閉じ込めてしまおう

君を全てから


 閉じ込めてしまおう
君を自分のモノにする為に



 愛情という名の枷を付け

 嫉妬という名の檻にしまい込む


 だって、君を失わない為にはこうするしかないから…










――という名の牢獄にて――











 ――カツ……カツ………



 ゆっくりと石の階段を下りてくる靴音。
 消せる筈のそれを敢えて消さずに降りてくるその相手に一瞬身体が強張る。


 どうしてだろう。一番大好きな人の筈なのに。


 カツカツと更に音を立てて近づいてきた靴からゆっくりと視線を上げる。

 真っ白で一点の染みもない純白の衣。
 純白に浮かび上がる鮮やかな青と赤。
 その白と対をなす、ふわふわの黒。
 そして…一つだけの綺麗な綺麗な藍。

 それが彼を形作る全て。


「いい子にしてたか?」


 クスッと笑う笑みはきっと不敵なモノ。
 けれど今の自分には、盲目になってしまっている瞳にはそれすらも優しく映る。


「………」
「ま、ここじゃおいたも出来ねえだろうけど」


 そう言って、檻の鍵を開け中に入ってくる魔術師を新一は虚ろな瞳で見詰める。
 それはまるで…、


「何?誘ってんの?」


 夜の闇に紛れる娼婦の様。


「ちがっ…」
「ふーん。どうせそうやってアイツの事も誘ったんだろ?」
「違う!」


 瞳を潤ませ、出ない声を精一杯張り上げてそう叫んだ新一の顎を魔術師は強く掴み、ゆっくりと顔を上げさせる。


「どっちでも別にいいよ。もうここから出す気はないから」


 それは言葉こそ嫉妬に狂った男の酷く醜いものだったが、その響きはまるで神聖なる誓いの様で。
 新一は一つだけの藍に吸い込まれる様に見入ってしまう。
 まるで美しい悪魔に魅入られたかの様に。


「新一は俺だけのモノなんだよ」


 その言葉は麻薬。
 脳まで染み渡るその言葉に抗う気すらおきなくなる。

 付けられているのは簡単な枷。
 閉じ込められているのは簡単な檻。

 その中から逃げ出そうと思えば新一は何時でも逃げられる。
 けれど…。


「お前だって…俺だけのモノだろ?」


 返された誓いに、魔術師は静かに微笑んだ。








 捕らえられ閉じ込められた蒼い鳥は

 自らの意思で其処に留まる事を誓った










END.

平和(…)な監禁モノ。←嘘吐け…ι


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