美しい国
先日、沖縄へ行った。羽田に行くのに、上野から山手線に乗った。久しぶりに乗った電車は案内が便利になっていた。案内パネルに停車駅とそこへの到着時間が表示してある。見ていると、表示が変わって、トラブル情報になった。人身事故で、3箇所の運行が遅延しているというのだ。
「朝から、自殺が三人だよ」と、わきにいる妻に言った。
4日後、帰りに、やはり山手線に乗った。その日も、3箇所で人身事故のため遅延しているという表示があった。
「困ったわね、いけないわ」
隣の2人連れがそれを見て言った。
2人が下りた後、「3人も自殺したってことには何も感じないんだ。遅れることだけにしか興味がないんだ」と私は妻にいう。「毎日何人も飛び込み自殺してるから、慣れっこになってるのよ」
国民年金や保険の未納者が増えているという。給食費の未納者が増えているという。給食費は、3000円か4000円である。それが払えない家庭が増えている。ずるしているとテレビでやっていた。何様のつもりか知れないが、よく言うと思う。その金が払えなくて、肩身の狭い思いをしている子どもと、取立てで、すみませんと誤っている母親の苦悩はひとつも分かっていないのだ。アナウンサーはちゃんと給食費を払っていると思う。彼にとって、3,4000円は小遣いにもならないだろうけど、それが払えずに苦労している人たちをつかまえて、ずるだと責めている。
私の近くでもこの1年3人の人が自殺した。仕事が大変だからというもっぱらのうわさだ。休みなく働いて、くも膜下出血になった人もいる。大阪では、目障りだからというのでブルーテントの撤去をしているニュースがあった。ワーキングプワなどという言葉もある。働いても賃金が、生活保護世帯よりも低い人たちをいうそうだ。そしたら、生活保護の支給額をそこまで下げればいい、などという人がいる。そういう人たちはアナウンサーと同じように金持ちだ。
これが経済発展が最長になるという国の話だ。世界有数の経済大国の話だ。首相は「美しい国にする」という。昔、農民は泥の中を這いずり回って、米を作っていた。その米はみんな取り上げられ、自分たちは麦やくず米や、五穀を食べていたという。その米を、何もしないでのうのうと食べて、麗しの、などと歌など詠んで美しく生きていた貴族がいた美しい世界に逆戻りさせるのだろうか。