とてもとても素敵な、綺麗なモノだと思うんだ
だから、だからね…
それを君自身の手で壊してしまわないで?
――― 穢れた手とそれ見守り続ける悪魔 ―――
見る度に思う。
なんて汚れてしまったのだろう。
なんて穢れてしまったのだろう。
人を殺さないなんてあくまでも建て前で。
それを戒めにしていた筈なのに、箍が外れるのは簡単で。
血に染まった衣。
血に染まった手。
白かった筈の全ては真っ赤な真っ赤な『紅』へと変わった。
生温かいその紅は…俺の全てを覆い隠した。
「快斗。おはよう」
「………」
呼びかけても返って来る事の無い返事。
虚ろな瞳は新一の姿を映す事すらしない。
けれど、それでも新一は快斗に微笑みかける。
「今日は天気がいいから窓開けような?」
そう言って、カーテンを開け、窓を開ける。
室内に入り込んできた光に目を細める。
暖かな朝の日差し。
けれどそれが一番似合う筈だった彼の意識は今此処には無い。
組織を潰してきた彼。
それは愚かな女の名を持つ宝石を探し当てるよりは簡単で。
でも、快斗にとっては…綺麗な綺麗な彼の心はその事項を受け入れられなくて。
仕方が無いのはきっと頭では解っていた筈。
ああするしかなかったのだと、彼は解っていた筈。
けれど、理解する事と受け入れる事は違う。
頭で理解は出来ても、綺麗過ぎる彼の心ではその事は受け止め切れなかった。
必然と言えばそれは必然で。
気付けなかった…いや、気付いてもどうする事も出来なかった俺は唯見詰めている事しか出来なくて。
徐々に壊れていった彼を見詰め続ける事しか出来なくて。
けれど、ずっと見詰め続けてきた。
目を逸らさずにずっと。
それが…彼を救えなかった俺の罰。
「なあ、快斗…」
何時もの様に快斗の隣に座り、そっと手をとって彼に語りかける。
「お前が気にする必要なんて何処にも無いんだぜ?」
あんな奴等殺されて当然。
そう思える俺は最低。
でも、本当にそう思うのだから仕方ない。
だって、あんな奴等より快斗の方がよっぽど……。
「だからさ…帰って来いよ」
お前は何も気にしなくていい。
お前が汚れたと、穢れたと思う手は綺麗なままだから。
それに…もしお前がそれでも自分が穢れていると言うなら、俺のこの手を差し出してやるから。
―――君よりもずっとずっと穢れている俺の手を。
END.
組織を潰して元に戻った新一を置いて、組織を潰しに行った快斗。
んでもって、帰ってきた快斗を見守り続ける新一。
お互い、相手の手は真っ白で、自分自身の手は血に穢れていると思っている、そんな感じかなあ…。
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