真っ赤な真っ赤な禁断の果実
秋桜と共にテーブルに置かれていたその実が余りにもぴったりだった
〜りんごのうた〜
買い物から帰ってみればダイニングテーブルの上に無造作に置かれていた真っ赤な林檎。
「新一これどうしたの?」
「ん? 貰った。」
博士のとこで貰ったやつの御裾分けだと。
「そっか…」
その林檎を一つとってじーっと見詰めてしまった快斗を新一は不思議そうに見詰める。
その瞳が林檎ではなく林檎を通して何か別のものを見ているのに気付いたから。
「快斗?」
「あ…ごめんごめん」
新一の呼び掛けとその視線を受け止めて、やっと元の世界に戻って来た快斗を新一は興味深げに見詰め続ける。
「何考えてたんだ?」
「ん? …俺にとって新一って林檎みたいだよなあ、って思ってさ」
苦笑混じりに言われた言葉に新一は首を傾げる。
「林檎?」
「そう林檎。だって俺にとって新一は『禁断の果実』だから」
『怪盗』である俺にとって『探偵』である新一は正に『禁断の果実』
手を伸ばしてはいけなかった筈の真っ赤な実。
「…じゃあ俺とお前は楽園から追い出されるのか?」
それを言うなら俺にとってのお前も同じだろ?
静かに快斗の話しを聞いていた新一にそう尋ねられて、けれど快斗はその問いに首を横に振る。
「違うよ。少なくとも俺は楽園に来た」
新一に逢う前の世界は全てが灰色で、けれどその禁断の果実に手を伸ばした瞬間から全てが薔薇色に染まった。
新一に逢った日から俺にとっては世界が楽園になったんだよ?
「…お前それ矛盾してるだろ?」
それじゃ禁断の果実に手を伸ばしても御咎め無しじゃねえか。
眉を寄せる新一に快斗は微笑んで、新一の隣へと腰を下ろす。
「矛盾はしてないんだよ? 俺にとっては新一と一緒に居られればどんな場所だって楽園になるんだから」
それこそ草一本生えないような荒地でも、カラカラに乾ききった砂漠でも。
新一と一緒に居られる場所が一番の楽園だから。
「…どうしてお前は真顔でそういう台詞が言えんだよ」
拗ねた様にそっぽを向いてそう言われた言葉さえ快斗にとっては睦言で。
「そりゃ新一を口説く為なら俺は何だって言えるよ?」
幾らでも愛の言葉を囁けるんだよ?
それこそこの命が朽ち果てるまで。
それでも言い足りない程だから。
「解った! 解ったからそれ以上言うな!」
放っておけばそのまま幾らでも出てきそうな快斗の言葉に新一は真っ赤になりながら慌てて制止をかける。
けれどその動作すら快斗にとっては彼からの愛情表現で。
ついつい顔が綻んでしまうのを抑えきれない。
そしてそんな可愛らしい事をされてからかわずにいられる筈がなく…。
「でもね新一。もう一つ新一が林檎みたいだって思った訳があるんだよ?」
「もう一つ?」
「そう、もう一つ」
興味を持たせる為にわざと区切られた言葉に案の定新一の持ち前の好奇心が掻き立てられる。
「勿体ぶらずにさっさと教えろ」
「はいはい。もう一つはね……新一ってば直ぐ真っ赤になるんだもん♪」
真っ赤な林檎みたいでしょ?
「なっ…/// 快斗!!」
すかさず落ちてくる右足を軽々と避けて、更に真っ赤になってしまった新一に笑みを深めて。
手の中の林檎を数回手から真上へと放る。
「だから俺にとって新一は林檎みたいな存在なの♪」
解ってくれたんなら一緒にこの真っ赤な禁断の果実を食べようよ?
―――二人一緒なら楽園から追い出される心配もないんだからさ
END.
すいません…題名の『うた』の部分まったく関係なし(爆)←BGMがこれだったからι
しかしこの歌がみんなの歌なのはどうなんだろう…(核爆)
いや、大好きなんですよ?この曲自体はvv
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