バスケ部の練習は紅白試合へと移っていた。

 もちろん三井中心だが

 は部員一人一人の動きに目を配る。

 やはり目立つのは流川だろうか。

 もともと練習には真剣に取り組む流川だが、今日は一段と気合いが入っている。

 明日の練習試合に思い人が来るというのだから、

 彼の気合にも頷けるが…。





 
 『しかし…さんは流川のことを果たして知っているのかね?』






 ふと、の中に浮かんだ疑問。

 流川ほどではないものの、も少々他人に無関心なところがある。

 流川のことも…

 顔ぐらいは知っているだろうが、

 『バスケ部の一年生』ぐらいの認識だと思われ…。  






 真剣に練習に望んでいる流川が


 なんだかかわいそうになってきた…。
  






 『…ふむ…あたしも協力してやるか』



 
  
 
 頑張る幼なじみの姿に心を打たれた

 感受性豊かなさん。

 
 


 『お付き合いの基本は、お友達からよね〜』





 と、に流川の存在を知らせるところから始めることにした。
 







 「さーん?」

 「んー?」






 本に視線を落としたまま生返事をする

 はそんなの手を引き、手すりの前まで引っ張ってきた。






 「ね、アイツ。どう思う?」
 
 「どいつ?」

 「あれあれ。あっ!ほら、いまダンク決めたヤツ!」





 並み居るディフェンス陣をものともせず、

 流川が派手な音とともにダンクを決めた。

 途端、異常なまでの歓声・奇声が体育館に響いく。

 流川親衛隊である。



 



 「…うるさい…」

 「親衛隊の話じゃない!アイツ、1年の流川楓って言うの。
 
                      なかなかイケてると思わない?」




 「…浮気モン…」










 流川の株を上げてやろうと発したの言葉に、

 は冷たい視線を投げかける。




 


 「違うって!アイツね、昔の知り合いなの」

 「…で?」

 「でっ…って…そんだけー?」






  
 一応…流川のスーパープレーを目の当たりにしたはずなのに…

 はあまり関心がないようだ。


 
 



 『数少ないあいつの取り得が…』







 流川の親衛隊に聞かれでもさたら恐ろしいことを

 は思っていた。   
 




 しかし、ここで引いては『協力』にならない。  







 「な、なんかもっとさ、感想とかないの??」






 必死に食い下がる






 『感想ねー…』






 仕方なく、はしばし流川を観察した。

 



 はバスケに詳しいわけではない。

 いや、まったくの素人だ。 

 だが…流川の動きに他の部員が翻弄されているのは

 なんとなくわかる。 







 「やるじゃん。あの中では一番うまいんじゃない?よく知らないけど」






 の答えに、はさらにもう一押し。







 「でしょ?顔もけっこういいほうだし」






 流川氏第二の武器である『顔』を強調。

 から見ても、流川の顔はちょっとした強みだと思う。

 が…
 



 




 「顔までは見えない」






 の視力が弱いことを忘れていた…。

 






 バスケ と 顔

 


 その二つで玉砕した

 他にも流川のセールスポイントを探そうとしたが…

 何も思いつかない。

 性格がいいとか悪いとかは、人によって感じ方が違うものだろうから。



  



 ここは一つ、正攻法でいってみようか…  


 



 「あいつ、あたしに協力してくれるんだって。三井先輩のこと」


 「ふーん。よかったじゃない」






 大して興味はなさそうだが、それでも

 と並んでバスケ部の紅白試合を眺めていた。






 「でも条件があるんだよね〜」

 「なに?」

 「明日の練習試合、あんたを連れて応援に行くこと」

 「何で私が…」






 さすがに怪訝そうな表情を見せる

 その顔には 「私を巻き込むな」 と書かれている。

 はその拒絶をあっさり無視。

 紅白試合を見ていた視線をに移す。 





 その視線を感じて、を見た。






 「だってあいつ、あんたにホレてるし」





  

 爆弾発言とも取れるの言葉。

 の顔を見ていたの目が一瞬細められ…。

 だが、次の瞬間には

 の視線はから外れ、再び紅白試合に向けられる。 
 
                                       



 「ふーん」


 「…はっ…相変わらず素っ気ないね〜」

 「あの子がどう思おうと気持ちは自由じゃない?私には関係ない」





 そういうとは、椅子へと戻った。

 も手すりに寄りかかるようにして向きを変える。





 「ま、あたしがあんたと流川をどうこうしようって訳じゃないよ。それは流川の頑張り次第だし?」


 「当然。あんたにどうこうされたらたまんないよ」


 「でも、明日はつき合ってくれるでしょ?

           あたしの幸せがかかってるんだから」

 「はいはい」






 もうこの話はおしまいと言わんばかりに、

 は再び本を開いてしまった。

 もまた向き直り、紅白試合を眺める。


 




 にはどうこうするつもりはない…と言っただが、

 内心はどうこうする気満々だ。

 人を見る目には自信がある

 そのが、


 流川とはつき合うべきだ!!!


 と勝手に決めてしまった。

 
 無理強いをするつもりはさらさらないが、

 もしつき合えば二人は結構うまくいくという

 不思議な確信があるのだ。




 そして、もしも…自分も三井とつき合えるようなことになった時…



 考えが飛躍しすぎている気もするが、




 グループ交際も楽しいかもっ??




 と、は一人で悦に入っている。


 




 紅白試合も終わり、それと同時にバスケ部の練習も終わる。

 部員がミーティングを始めたのを合図に

 は家路に着く。 

 

 
 「んじゃ、明日ね」

 「はいはい」




 二人は明日の予定を話ながら帰路についたのだった。
 






 後書き

   流行の映画とかドラマとか、みんなが騒ぐ流行もの・・・
   一真はそういうのが嫌いです。
   天邪鬼なのでw
   だから多分、流川みたいな人がいれば興味ない振りするのかも?
   さんには一真の性格が反映されてしまったかな〜。

   次回は流川君がちょっとだけがんばります。
   『協力』流川バージョンです。
  

次のお話