Zusammenkunft




 クリスマスの夜。

「デートの基本はやっぱ待ち合わせだよね♪」

と、言う快斗の一言で、一緒に住んでいるのにも関わらず、外で待ち合わせをした2人。


 今の時刻は午後6時過ぎ…待ち合わせは7時だ。
 朝からマジックショーの関係で予定のあった快斗は、既に待ち合わせ場所に着いていて…この後やってくるであろう、愛しい恋人の姿を思い浮かべては優しい微笑みを浮かべている。


 今日は朝から1日、顔を見ていない。
 それが、あと数十分としないうちに見れる。逢える。

 その事が、快斗の表情に自然と笑みを浮かべさせるのだ…。

 そんな快斗の表情に、周囲で同じように待ち合わせをしていた女性達の視線が集まる。



 …そんな時、快斗の携帯が1通のメールを受信した。

 それは、快斗が恋人専用に設定したただ1つの曲──…


  『悪い。事件』


 予想通りと言うか、なんと言うか…

 快斗はその簡潔な文面に苦笑いを零す。
 事件は待ってはくれない。まして、それは新一のせいではないのだ。

 すぐにメールを打ち返す。
 そうしなければ、新一は携帯の電源を切ってしまうから…。


  『終わるまでまってる』


 送ったメールに返事は来なかったけど、きっと新一は見ている。
 そう確信している快斗は、そのまま今は止まっている噴水の縁に腰を下ろした…。


 それなりの服装をして入るが、それでも長時間外にいるのは辛い格好。
 周囲と比べれば明らかに薄着なのだ。

 …それでも、快斗はその場から動かない。
 いつ、待ち人が来てもすぐに顔を合わせられるようにと…




 ──あれから5時間以上。ただいまの時刻は11時50分。

 新一にしては珍しく時間がかかっている。


 それほどに難しい事件なのか…?

 それとも、新一の身に何か起こったのか?


 いつまで経っても来ない事よりも、その事が心配になる。


 どれだけでも待つ。すっとここで待ってるから…だから、無事でいて…



 そう快斗が願った時、駅前の方から慌てて走ってくる足音が聞える。
 雑踏に紛れながらもしっかりと耳に届いたその足音に、快斗の表情が自然と明るくなる。


 …待ち望んでいた愛しい待ち人。

 その姿さえ見れれば。無事な事さえ確認できれば…



 ──今までの時間なんてどうでもいい──



 息を切らせながら走ってきた新一を、自分の中で最高の笑顔で迎える。

「Merry X'mas☆」

 急ぐ為にスピードをつけすぎた新一を、そのまま抱き止める。

 なんの抵抗もなく腕の中に納まり肩を上下させる新一。
 身体は酷く脈打っていて…どれだけここまで急いで来たのかが解る。


 その事がまた、快斗を笑顔にさせるのだ…



「ご…めんな、快斗…」

 少し落ちついて来たらしい新一が、それでも息を切らせながら呟く。


 …その瞳は、ほんの少しだけ潤んでいる。


 それが走ってきたせいでなのか、それとも罪悪感からなのかは解らないが…

「気にしないでよ。オレが勝手に待ってたンだし」
「でも…っ!」
「じゃあこれから一緒にクリスマスしてくれる?」

 尚も言い募ろうとする新一に、快斗は軽く口付けを落とし問う。

「当たり前だろっ! オレだって…」
「ん? なに?」
「…オレだって、快斗と、クリスマス…したかったンだから…///」

 突然の口付けに赤面し、俯きつつも呟く新一。
 その一言で、快斗の『萌々パロメーター』(?)は急上昇を見せる。

「あ、そういえばホテル予約してるんだよねv」


 ──もちろん1412号室v 付き合ってくれるんでしょ?


 にっこりと、どこかわざとらしく言い、続けて新一の耳元で囁く。

「…用意周到だな///」
「そりゃもちろん♪ このくらいの甲斐性がないとねv」

 相変わらず、快斗の腕の中に大人しく納まっている新一。
 そんな姿に微笑み、快斗は最後の一言を再び新一の耳元で告げた…

「今日は一日中付き合ってもらうから覚悟してねv」

 瞬間、先程よりも赤くなっていく新一の顔に、快斗は愛しそうに啄みの口付けを落とす。
 隠れるように快斗の胸の中へと真っ赤な顔を隠す。
 そして…

「いいけど…腹減った」
「朝から出てたもんね…何も食べてないんでしょ?」
「食べる暇がなくてな…」


 そう。新一も快斗と共に朝から外出していたのだ。

 行き先は警視庁。用件は某・事件の後処理。



 だからこそ、新一からのメールにも素直に納得したのだ…。


 そして、ここからは快斗の知らないところだが、本日は何故か警視総監の息子・白馬 探。そして西の探偵・服部 平次も、新一と時同じく警視庁に着ていたのだ…。
 なにかとちょっかいをかけてくる2人を、軽く相手にしながら書類を見ていたのだが…そこで、ある事件との関連性に気がついた。
 すぐに動き出したかいがあり、なんとかもう1つの事件は食い止める事が出来たのだが………2人の探偵が不必要な動きをし、中々スムーズに事が運ばない。


 そのせいで、新一にとっても予想外な時間が取られてしまったのだ…──



「じゃあ、ホテルでルームサービスでも取ろうか」
「お前の料理が食べたい」
「そうだなぁ…たしか簡易キッチンがあったはずだし、簡単なモノしか作れないけど、それでも良い?」

 抱きしめたまま問う快斗に、新一は今だ顔を上げられないまま、

「…快斗の料理だったら、なんでも良い…」

と、呟いた…。


「(…か、可愛いっ!!)」←馬鹿。


 心の中は既に満開お花畑(笑)。
 そんな時の快斗のすることと言えば…

「し、新一〜v」
「わっ! 馬鹿…っ、公衆の面前で抱き着くんじゃねえよ…///」
「だって新一可愛いんだもん♪」

 …言わずともがな。
 目の前の可愛い可愛い恋人である新一に抱き着く事である(笑)。


 ……それにしても。
 勢いのまま飛び込むのは平気でも、抱き付かれるのは駄目な名探偵(笑)。

 まあ。コレも一種の照れ隠しですね♪



 見るからにご機嫌な快斗の様子に、

「…ったく! 早く行こうぜ!///」

と、新一は抵抗していた動きを止めた。

「……新一…?」

 いつもならこんな公衆の面前で抱き付くなど、言語道断。
 すかさず黄金の右足が飛んできてもおかしくない状況で、抵抗が止んだ事を不思議に思う快斗。←てか解ってるならするなよ;

「………///」
「?」
「──今日は、クリスマス、だから…」
「うん。そうだね」

「だから…今日くらいは、別に良いよ///」

 顔を真っ赤にしながら言った言葉。
 それは、新一なりのお詫びと…いつもは素直になれない、自分への言い訳。

「新一、顔真っ赤だよ♪」
「! …いちいち言うなよ///」
「だって〜ぇ、可愛いンだもんv」
「…っ///」

 快斗の腕の中へと、新一は赤く染まった顔を隠すように潜り込む。


 今だ抱き合ったままの2人。
 新一がそうする事で、2人の距離はゼロになり…密着度は増す。


「…ほんと、可愛いよ、新一…」
「か…ぃと…」


 そっと新一の頬に快斗が手を添えると、その促しに逆らう事無く顔を上げた新一の顔に、ゆっくりと…でも確実に影が落ちた…──






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