おじさんおばさんバトミントン、会
「若い人はいいわね」
みどりさんがうっとり言う。
体育館の中は、バトミントンの音が響き渡っている。
私たちも先ほどまで羽根を打ち合っていたのだが、疲れて、休んでいる。私たちはすぐに疲れる。なんといっても、おじさんおばさんバトミントン会なのだから。でも、隣のコートでやっている人たちは、同じ年代なのに疲れない。打ち合うシャトルも、ビン、パンと、音からするどい。
目の前のコートでは、近くの大学の名まえが入ったユニホームを着た若者が、激しく打ち合っている。みどりさんとよしえさんはそれをうっとり見ている。
そして、二人で、よだれのたれそうな、満面笑みで、「わがいひどはいいわねえ」と言ったのである。
「そうよね。若い人がいいのは、男の人ばかりじゃないのよね」
とよしえさんが応じる。そしてチラッと私たちを見る。
「んだよなあ、あのばね」
と朝吉さんはひとつも動じない。
「あのひとたちとやってみたい」
みどりさんの顔はでれっとなっている。
「頼んできたら。やってくれるよ」
私はわざとむくれた声を作って言う。
「おばさんなんか相手してくれないわよ」
とよしえさん。
「そんなことないよ。いまどきの若者は優しいから相手してくれるよ」
朝吉さんが言う。
「同情で相手してくれるなんて、いやだわよねえ」
と、好江さんはみどりさんに同意を求める。
「そうよね」
「贅沢言わないの。やってくれるだけありがたいと思わなくっちゃ」
「そんなことないわよ。大人の魅力で迫っちゃうんだから。ね。」
みどりさんが好江さんに言う。
「ちょっとおなかの脂肪減らせばまだまだなのよ」
二人でおなかをさすっている。
それでも、みどりさんの目は若者たちから離れない。
「目じりがたれちゃったよ」
朝吉さんが冷やかす。
「こっち空いたよ」
向こうのコートでゲームをしていたおじさんが呼ぶ。
「どれ、やってくるか。ま、おれたちで我慢しな」
で、4人でのそのそ立ち上がる。
おじさんおばさんバトミントン会はのんびり羽根つきを始める。もう何年もそうやっている。もちろんいっこうにうまくはならない。なんてったって座り込んで話しているほうがはるかに長いのだから。