Sonae fur klavier Nr.14 “Mondschein”op.27-2 開いていた窓から入り込んだ風。 緩やかに踊るカーテンの隙間から、天空で輝く月明かりが零れる。 ──就寝から1時間。 その眩いほどの輝きに、今だ眠りについていなかった哀はそっと身じろいだ。 Nocturne -Another- 何処からそんな話になったのか解らないが、今日はクラスの親睦会。 …数ヶ月前の『学級会』で、 『夜の学校を探索して、そのまま教室でお泊まり会をしよう!』 と、少年探偵団が提案していたのを微かに覚えている。 前日の深夜、相変わらず(…)の研究所に篭っていた哀は、学級会そのものを上の空で聞いていたが……意外な事に許可され実行されている『親睦会』。 たいした冒険も事件も起こらず、歩美達は不満そうにしていたが……こうして、午後10時には就寝を言い渡されていた。 もっとも、哀からすれば「そう毎回事件が起きても困る」と言った処だが… 小学生には「夜更かし」と言える就寝時間。 しかし夜行性と自負している哀にとっては、まだまだ目の冴えている時間であり… どうしたものか…と思案していると、隣で寝ていたはずのコナンが立ち上がった。 彼も自分のように寝れていなかった事には気付いていたが… コナンがそのまま静かに教室を出て行くのをそっと見送り、教室の扉が閉まった後で、哀も周囲を起こさぬようゆっくりと起き上がった…。 出ていったコナンの後を追うように教室を出た哀。 それでも当然ながら、コナンの後を追うつもりなど全く無く… 「寝ついたからとは言え、よく子供だけ残して離れられるわね…」 …その間に何かあったらどうするつもりなのか… 現にこうして、教室から抜け出している人物がいると言うのに…ねぇ? 心にも無い心配事を口にし、当ても無く廊下を歩く。 それなりに人の気配には気をつけて… 「?」 ──そこで感じた「何か」の気配。 思わず歩みを止めるが、その気配は自分とは正反対へと遠ざかっていく。 「…この気配…、まさか…?」 覚えのあるそれに首を傾げる。 自分の知ってるその気配の持ち主は、どんな事があってもこんな場所には用の無い人。 …もっとも。場所ではなく、ここにいる人物には用があるのかもしれないが… 「彼が神出鬼没なのは今更だけど」 呆れたように呟き、哀はその気配を感じれた方向へと足を向ける。 なんてことは無い。単なる暇つぶしと好奇心。 あの2人がお互いに惹かれ合っているのは知っているから… 「見てるこっちがじれったいのよ」 溜息混じりに呟き、哀は残された気配を辿って歩き出した…── ──辿りついた処で見たのは予想外の光景。 その場所に近づくにつれ、微かに聴こえて来ていたピアノの音色。 …それは酷く綺麗で…物悲しい旋律だった。 「(これ…工藤君が弾いているの…?)」 辿りついた音楽室でピアノを奏でるコナンの姿… 廊下の窓から僅かに見えたその姿に、哀は瞠目するのを押さえきれなかった。 自ら「歌は苦手」だと言っていた彼が、ピアノを弾けるとは思ってもいなかった。 まして、何度か指を引っ掛けるような部分もあるが、ここまでの腕を持っているとは… 「(工藤邸にあったグランドピアノ。てっきり母親の物かと思っていたけど…)」 この姿になる前に1度だけ訪れた事のある工藤邸。 その時、当然の事ながら全部の部屋を見回って…見つけたピアノだけの部屋。 多くは使われていなかったであろうそのピアノは、それでもきちんとされていて… …今思えば。 アレは工藤 新一が毎日あの部屋に入っていたという事… ──と、ここで終盤に差し掛かっていた旋律がピタリと止まった。 『………だ?』 『お……外に……てる…?』 『…ま…、開いて……だ…』 僅かに聞こえ漏れる言葉。 ピアノの音色よりも小さな会話に、 「(ここまでかしら…?)」 と、見切りをつけた哀。 大方、神出鬼没な人が彼に話しかけて…ここに来た理由でも話しているのだろう。 …そのくらいの予測は付く。 だったら尚の事…これ以上は野暮というものだ。 「(まあ、せいぜい仲良くする事ね…お2人さん?)」 心の中でそっとエール(?)を送り、気配を消したまま静かにその場を立ち去った…。 ……その数分後。 何の前触れもなく響き渡った大音量のピアノ音に目が覚めた子供達は、そのままクラス全体で大騒ぎになり……泣き出す子をなんとか落ちつかせ、好奇心旺盛な探偵団を説得し、慌てて音楽室を調べに行った担任だったが… 音楽室に人の影は無く… ただひっそりと月光を浴びたカーテンが風に揺らめいていただけだったらしい…。 (桜月様より補足説明) 表現力不足が否めない上、すっかり忘れていた説明を…; カーテンが揺れてたのはキッドがコナンを連れて屋上に逃げたからデス。 だから閉まってたはずの窓が開いててカーテンが揺れてた訳です。 …書かなきゃ解らねぇよ(爆) 【MIDIは『ノクターン』様よりお借りしております。】 素敵です心の中でエール(?)を送ってる哀ちゃん(笑) そう…馬に蹴られる前に退散するに限りますよね☆(爆) それにしても、哀ちゃんすら知らなかったのね…新ちゃんがピアノ弾けたって事。 それを知ってたKID様…愛だわ愛vv(馬鹿) そして…実はこの続きが隠しリンクでこのページ内に存在します♪ かな〜り萌なので是非探してみてくださいね〜vv top