離れていた時間など
離れていた事など
忘れてしまうほどに
もどってきた彼はいつもと同じだった
歪んだ愛情【epilogue】
「新一! この三ヶ月間何食べてたの!!」
家に戻ってきた快斗。
そして、開口一番に言われたこの台詞。
「何食べてたって…」
「これは何!」
「カロ○ーメイト」
「じゃあこれは!」
「ウィーダー○ンゼリー。てか、見れば解るだろ?」
一体何を言い出すのかと言いたげな新一に快斗はガックリと肩を落とした。
「そりゃ解りますけど…」
「じゃあ、聞かなくてもいいじゃねえか」
「いや、俺が言いたいのはそういう事じゃなくて……」
はぁ…、と一つ溜息を吐いた快斗に新一はことんと首を傾げる。
それに快斗としてはより、ガックリときてしまう訳で…。
「新一君…。ホント新一はもぅ……」
もう一度はぁ…、と溜息を吐いて快斗はぎゅーっと新一を抱き締めた。
「一人にしとくと食事すらまともにしてくれないんだから…」
「まともに食事? 食べてたぞ? その証拠がそれなんだから」
「…………」
快斗も解ってはいた。
こういう人なのは。
でも、それでもここまでくると溜息しか出てこない。
それが冗談でなくて真面目にそう思っているのだから余計に性質が悪い。
「やっぱ俺、新一の事一人になんてさせとけねえ…」
「?」
一体何があったのだ、という様に首を傾げる新一を抱き締めながら快斗は遠い目をして呟いた。
「新一の事一人にしてたら…」
新聞や週刊誌に『名探偵栄養失調で入院』なんて文字が躍りかねないと思う。
それはひじょーに避けたい。
「俺絶対新一から離れないからね?」
新一の事をぎゅーっと抱き締めながらそう誓った快斗に、新一は何があったのだろうと首を傾げながらそれでも小さく頷いた。
名探偵が栄養失調で倒れずお仕事をしていられるのは、実は夜の魔術師のお陰なのかもしれない。