瀧口正義先生談(その2) 平成2年〜3年は項目別にまとめて話をされたことも多いご様子なので、同じ項目のものは整理しながらまとめてみました。 |
素振りについて 左手の握り(小指、薬指、中指で握り、親指と人差し指を伸ばしも柄革より出さず、のりでつけたようにピッタリと握り、手の内を変えないで)に注意し、肘を伸ばし、剣先で俵を引っ張り上げるように、大きな円を描きながら頭上に大きく振りかぶり、45°の傾きまで肩を使って。右手はまっすぐ上げて鍔元を。ふりおろし、右手は左手のところへ自然に、そして下まで素振りをする。 正面打ちも同様にして、つま先を上げて、臍(腰)より前進し正面を。左足の引き付けで打つ。後退の時、同様にして、右足の引き付けと同時に打つ。小手、胴も同じ要領で。 構えについて 左足のひかがみを伸し、上からスーッと乗るように構える。自然に腰が入る。左踵も自然に上がるはず。自己の体固めをしっかりとする。下からもぐったり横からの技が出せなくなるはず。 切り返し(の最後)の大切さ 全力を出し尽してしまう。後のことは考えない。→心気力の一致(気剣体の一致より深い。) 心気、ここが大切。これを練る稽古を。力は技。 間合について 一足一刀の間 そこから一歩踏み込んで打突できる間合。 足を盗んだり、こそこそ動かしたりしない。 さらに深く入って打突すると、左肘を曲げて打突せざるを得なくなる。 遠いと思ったら、一足一刀の間までつめて打突を。 また、一足一刀の間よりもやや遠いと思ったら腹(臍)を前に出すつもりで。 剣を押さえられるのは間に入っているから。 その場で突っかかるのは近くまで入っている証拠。その手前で打つか、もう少し中まで攻めて打つ。 遠い間より打たないと大きい者は腕が邪魔になってしまう。 触刃の間より相手の攻めに乗って打突へ 入りの勢いがなければ駄目。交刃り間まで入って、相手を見ているから打突に勢いが出ない。自分から攻めるならば、しっかり乗って(触刃から交刃で)打突へ。 触刃の間で先にかかっている。交刃になった瞬間には打ち出せる状態になっている。 実際に触刃から打つことはできないが、そういう気構え、身構え、心構えでのぞむ。錬る。鍛えることが必要。 剣先の触れたところからの打突。無理だと思わず、そこから打てるように鍛える。そこに色々なことを学べる。 今は打てなくても、十年後、将来のことを考えて稽古をする。 そこから打てれば一足一刀の間からは楽に打てるようになる。 苦しいが頑張って。 間がつまったら、いったん間を切り、触れたところで出端を打つ。 打突のところから逆算していく。 身長が高く、腕が長いと、届いてしまうために横着で楽な稽古をしてしまう。若いうちから思い切った、触れるか触れないかのところから出る稽古ちわ心がけて鍛えなければ駄目である。大きいものは体のさばきが良くないのでその工夫も。 左足を継がずに。構えたところから思い切って出る。 正面打ちについて 触刃さらには、その少し手前より、間(=時間)と間合(=距離)を考えてつめ、小さくふりかぶって打つ時、大きくふりかぶってうつ時と、その場に合った打突を。 振りかぶりは、間合によって、大きくなったり小さくなったりする。しかし基本は相手の見えるところまで。要は、左拳がまっすぐ前に出ることが大切。 大波小波で、同じ面でも色々な打ち方がある。 左手、左足、左腰で剣道は行う。 打突時、左肘をしっかり伸ばす。 左肘を伸ばし、思いっきり踏み込んでの面打ちを。 振りかぶり振りおろしを早く。 触らなくても前に出る勢いを。 「メェー・ん」と下丹田におさめる。おさまりやすいから面を打て。 小手の打ち方について 上からまっすぐに。手元が上がれば下からも打つ。しかし、もぐったり、横から打たない。 右足、つま先上げすべるような足さばき。上に上げない。それだけ遅くなる。 先 相手の動きを見すぎてはまずい。 蹲踞より立ち上がった時には”先”になっている。そして少しでも動いたら行く。合気になって”八相発破(=機先を制する)”ことが大切。 試合のように気を外したり、動きを見すぎることはよくない。また、一本攻め込んで相手の動じるところを行く。 「先」、 決して相手より先に打突することではなく、気持ちが相手に行っていなければならない。 相手が少しでも動いたら打てる状態でなければならない。 相手が無理にくれば構えを崩さないか、応じっぱなしにならず返し技等を用いる。 剣先にもっと気を出す。炎が出る位に。 触刃の間より一瞬攻め押さえ、そこから一気に打突する。切り落としができる。早過ぎたり、攻めがないと返されたりわたられたりする。 「和して戦う、強引に入って戦う、はずしておいて戦う」色々工夫。すべてができるように。 ワンパターン、同じ調子では駄目。 稽古全般に関すること(心に関することも含む) 蹲踞からの立合。初一本を大切にする。できれば稽古で全力を出しつくし、さらにもう一度と。 相手の状態を見ながらスーッと攻め打てるところまで入って、相手の崩れたところを打つ…@ 相手が出てくるところを乗って(押さえて)出頭を打つ…A 相手が出て間に合わないときには、受けたら必ず返す…B 相手に従って勝つことが理想(無敵) 打つべき技を使う。(面を打つ時に小手、小手を打つ時に面では駄目)それには、間(=時間)と間合(=距離)が大切。それに応じて、打ちも大きくなったり、小さくなったり、打ち方の研究も必要。 普段の稽古でいいところを打たれていると、審査や試合で動けば打たれるのではという不安に襲われ固くなってしまう。普段の心掛けが大切。@、A、Bで自信を持ち、どこからでも来い、打てるものなら打ってみろと。堂々とした稽古になる。 休んだ楽な稽古、居ついた稽古をしていては駄目。 自分の打ちたいときだけ打ち、後は休むといった稽古では上達しない。楽な稽古である。心気力一致した稽古を。 気、気合を養うのは、心身を打失しての鍛錬が大切。自分の心身を捨てきれない横着な自分をかわいがった稽古では気は養えない。この点をよく工夫すること。若い時を大事に有意義に過ごす。 気が相手にもっと向いてよい。その為には突から打突を出すとよい。止まったところから打突が出るのではなく、相手を攻め、その勢いの延長に打突がなければならない。 形は無心で坦々と何も考えずに、動く禅として。坦々と言っても、但し、気の抜けたものではない。 稽古も同じように。打ってやろうとか、打たれてこん畜生と思っては駄目。そのときには、これでは駄目だと気持ちを整理してもう一本と。 自分の癖をとることの難しさ。形によって正しくしていく。竹刀稽古だけではなかなか難しい。 無心 ボーッと立っていて相手に打たれていては無心ではない。 何もないのではなく、有るが意識をしていないのが無心。 写そうと思って写す心は無心ではなく、写そうと思わなくても写す心が無心である。 腕が上がる=稽古が変わる≠当たるようになる むしろ、いい機会にまっすぐ正しく出るようになる。(上の者からはやりやすい。上の者を打てなくなる) 正しく構え、気を充実(集中)=無心 少しでも動いたら思い切っていく。 2,3本で息のあがるような稽古を。 相手の気をはぐらかすのでなく、グゥーッという気の充実からそのまま爆発するように一気に行く。 相手に触られる前に打つ稽古を心がけること。 綺麗に打たれて、綺麗に打つ。 胴に返されるときの面が一番見事な面。 試合という気持ちで捨てる。 立ち合った時のハリ。動いたら打つ位の充実。それで出頭の機会をつかむ。何本も体でためす。それでないといつまでもつかめない。 悪い技(かつぎ技、払い技)を使わずに素直に出る。 剣道の技としてはあるが、くせになり、知らない間に出してしまうようになる。 今は面打ちを、足、間合など、1つずつ完成させていく。 出頭が打てるようになったら、出頭は打たずにそこを押え攻め返して打ったり、無理に来るところを返して打つようになる。 器用に打てるようになったり、良くなったと思ったら、いったん崩して、またつくり直していく。そのくり返しで大きくなっていく。 体を十分に使った稽古で固さをとっていく。できた形をいったん崩し、固さをとってまた形づくっていく。 正しく素直に続けていけば必ず報われる。利口すぎる剣道(こずい剣道)では駄目。 心で心を打つ剣道 当たりが強いから勝ったではなく、打とうとするところを軽く押えられたら、やられたまいりましたと思わなければ。心の修業が大切。 攻め合いの中では軽く打たれても負けたと思わなくてはいけない。 あうんの呼吸 阿と吸った、そして云とためた息で捨てる。 そしてまた行きかえる。 掛かり稽古は、一息で、@気迫A技、正しい打ちB間合を養う。 上の先生に掛かる稽古(→掛かり稽古) しかし、初一本は互角に。 先の心、いつでも出られる充実した状態。触れるか触れないかのところより触刃のところでは心気力一致で捨てて出る。相手が来ればその出端を出る。そこに心気力一致の打ち、そして人間形成ができてくる。 打突の後について 打突の後がすぐに残心に。隙があればすかさず打突を。 打った後、剣先を引き上げず前に出していく。 「いかに右手の力を抜くかが一生の修業」 相打ちの次の二の太刀は良いが、打たれた後の”後打ち”はしないこと。 打突は思い切って打ちきったものを。整った形を一端崩してもよいから、跳躍力をつける必要がある。 打突後、体が起きるように腰を入れる。そのためにも左肘をしっかり伸ばす。 法定の形 法定の形が竹刀稽古に生きるように。本来はその為の形ではないが、、。 気は激しさから、最終的には澄む気に。 法定の形が足りない。一人で自分のペースでできる。 右足は、法定の形の如く。体が前へ出る。腰より力まず楽に出る。 年齢に関すること 30代以降、体力の衰え。心を用いて体力の衰えを補う。(=精神面での向上) 死ぬまで強くなる。今が一番強い剣道を。(年をとって益々強くなっていく) 65〜70歳位を完成の目標にしていく。 50歳までは基本。 技を色々修業するのではなく、技を用いて心の修業をすることが大切。技は30歳で十分。その後は心の修業。 若いうちは、攻めて攻めて機会をつくり機会をつくり(崩して)打っていく稽古が大切。 |