最近…湘北高校男子バスケット部では、ちょっとした事件がおきている。
まあ事件といっても、ちょっと前に某ロン毛の歯欠け男が起こしたような、
部活の存続に関わるほどの一大事ではない。
ある人物の様子がおかしいと…部員全員が気にかけているだけだ。
その人物とは元ロン毛…もとい、三井寿の彼女。
彼が部活に復帰してからは、ほぼ毎日のように練習を見学に来てるさん。
いつも明るくて元気な彼女が…最近妙に大人しい…
今もギャラリーから練習を眺めているものの…その表情は暗く、時折大きなため息をついている。
「なあミッチー…さん…最近どうしてしまったんだ?」
フロアではバスケ部員が準備体操をしている。
身体を解しながらもの様子が気になる桜木花道が、こっそり三井に問いかけた。
「や…オレもおかしいとは思ってんだけどよぉ…理由聞いても言わねーんだよなぁ」
「ぬ…それはミッチー…信用されてないぞ?」
「うっせー!」
痛いところを突かれた三井。
逆ギレである。
それでもの様子は気になるのか、三井の視線は自然にギャラリーへと向けられる。
うつろな表情のは三井の視線に気づくことなく、本日何度目かのため息をついていた。
するとそこへ、今度は宮城が話し掛けてくる。
「ちゃん、授業中もあんな感じらしいっすよ?彩ちゃんもちゃんもワケは知らないって」
「ミッチーはともかく、さんにも原因を言っていないとなると…よほど深刻な悩みがあるとか…」
「そうだよなー。三井サンはともかく、彩ちゃんにもちゃんにも話してないんじゃな…」
「…おめーらなぁ…」
「三井はともかく…」
何度も強調されれば、自分がバカにされていることぐらい三井にもわかる。
だがやっぱり怒る気にはなれなくて。
再びへ…今度は花道と宮城も一緒に視線を送る。
は眉を寄せて苦しげにハンカチで口元を覆っていたが…
次の瞬間にはとうとう手摺に顔を伏せてしまった。
「さん…具合が悪いんじゃないのか?なんだか気持ち悪そうだぞ?」
「あ〜かもしんねぇな。今日は先に帰すか…」
「そうした方がいいぞ、ミッチー」
部活を抜けて送っていきたいのは山々だが、そういうわけにもいかない。
いつも一緒にいいるはずのも、今日はまだ来ていないようだ。
一人で帰すのも心配だが、倒れられても困る。
やっぱり早く帰って休むように伝えようと、三井が立ち上がろうとしたとき、
宮城がそれを止めた。
「三井サン…あんたまさか…」
「あ?」
「ちゃんのこと…孕ましたんじゃないでしょうね…」
「はあっ??」
気分が悪そうなの姿を見て、宮城はとんでもないことを想像したらしい。
突拍子もないことを言われて焦る三井に、
宮城だけではなく花道までもが疑惑の視線を向ける。
「なっ…ミッチーそれは本当か?!」
「んなわけあるかっ!!宮城!てめーもいい加減なこと言ってんじゃねぇ!!」
「だってさ…ちゃんのあの様子って…それっぽくないっすか?」
「そ、そうなのか?!ミッチー…責任重大だぞ!!」
「オレは無実だ!!」
三井の主張…宮城と花道は聞いちゃいない。
「そりゃ誰にも言えねえわけだよなぁ…高校生で妊娠なんて…」
「うんうん」
「お前ら人の話を聞け!オレは無実だっつってんだろーが!」
「三井サン…言い逃れなんて男らしくないっすよ?」
「そうだぞミッチー。男なら責任をとれ!」
「だから違うっつってんだろ!第一まだヤってねぇ!!」
これこれ三井サン、「まだ」とか言わないの。
そりゃ…ホントのことですけどね…
「あれ、そうなんすか?意外に奥手っすね。てっきりもうとっくに…」
「ほっとけ!!!」
なんとか誤解は解けたものの…そうなると本当に原因がわからなくなる。
やはり早めに帰らせたほうがよさそうだ。
三井は隙を見て、がいるほうへ抜け出す。
「おい」
「…寿…どうしたの?」
「そりゃコッチの台詞だ。体調わりいなら今日は先帰れ」
「え…大丈夫だよ?」
「どう見たって大丈夫じゃねーだろ。何なら…探して来てやろうか?
一緒に帰ってくれるように頼んでやるよ」
「いいよ。ホントに具合悪いんじゃないから…。ちゃんと待ってる」
「でもよぉ…」
「大丈夫だってば!あ、ほら。練習始まるよ?今日も頑張ってね!」
「お、おう…」
にそう言われて振り返れば、部員が赤木のもとへと集まり始めている。
急かされるように練習へ戻った三井だが、のことが気になって練習どころじゃないというのが本音。
全体練習のあとは居残ってシュート練習をするのが日課になっている三井だったが、
今日ばかりは真っ先に部室へ戻って着替え始めた。
部活終了からわずか5分後。
三井はを連れて学校を後にした。
後書き
久しぶりの二部構成!
よろしかったら続きもどうぞ。
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