街角で見かけた物体に
ふとある事を思いついた
〜有平棒〜
「たっだいま〜♪」
「おかえり」
何時もの様に買い物から帰ってきた快斗は何時もの様にてきぱきと冷蔵庫に買ってきた食材を詰めていく。
が、その間にちらちらと新一を伺うようにソファーの方へ視線を移す。
「……何だよ」
そんな快斗の視線に気付いたらしい新一は本から視線を外す事なく尋ねた。
「ん〜新一の色合いで有平棒作ったら綺麗だろうなぁ、と思って」
「…………何で突然有平棒なんだ?」
快斗の突然の謎の言葉に新一は思わず本から顔を上げ、快斗の方を見詰める。
そんな新一に笑顔で快斗はその訳を付け足した。
「今日買い物してる途中で見かけたからさ」
だから思ったんだよね。新一の色合いで作ったらきっと綺麗だろうなあって。
「…………訳わかんねえんだが?」
何だよ、俺の色合いって…。
「ん? そのままだよ?」
まるで白磁器人形みたいな白い肌に、紅を引いたみたいに赤い唇。
それから俺が新一の中で一番大好きなその蒼い瞳。
きっとその色で有平棒を作ったらきっと凄く綺麗v
「…………馬鹿」
快斗の補足説明に嫌味を言う気も失せたのかため息混じりにそれだけ言うと、新一は再び意識を本へと戻した。
「だって〜絶対綺麗だってば!」
きっと何処のお店にも引っ張りだこだよ?
「………」
「…新一のいけず」
すっかり反応してくれなくなった新一に盛大にいじけながら、それでも新一の為にコーヒーを入れる為お湯を沸かす。
が、そこで肝心の事にはたと気付いた。
「…新一の色合いを出せる訳ないか」
あんな綺麗な色合いは他の何物でも出せないしね。
「それに…もし出来たとしても新一の色合いを見る奴が増えると思うだけで嫌だし…」
ぶつぶつと呟きながら、それでもテキパキとコーヒーを淹れ新一の座っているソファーの前にあるテーブルにコーヒーを置いた。
そんな快斗の呟きの内容に頭が痛くなるのを感じ、新一はこれ以上先を読むのを諦めて手の中にあった本に栞を挟むとテーブルへと置いた。
「…お前が自分で言い出したんだろうが」
自分が言い出した事に文句言ってどうすんだよ。
「だって勿体無いじゃん」
俺だけで良いの。新一のこと見られるのは。
「………我が侭」
「いいの! 新一に関しては我が侭だもん」
何故か思いっきり胸を張って得意げに答える快斗にため息を一つ吐いて、新一は取り合えずコーヒーに口をつける。
その様子をやっぱり何故か楽しげに見詰めてくる快斗の顔面目掛けて、新一はコーヒーを持っているのとは反対側の手でクッションを投げつけた。
―――ぼふっ
それが見事に快斗の顔面にヒットしたのに新一は満足げに微笑んだ。
「…し〜んいち〜;」
「お前が悪い」
俺の読書の邪魔した罰だ。
「だってぇ〜」
「だっても何もねえだろうが」
大体文句言うぐらいならンな事最初から言い出すんじゃねえよ。
「………だってぇ…もしあったら綺麗だろうなあって思っちゃったんだもん」
微妙にいじけモードになっている快斗に、新一はふと思いついた事を言ってみた。
「…だったら作れば?」
お前なら作れんじゃねえの?
「ん〜…流石の俺でもそれは無理だなあ…」
新一のその綺麗な色合い出すのは俺でも無理。
きっぱりと言い切られて、新一はふむ…と少し考え込んだ。
「だったら俺で満足しろよ」
俺の色合いが良いならそれでいいんじゃねえ?
「もっちろん新一が一番に決まってるじゃんvv」
他に代わりになる物なんてある訳ないし〜vvv
やっぱり新一は他の物になんて置き換えられないし〜vvv
思いっきりハート乱舞な快斗の最終結論に、無駄に読書時間を削られたなと新一は深くため息を吐いのだった。
END.
バスから有平棒が見えたので…。
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