飛び立つように出て行った貴方が
もう二度と帰って来ないのではないかと心配になる
〜a bird in cage(Ver.S)〜
「どうしたんだよ」
帰ってきてからずっと抱きついたまま離れようとしない快斗に新一は何時もと違う何かを感じ取って、その柔らかくふわふわの髪をそっと撫でてやる。
「………帰って来ないかと思った」
ぎゅうっと新一を抱きしめる腕に力を籠めながらそう言った快斗の顔は今にも泣き出しそうなもので。
それを消してやりたくて新一は努めて明るく笑う。
「何言ってんだよ。ここは俺の家だぞ?」
ここに帰って来なくて何処に帰るって言うんだよ。
「………」
けれど快斗の顔は相変わらず泣き出しそうで。
新一はそれ以上何かを聞くのを止めて、ただ黙って快斗の髪を撫で続ける。
こういう時の快斗が何を考えているか大体の予想はついているから。
「…………もう帰って来ないかと思ったんだ」
そのままどれ位経った頃か、快斗が閉ざしていた口を再び開いた。
「確かに新一の家はここだけど、帰って来ないかと思ったんだ」
ふと、ずっとずっとこのまま永遠に帰って来ないんじゃないかと恐くなったのだとそう語る快斗に新一は苦笑する。
「ばーろー。俺はまだ死なねえよ」
「新一…」
「こんなお前を一人残したままじゃ安心して死ねないだろ?」
ったく…どうしてくれんだよ。
俺の寿命は延びる一方だ。
そう言って新一はそっと快斗の手を取り、自分の左胸へと導いた。
「聞こえるだろ?」
「うん…」
「俺は生きてる」
「………うん」
少しだけ明るくなった快斗の表情に新一は安堵して。
更に笑みを引き出す為の呪文を紡ぐ。
「いつか…」
「?」
「何時か俺以上の『東の名探偵』が出てきたらさ…」
何時か自分が必要ない程の『名探偵』が現れたその時には……
「――お前だけの籠の中の鳥になってやるよ」
「しん…いち…」
大きく目を見開いた快斗に微笑んで、新一はとびっきりの呪文を囁いた。
「そうすればもう帰って来ないかもしれないなんて心配は必要ないだろ?」
END.
ここは快新サイトです…(爆)←これを言うのも何回目だι
Ver.Kはちゃんと(…)快新になる筈…(ぇ)
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