「悪いね、。またつき合わせて」

 「ああ…いいよ別に」
 
















 放課後、誰もいない教室で。

 湘北高校の名物コンビがパックの烏龍茶をすすっていた。














 入学以来、もう何度目になるだろう。

 今朝、の下駄箱に入っていた一通の手紙。

 いわゆるラブレターというやつだ。

 お約束のように屋上に呼び出され、熱い想いを打ち明けられる

 だが、そんなの口から出るのはいつも「お断り」の言葉で…

 














 は、後味の悪そうな表情で帰ってくるを教室で待っていた。

 …いつものことである…



















 「そんじゃま、体育館行きますか」

















 空になった烏龍茶のパックをゴミ箱にシュートし、が立ち上がった。














 「よく続くもんだ」
















 も立ち上がり、ゴミ箱まで歩み寄って烏龍茶のパックを捨てる。

 ついでに、先ほどが放ってゴミ箱に入らなかったゴミも拾って捨てる…















 最近は、バスケ部の練習見学に夢中だ。

 なぜならば「お目当ての先輩」がバスケ部にいるから。


















 その先輩の名前は三井寿。




















 は中学の頃から三井寿に憧れていたらしく、彼を追って湘北高校に入学したといっても過言ではない。

 無論、を巻き込んで…。
 


















 二人が湘北高校に入学した当時は、バスケ部に三井の姿はすでになく。

 街中や、まれに校内で変わり果てた三井の姿を見かけた。

















 の気持ちを知っていたとしては

 変ってしまっていた三井を見て、が悲しむのではないかと心配した。

 ただ、当のはそんなそぶりも見せず、三井の姿を見かけたときは、以前と変らず嬉しそうで。

 今年になって三井がバスケ部に復帰したと聞いたときは思ったよりも冷静に

 「そっか」

 と、一言呟いただけだった。  
 



















 そんなに、もあえて、何もいわなかった。
 
 きっとにとって、三井は三井ということなのだろう。



 
















 そんなこんなで、とにかく

 日々に告白してくる男どもがことごとく玉砕するのは三井のせいだ。

 その事実を知るのはだけで、の下駄箱にラブレターが入っているのを見るたびに、

 は心の中で手を合わせているのだ。











 『南無三…』



















 の心中を知る由もないは、すでに荷物を持って歩き始めている。













 「ほら、行くよー」

 「あー、はいはい」

 











 も鞄を持ち、の後を追う。

 湘北高校の名物コンビは

 バスケ部が練習する体育館へと歩き始めた。 









 後書き

 一真が学校というところに通っていたとき、 すでに下足箱にラブレターってのはなかったなあ・・・。
 さんのモデルは一真のお友達。 本当によくモテていました。
 さんのように美人ではなかったけれど、 やっぱり人間は中身だ!と一真が悟るほど
 いい子でしたねえ・・・・。



 次のお話