「まただ…」


 その視線の主は解っていた








DA・KA・RA(side S)








 本屋で本を選ぶ振りをして、そっと周りに視線を走らせる。


(居た…)


 目指す人物を視線の先に見付けて、けれど不審に思われないように自然に他の場所に視線を移した。

 此処のところ毎日の様に感じる視線。
 その視線から彼特有の気配を感じて、直ぐにそれが彼のものだと気付いた。


(馬鹿…)


 内心でそう悪態付く。


 彼の気持ちは夜の逢瀬で。
 彼の戸惑いは日々向けられる視線で。

 全て解っているから手を伸ばしてこない彼がもどかしい。

 自分の気持ちはもう既に決まっているのに…。


「さっさと…手伸ばせよ…」


 そっと彼に聞こえていないのを承知で呟く。

 あいつが思う程俺は弱くないし、あいつ一人ぐらい俺が守ってやるのに…。
 そう思っている事も言わない。

 だってそれは…あいつが決めなければ言えない事だから。


「だから…駄目なんだ」


 お前が決めないから…お前が俺に手を伸ばさないから全てが進まない。
 俺はもう全てを決めているのに。


「さっさと…言えよ馬鹿……」


 小さな呟き。
 それは新一の本音。



 ――『愛してる』だから早く手を伸ばせ…








END.


………この続き………書くべきか?(悩)
でもこのまま終わらせた方が良い気がする…(爆)

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