男・三井寿

長いとはいえないこれまでの人生だが…かつてこれほどまでに緊張したことがあっただろうか…

誘われるままに遊びに来たの家

彼女の部屋でまったり過ごす…なんてのもいいよなーと、軽いノリで来たのはいいが、

普通はさ…部屋で、二人きりで過ごすもんだろ??

なのにオレがいるのはん家のリビングで

目の前にはと…その親父さんが…

なんで??

そんなのはオレが聞きてぇよ!





しかもの親父さんは、あの薫。

ちょっとばかし映画好きなら誰でもその名前と顔は目にしたことがあるだろう、新進気鋭の翻訳家。

すっげー整った顔で…その辺の芸能人なんかよりよっぽどカッコイイと、女性ファンが多い。

紹介されたときは、さすがのオレ様も驚いた…





























「でね?寿ってばその試合で、一人で50点も取ったんだから!」

「へー。それはすげぇな」

「でしょ??もう、かなりカッコよかったわけよ!!」

「ははっ。そりゃよかったな」

「うん!!!グレてたなんて思えないぐらい!」

「…それはあんまり関係ないんじゃないか?」

「あ、そう?」

「うん」





















さんよぉ…

さっきから、褒めてくれるのは嬉しいけど?

それを親の前で言うのはどうかと思うぜ?特にグレてたとか…

しかもさっきから、親父さんにオレのこと話してばっかで、

リビングのソファに落ち着いてから、オレとは一度も話してないんですけど???



















「あ、寿のお茶もうないんだ?新しいのもって来るね」

「お、おぉ…」

「パパさんも飲む?」

「ああ」















あのやろ…ついにオレと親父さんを二人きりにしやがった…

別にやましいことはないつもりだけどよ…やっぱ気まずいベ?

オレの場合…人にはあまり言いたくない”カコ”とかもあるわけで…

やべぇなーと思いつつ、親父さんの様子を盗み見してしまうあたり

オレって小心者かもしんねぇ…











親父さんは、がリビングを出て行くとちょっとため息をついて、

テーブルに置いてあった煙草に火をつけた。

一息煙を吐き出したところで、様子を伺っていたオレと目が合う…















「…まったく、あいつのおしゃべりには参るだろ?」

「え?いや…」

















一般的に娘を持つ男親ってのは、その彼氏を敵視するもんだと思ってた。

けどの親父さんは友好的。

オレにも気さくに話しかけてくる。















「いきなり父親と二人きりにされる彼氏の気持ちなんて、

アイツにはわからないだろうな」

「ははは…」


















確かに…

















「三井くんは3年だって?もう進路は決めてるのか?」

「あーいや…バスケ推薦でどっか体育大学狙えたらなーと。あんまアタマの方は自信ないんで…」

「なるほど。んじゃアイツもそこ行くとかいう可能性があるわけか…」

…さんは成績いいじゃないですか。もっとイイとこ狙えますよ」

「うーむ…高校も三井くんを追いかけて湘北選んだぐらいだ。大学もそうしかねない」

「え?そうなんすか?」

「そう。変なところで一途なんだ」

















…それは…知らなかったな…

けっこう…可愛いとこあんじゃん?アイツも

















「おまたせー!ケーキもあったから持ってきちゃった。

2個しかなかったけど…どうせパパさん食べないよね?」

「ああ。それはお前と偕の今日のおやつだって、葉月が置いていった。

でもま、食べちゃっていいんじゃないか?言わなきゃバレない」

「ママさんが買ってきてくれたんだ?んー…いいや。偕には悪いけど、寿と食べちゃお」

「どうでもいいけど、そろそろ部屋行けば?」

「あーじゃあそうしよっかな」

「うん。ぜひそうしてくれ。オレは静かにくつろぎたい」

「なによ!あたしがうるさいって言いたいわけ?」

「お前以外誰が騒ぐ?」

「んもー!パパさんのバカ!」

「はいはい」

「ったく!まあいいや。寿、二階いこ」

「お、おぉ」

「あー、三井くん、ごゆっくり」

「あ、はい。どーも…」





















「ごゆっくり」って…送り出されちまった…。

娘を男と二人きりになんて…しねえよな?普通…

…あの親にしてこの娘あり…だな。











とりあえずリビングをあとにして、ようやくオレはの部屋へと招かれた。












後書き

三井を家に呼んだ意味なし…お父さん出まくりだしさ…
つ、つぎこそは!!!!


次のお話