「うーん、まずはその格好をなんとかしなきゃね?」



















謁見の間を出たあと、オリヴィエは聖殿を出て自分の館へとを連れ帰った。



夢の守護聖の館で、オリヴィエは小さなの姿をまじまじと見つめる。



今のはだぼだぼのシャツを一枚着ているという格好。



もとのの物だろうそのシャツは、小さなが着ると裾が足首まで届き、



長すぎる袖は何重にも捲り上げられていた。



とはいってもオリヴィエが女児用の子供服を所有しているはずもなく、



側仕えの者に大至急用意してもらうよう手配した。



そしてなにやら楽しそうな笑みを浮かべ…を私室へと連れ込み、鏡台の前に座らせる。

















「わ…お化粧いっぱいね?ぜんぶ ヴィーさまの」



「そうだよん。綺麗でしょ?でも、あんたにはまだちょっと早いかな」



















カラフルなコスメグッツに目を輝かせるにそう言うと、オリヴィエはブラシを手にの髪を梳かす。



肩に届く長さの髪は子ども特有の、痛みのない手触り。



その感触を楽しみながら、オリヴィエは鏡越しにへ問い掛けた。

















「髪、結んであげるよ。どんな風にしてほしい?」



「うんとねぇ…ここに ふたつ くるくる して?」

















は小さな手でこぶしを握り、頭の右と左に乗せた。

















「ん?おダンゴにしてほしいのかな?」



「そうなの。かわいくしてね?」



「きゃははッ。おっけ〜。まかしといて!」

















ご機嫌で、鏡に映る自分の姿を見つめる



そういえば大きい彼女も、いつも髪を一つにまとめていたっけと思いながら、オリヴィエはの髪を結んでいく。

















「リボンはどの色がいいかな?ピンクとか…水色もかわいいねぇ」



ね、あか すきなの」

















好みを聞きながら、オリヴィエは次々に小さなを飾り立てる。



髪をまとめた後は、手と足のその小さな爪に、淡いパールピンクのマニキュアを塗りつけて。



それが渇いたころ、ちょうど頼んだ洋服が届けられた。



いくつか持ち込まれた物の中から白いノースリーブのタイトなワンピースと、



足元はせっかくのペディキュアが隠れてしまわないようにとサンダル



――動きやすいようにバックストラップつきのもの――を選んでやる。

















「ほーら。ご注文どおり、可愛くなったよ。おチビちゃん?」



「うん!ありがとう ヴィーさま」

















姿見の前でくるりと回って全身を眺めたは嬉しそうに礼を言い、オリヴィエの足に抱きついた。



いつの世も子どもは無邪気なものだけれど、これがあのなのかと疑ってしまうほど



小さなは素直で人懐こい。



それを不思議な感覚で眺めていたオリヴィエは、いつの間にかずいぶん時間がたってしまっていたことに気付く。



少々名残惜しい気もするのだが…オリヴィエはこの後に執務が控えているのでそろそろ戻らなければならない。

















「じゃ、聖殿に戻ろっか?次はリュミエールのところに行くんだよ?」



「あい。 るみえーるさま のとこ行く!」

















をリュミエールに引き渡し、執務室で書類整理に追われているオリヴィエ。



だがふと手を止めて、そして微かに声をあげて笑い出す。



聖殿へ戻る道すがら、オリヴィエに手を引かれて歩く小さなが言ったのだ。















「ね、ヴィーさま。こんどは おっきいも かわいくしてね?」

















がもとの姿に戻ったとき、彼女は自分が言ったこの言葉を覚えているだろうか。



だが、これでに悪戯――オリヴィエの「メイクさせて」攻撃を、守護聖たちはそう呼んでいる――



できる大義名分を得たことに変りはない。



さて、「おっきい」にはどんなメイクをして、なにを着せようか?



そんなことを考えながら、オリヴィエは再び書類に視線を落とした。











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