CANDY☆ 【翌日・朝食編】
1.
身支度の整った哀と、手にしていたノートを何時の間にやら片付けた雪花(やっぱり未確認)は、快斗の先導のもと工藤邸へ移動する。
…玄関の扉を開けると、たちまちに漂ってくる美味しそうな匂い──
ぐぎゅるるるぅぅぅ…
「あ…ι」
「あはは☆ すぐ用意するから待っててね〜」
「はぁい///」
「………」
哀の呆れた眼差しに照れ笑いを返す雪花(笑)。
パタパタとリビングを抜けていく快斗の背中を眺め…ふと、雪花は哀に尋ねる。
「ところで女史? オレ、急にここにお邪魔しちゃっても大丈夫なんスか?」
「平気よ…家政夫が許可してるんだし」
「…家政夫…ι」
あっさりと言い放った哀に、雪花はちょっとだけ快斗に同情する(笑)。
「ああ、1つだけ助言しておくわ」
「?」
「…ここの2人を早いうちに見慣れなさい」
「??」
哀の言葉にことん…と首を右へ傾ける雪花。
しかし哀はそれ以上なにも言わず、
「ほら、早くあがりましょう」
「あ…はぁい」
なんか釈然としないまま、哀の後を付いて行く雪花……な、訳がなく。
「(あは〜ん♪ 慣れなきゃいけないホド甘々なのかしらん?)」
……ちゃっかり状況把握済み(爆)。
「あ、リビングに入ってて」
玄関からリビングへ向かう処で、快斗とすれ違う。
そう言ってパタパタと階段を上がっていくのを見送る。
「しんいち〜ぃ? もう起きた?」
扉の開閉音が2度聞えると、それ以降の声は全く耳に届かなくなる。
「…朝に弱い方なんですかぁ?」
「低血圧もあるけど、原因は呼び出しね」
「じゃあ、やっぱりコレ、必要ですかねぇ?」
そう言うと、雪花は再び例のノートを手元に出した。
「…さっきから気になってるんだけど…」
「はい? なんでしょ?」
「何処から出してるの? それ」
「あは〜☆ 企業ヒミツですぅ♪」
哀からの素直な質問(…)に、雪花はにっこりと笑う。
「もしどっかからバレて、盗まれたら大変ですから〜」
「……まあ、そうね」
「でも、快斗サンにも見破られてないみたいなんで、結構嬉しいですぅ♪」
そう言った雪花に、哀が首を傾げる。
「なんで、黒羽君に見破られてないと嬉しいの?」
「だって! 快斗サンって、あの黒羽 盗一サンの息子さんでしょ♪ マジシャンに気付かれないってのは結構自慢ですよねぇ♪」
…かなり上機嫌だ(笑)。
「…知っていたの?」
「はいv 顔は知りませんでしたけど、どんな人かとかなら…コレに書いてありますからぁ♪」
上機嫌のまま、雪花はのんびりとノートを指差した。
「半径10kmは押さえているんでしたっけ?」
「はいな♪ もう、ご用の際はいつでも言って下さいv」
思い出したように呟く哀に、雪花はにっこりと情報提供を惜しまない構えを見せる。
すると、
「……それ、関西版とかはないの?」
──か、関西版?!
「へ? オレが関西に行った事ないンで…ι」
「行った処は網羅しているの?」
「まぁ…」
頷くを返す雪花を前に、なにやら思考に沈む哀。
「…………」
なぁんとなく、何を考えているのかを悟る雪花(笑)。
「…関西全域なら1週間。地域特定で3日。個人なら1日ですけど?」
「個人。1日でお願い」
「いぇっさ〜ぁ♪」
ポツリ…と作業日数を漏らせば即答で返事が返って来る。(カウント0.09)
「それじゃ、ご飯の後に『対策』立てたらちょっと出かけますねぇ♪」
「お願いするわ」
「晩には帰って来れると思いますケド…」
「──報酬はさっきの実験で使った薬、でどう?」
「ありがとうございまぁっす!」
…今ここに、妖しげな取引が成立した…ι
(ちなみに哀の言う『薬』は、先程快斗が飲まされそうになった妖しげな色をしたブツである…)←どうやら実験中に欲しがっていたらしい(笑)。
…と、その時──
ドゴッ! バキッ! ゴト…
と、言う音が上から響いてきた…ι
「…またやったのね」
「え…?」
溜息混じりに呟いた哀に、雪花がことん…と首を傾げる。
「工藤君、寝起き最悪だから…」
「………それはもしかしなくとも、快斗サンが犠牲になったと言う事でしょうか…?」
「ぴんぽぉん」
…感情の伴わない『ぴんぽん』を口にする灰原さん…ι
「ぶ、無事なんでしょーか…ι」
「大丈夫よ。彼、身体だけは丈夫だし…」
なんか今、『だけ』のみすこぶる強調されていたような…?
「それに、今日の打撃音は2回だけだったから、たいした事ないわ」
「打撃音…ι しかも2回って…」
…他の日はもっとある事も否定出来ないンですね(泣)。
落ちつきまくっている哀とは正反対に、天井を見上げ快斗の冥福を祈っている雪花。
…ってか、快斗はまだ(…)死んでいません。