百合

 

  昨日、玄関前の小さな花壇を整理した。この前までこんもり茂っていたインパチェンスもほとんど葉が落ちている。その中から伸びた百合も、緑が退色して、うっすら黄ばんでいた。

 その2本の百合の天辺にひとつづつ実がついている。この初夏に、交配した実だ。そのおくらのような実も、少し黄ばんで割れかけていた。

 少し濃いピンクと薄いピンクの2種類の百合だ。いつ植えたのか忘れてしまうくらい前から毎年咲いている。この百合が咲くと長い梅雨がやっと終わる。咲いている2週間ほどは、玄関前はいいかおりになる。

 

 昔ずいぶんといろいろな百合を植えたのだが、そのころので庭に残っているのはこの百合だけだ。

 6月ごろ、私より高くなって、つぼみが大きくなってくる。そのころになると、茎に虫の糞がついているのが見つかる。そうなるともう終わりだ。その糞の小さな塊をこすり落とすと、小さな孔がある。外からは針で突いたほどの穴なのだが、茎の中は虫に食い荒らされているのだろう、消毒しても、倒れてしまう。花が咲かないばかりか、球根もだめになって枯れてしまう。開花まで後一歩というときにやられるから、なおさら悔しい。そうして玄関にある百合以外はみんな枯れてしまった。

 その玄関の百合も今年は三本大きくなったのだが、やはり1本が倒れた。残った二本に花粉を交配して種をつけさせた。花粉は、プランターの中で咲いた白い百合の花粉だ。その百合は、昔蒔いた種がやっと咲いたものだ。

 百合の種はまいてもすぐには出ない。芽が出るのさえ1年以上かかる。はじめはわからずに捨てていた。捨てようとした土の中から出てきた種が、腐るどころか、生き生きしていたので、もしやと思ってそのままにしておいたら芽がいっぱい出た。

 ところが、芽が出たからといって、パンジーのように数ヶ月で咲くというわけにはいかない。2年待っても、3年待っても一向に大きくならない。三年ほどで、細い茎が10センチほどに伸びたのがやっとだ。育てるのに飽きてしまって、プランターのほかの花のわきにちょこっと間借りしているので、花を植え替えるときにいっしょになくなってしまうのだ。それが、今年やっと咲いたのだ。30センチほどの細い茎の上に1輪ずつ、三本咲いた。

 白い百合を植えたのは残っているピンクの百合を植えたころよりもっと前になるから、種をまいてから10年以上かかったことになる。

 それで、もう一度種を撒いてみようとその白い花の花粉をピンクの花に交配したのだ。

 

 新しいプランターをふたつ買ってきて、昨日採った種を蒔いた。芽が出るのはおそらく再来年の春になるだろう。名札をつけたが、それまでに忘れるだろうからと思って、来春芽が出る梅と、エゴノキの種をまいた。それぞれ10個ほど蒔いたから何本かは出るだろう。それを育てているうちに百合も芽が出てくるだろう。名札がなくなってもそれだと捨てることはないだろうから。

 それからも何年もかかるだろう。忘れたころにまた1輪2輪咲くだろうか。おそらくそのときはもう70を越えているだろう。たぶんまだ間に合うだろうとは思うが。どんな花が咲くだろう。気長に待っていよう。

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