…あ、ビデオ片付けなきゃ!」
「お帰んなさぁい♪ なんだかお呼びみたいですが…なにかありましたぁ?」

 いきなり階段脇から現れた雪花がさらっと自然に尋ねる(笑)。
 そろそろ能力(…)を完全に認めだしてるらしい快斗は、最後の理性(?)で、

「(…な、なんで知ってんだろ…)」

と、思いつつ返事を返す。

「あ、せっちゃんただいま〜♪ よく呼んでるって解ったねι」
「なんとな〜ぁく、そんな気がしたんですよぉ☆ あ、ビデオありがとうございましたぁ♪ ちゃんと元の場所に片付けて置いたんでv 後で確認しておいてくださいね!」
「そ、そうなんだ♪ 片付けててくれたの!? ありがとう♪ ごめんね〜やらせちゃってι」

 あくまでのんびり。

 さらり…と答え、片付けた事を伝える雪花に、内心結構驚愕しつつも敢えてどうして片付けられたのかは聞かない快斗(笑)。

「いやいや〜、気にしないでクダサイ♪ 新一サンに見つかったら大変ですしね(爽笑)。オレも堪能させてもらったしv」
「ありがとう♪ ほんとせっちゃんて良い子だよね〜♪」
「そんなことないですよぉ♪」

 仕入れた(コピった)事は当然言わない腹黒雪花。
 快斗に褒められご機嫌な様子(爆)。

「あ、そうそう悪いんだけどちょっと一緒にお隣来てもらえるかなぁ?」
「へ? お隣りですかぁ? 女史になにかありまし……あ! もしかしてトリさんの件ですかぁ?」
「そうそう、トリの件でさ〜、哀ちゃんがせっちゃんの方が多分適役だからって」
「ほへ?」

 その説明は相当略していますよ、快斗サン(笑)。

「(ナニが適役なんだろぉ? オレ、女史に比べたらまだまだなんだけどなぁ…)」


 さすがの(?)雪花にもちょっと解らなかったらしい…



「とりあえず、女史のとこに行けば良いンですかぁ?」
「うん、一緒に来てくれると助かるんだけど。良いかな?」
「はぁい♪ 全然良いっすよぉ♪ どっちにしろ、部屋にも行きたかったしv …あ。もしかして新薬使うんですかぁ?」


 部屋に戻る理由:謎の機械を置きに行く。


「そうそう♪ あれせっちゃんと哀ちゃんの共同開発なんだって??」
「そうなんですよぉ♪ でも、共同制作って言うか…女史のお手伝いをさせて頂いただけなんですけどねぇ♪」
「そうなの?」

 謎の機械にはさっぱり気付いてない(笑)快斗が聞くと、雪花は明るく否定する。

 …あくまでも「手伝い」らしい。


 しかし、そろそろ「雪花」という人物を解ってきた快斗。聞き返しながらも、

「(いや…きっと結構この子作ってるよな…)」

とか思ってたりする(笑)。


「はい〜♪ オレはちょこぉっと、思いつきを提案しただけで…って快斗サン、信じてませんねぇ?」
「(げっ…)そ、そんな事ないよ〜♪」

 快斗の鉄壁なポーカーフェイスも、雪花の前では無意味らしい;

「(もしかしてこの子読心術まで使えたりしないよなぁ…;)」

 あの(…)哀が側に置いてる為か、その可能性は捨て切れない…と真剣に考えたりする。

「……ま、いいや☆ では行きましょうか♪ 女史がオレを必要としてくれてるンなら頑張って期待に応えなきゃだし〜ぃ!」
「う、うん。じゃ、じゃあ行こうか〜♪」

 基本は楽天家な雪花の促しに、内心ではドキドキな快斗も不自然にならないように(…)明るく頷いた…。



雪花作(?)の謎の機械登場だぁ♪
そしてやっぱり『トリ』で通じるんだな(笑)
さてさて…トリの運命やいかに…(ぇ)


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