千切れてばらばらになった羽を

 拾い集めて埋めてやった













 自宅への帰り道の途中、ばらばらの蝶を見つけた。

 羽は引き裂かれ、胴は半分に。
 けれどその羽の色鮮やかさは失われていなくて。

 綺麗で儚いその蝶がかの誰かを連想させて。

 そのままにしておけなくて、持っていたハンカチの上にその身体を拾い集めた。








 華やかなものだからこそ散り様は静かに。
 けれどその威厳はばらばらになった今も健在で。
 せめて安らかに眠れるように、せめて花の咲く時期だけは思い出したくて。

 そっと桜の木の根元に埋めた。


『桜の木の下には死体が埋まっているんだよ』


 そんな言葉を意識した訳ではないけれど、それでも埋めるならそして埋まるなら桜の木の下が良いかもしれないと思ったから。

 それはただ一人だけの葬列。








 埋めたのは蝶だったのか、それとも蝶に見立てた何かだったのか…。










END.


どっちでも読める…筈?
珍しく、壁紙から出来たss。


back