Midnight shopping




「…で、何処に行く気なんだ?」

 …キッドに分けた時間は1時間。

「とりあえず、名探偵の上着を買いに行きましょうか」
「は?」
「このままでは寒いでしょう。近くに深夜営業のお店がありますから…」

 コナンからの問いに始めからそのつもりだったキッドはあっさりと答える。
 たとえ時間を分けて貰えなくても、このままコナンを帰す気はなかったキッド。
 彼の心の中はただ1つ…

 ──このままじゃ、オレの可愛いコナンちゃんが風邪引いちゃうじゃんっ!!(力説)


 ……お前のものではない。(爆)


「買いに行くって…お前、格好はどうするんだよ」
「え? ああ、そうですねぇ…さすがにこの格好は問題ありますし…」
「当たり前だろι」
「では──」

 途端にキッドの身体を白いマントが覆う。
 コナンの視界から完全にその姿が隠れ…

 …次に現れたのは、随分と若い青年。

「これで如何でしょうか、名探偵?」
「……………」
「? どうかしましたか?」

 自分を見上げたまま絶句している様子のコナンに声をかける。
 すると、その声で我に返ったのか、

「…お前、それ…嫌味か…?」

と、コナンはキッドの顔を指差して言った。

「いえ…、私はそんなに悪趣味ではありませんよ?」
「じゃあ一体…っ」

「──素顔」

「え…?」
「これが素顔だ、と言ったら…どうしますか?」

 コナンの指摘にすぐ顔の事だと理解したキッド。
 はぐらかす様に…それでもあっさりと本当の事を口にする。

 蒼い瞳が真意を見極めようと輝く…

「……物好きだな」
「貴方にだけですよ」
「それが物好きなんだよ」

 にっこりと答えるキッドにコナンは何度目かの溜息を付いた後、屋上にある唯一の出入り口へと足を向ける。
 そして…

「…信じて欲しいなら信じてやるよ」

 そう言い残して、扉の向こうへと姿を消した…。

 捨て台詞とも言えるそれに、『キッド』としての仮面を忘れて絶句する。

「……マジ?」

 ──これってもしかしなくても脈ありだったりする?!


 ……飛躍し過ぎだ。





 ──場所は変わって深夜営業のディスカウントショップ。


「名探偵、どれか希望はありますか?」
「別に…」
「では、私が決めてもよろしいでしょうか」

 既に冬物のコートまで並べられている店内。
 その一角で会話を交わす、一見すれば仲の良い兄弟。(お互い不本意)

 店内に入った時から時間的にも少ないとは言え、時々すれ違う客から囁かれる「そっくり」「可愛い」「格好良い」「仲の良い兄弟」の4つの言葉。
 それらが聞こえる度に、

「「((だぁれが兄弟だってぇぇ?!))」」

と、共に思う(このあたりで既に)仲良し兄弟なコナンとキッド(笑)。
 しかし、その先にある反論の内容が異なり…

「(なんでコイツと兄弟なんて言われなきゃなんねぇんだっ!)」

「(兄弟じゃなくて恋人でしょっ!!)」

 言わずともがな、上がコナンで下がキッド。


 ……ちなみに、当然ながらそんな関係じゃない。


 とにかく。
 そんな内情を持ちつつも、コナンの為に上着を探すキッド。

「…なあ、キ……お前さ」

 思わず呼びかけた名前を止め、キッドに声をかけるコナン。
 その声にキッドが振り向くと、

「とりあえず、その『名探偵』ってやめろ」
「いけませんか?」
「…少なくとも、ここでは違和感があるだろι」
「そうですね…では、お名前で呼んでも?」
「ああ」

 他には呼び方が無いのだから、それ以外に無いだろう。

 そう続けたコナンに表面上、キッドはごく普通に頷きを返す。
 しかし内心は…

「(やった! これでコナンちゃんの事を堂々と名前で呼べるっ♪)」


 ……今までは心の中でひっそりと、だったらしい(爆)。


「それでは、私の事は快斗とお呼び下さい」
「…かい、と?」
「先ほども、私の名を呼ぶのを止めて下さっていたので…」

 ここぞとばかりに本名を口にする。
 そして意地でも呼んで貰おうと(笑)、さっきのコナンの行動を指摘する。

「……騒がれるのは、お互い本意じゃねぇだろ」
「ええ。ですから、そうお呼び下さい」
「わぁった」
「ありがとうございますv」

 コナンからの了承に、思わず語尾が上がる(爆)。

「…さて。それではコナン? これなどはどうでしょうか」

 極力ポーカーフェイスを勤め、キッドはコナンに見繕った上着を渡す。
 合わせてみたサイズは丁度良い。色合いも、今コナンが来ている服と合っている。
 …だが…

「……なんで、ダッフルコートなんだ…?」
「防寒には最適ですよ?」
「………しかも白…ι」
「良くお似合いですよ♪」

 キッドとお揃いかとも思えるほどの真っ白なダッフルコート。
 生地的には冬用のように厚くは無く…どちらかといえば、秋用に近い上着。

「色的にも丁度良いではありませんか」
「………」
「では、コレを着て、星空のデートと参りましょうかv」

「はぁ?!!」

「コナンが私に下さった時間は、まだ40分はありますよ♪」

 思わず大声を上げたコナンの反応を尻目に、キッドは機嫌良さげにレジへと向かう。
 その手には、いつのまにかコナンから受け取った件のコート…

「ちょっと待て! だからってなんで……おい、キッ……快斗っ!!」


 ──この日、黒のタートルネックを着ていた事に、理不尽な怒りを覚えたコナンだった。






お買い物〜vvしかもさり気(?)に的確に入ってる雪花姉の突込みが…最高です!(笑)
やっぱりコナンさんには白のダッフルコートよねvv
無謀(…)なリクだったのにこんなに素敵ブツを有難うvv

Midnight clandestine meeting

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