愛
love
liebe
どれだけ愛を囁いても
どれだけ愛を紡いでも
まだ足りない
全然足りない
どうしたら君への愛を表現出来るのだろう
――『amo』――
「愛、love、liebe…」
ブツブツと呟いていれば、後ろから容赦の無いスリッパ攻撃を浴びせられる。
「っ! しんいちぃ…それ、リアルに痛いからぁ…;」
「煩い。お前がんな事ばっかり言ってるから悪いんだろうが」
「だって…」
思いっきり綺麗にスリッパが直撃した後頭部を擦りながら快斗は涙目になる。
彼への愛情はどんな愛の表現をしても足りない。
愛だとか。
loveだとか。
そんな言葉達では表現しきれない。
「amo…かなぁ…」
ぽつりと呟いた言葉に、再度後ろから投げられたスリッパが同じ位置に綺麗に直撃した。
「っぅ…; 新ちゃんってば乱暴;」
「るせー。つーか、お前…エスペラント語なんてマニアックなトコ持ってくんじゃねえよ」
「流石は名探偵。そこまでご存知でしたか」
「まあ、昔趣味で齧ったからな」
国際共通語として生み出されたエスペラント語。
もし、世界中に彼を愛していると叫びたいのなら、ソレが一番良いと思った。
『amo』――― エスペラント語で『愛』という、この単語が一番。
「…いいじゃん。俺の新一に対する想いはこの一言に尽きるんだから」
「…真昼間からそんな恥ずかしい事言うな」
「だって、俺は何時だって新一の事愛して…」
「煩い!! それ以上言うんじゃない!!」
真っ赤な顔をした新一の言葉に遮られた愛の言葉も悪くないと思う。
彼と、自分を結びつけてくれたこの国の『愛』も悪くはないと。
「ま、いっか。毎日違う言語で愛を語り続ければいいんだしね?」
「………頼むから止めてくれ;」
がっくりとうなだれられても、正直止めるつもりなんてない。
だって…彼への愛はどう頑張ったって止められないから。
「ねえ、新一」
「何だよ…」
「Mi amas vin.」(私はあなたを愛しています)
快斗の確信めいた笑みと共に紡がれた最大限の言葉に、新一は顔を真っ赤にして俯く事しか出来なかった。
最後のエスペラント語は反転すると意味が出ます。