【09.優しい嘘(side C)】



「ふぅ…」


 屋上の扉を閉め、今までの緊張から解き放たれて安堵の溜め息を吐いた。


(計画通りだ…)


 きっと自分は完璧に演技できた筈。
 あの怪盗には余程注意していなければ何もかも見抜かれてしまうから。


(早く見つかると良いな…)


 あの情報からいけば彼が盗み出さなければいけないのは最悪でもあと6個。
 運が良ければそれ以下の数で見つかる筈だ。


 彼の探し物に気付いたのは言った何時だったか。
 覚えているのは月に宝石を翳した時の彼の瞳を過った一瞬の闇。

 引きずられる、そう思った。

 早くしなければ彼は確実にあの闇に連れて行かれる、と。


 その後の自分の行動力には我ながら感心した。
 どんな些細な手がかりをも掴もうと法すらも犯した。

 けれど、彼の為ならばそれすらどうでも良かった。
 彼の為ならば…。


(ったく、洒落になんねーよな)

 探偵が怪盗に心奪われるなんて。


 コナンは白い魔術師の姿を思い浮かべ自嘲気味に苦笑した。

 あの月の様な白い輝きに囚われてしまったから。
 何を犠牲にしても守りたいと思ってしまったから。

 だからこそ情報を集める為のリスクも怖くは無かった。
 むしろ、彼の役に立てる事が何より嬉しかった。

 そして集めた全ての情報を纏め終わったのが昨日。


 …けれどそこで気づいてしまった。
 自分には彼にこの情報を渡す理由がない事に。

 彼だってこれだけの情報を集めるのに付いて回るリスクは解っている筈。
 彼が知っている自分はそこまでする理由を持たない。

 自分達の関係はあくまでgive-and-take。


(ある意味サイテーなんだろうな…)


 彼に情報を渡す為。
 彼に本当の理由を悟らせない為。
 自分の幼馴染を利用した。
 彼女が自分に寄せている感情と、それを知っている彼の心を利用した。

 そして…彼が自分に寄せている想いすら利用した…。

 彼の想いなどとうに解っていた。
 何度自分の想いを伝えてしまおうかと思った事か。


(でもまだ悟らせる訳にはいかねえんだよ…)


 彼に思いを伝える事はすなわち自分の戦いに彼を巻き込むという事。
 それだけは避けたかった。

 彼は自分よりも早く、偽りの姿からの解放を約束されているのだから。

 だからこそのこの計画。
 あくまでも彼との関係は今のまま保たれなければならないから。

 それ故の嘘。

 それに彼が騙されてくれた事に改めて安堵する。
 取り敢えずは巻き込む事は避けられたから。


「さて、奴が見つけるまでに方つけないとな…」


 寄り掛かっていたドアから離れると、コナンはゆっくりと階段を降った。
 自らの戦場へと赴く為に…。













END.


コナンさん視点。
そして一人戦いに向かうコナンさん。
戻ってきたらきっと心おきなくラブラブになるでしょうVv←所詮甘々好き(笑)
え?続きは書くかって?いや、あくまで想像してください(爆)


side K


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