庭の客

 

 庭に、念願の小鳥の餌台を作って2年になる。それまでは、猫を飼っていたのであきらめていた。ちょっと間はあったが、猫は、1代目と二代目合わせて、20数年はいたろう。二匹とも最後まで、名前はねこのままであった。隣の家の車の上に乗ったりするので、その後は猫を飼うのをあきらめた。

 そこで、念願の餌台を作ったというわけだ。

 餌台といってもいたって簡単なものである。肩の高さほどの丸太の上に板を打ち付けただけで、かっこいい屋根など一切ない。ただ、板の周りに木の枝を切ってきて枠を取り付けた。餌が地面にこぼれ落ちると、それを食べるために鳥が地面に下りて、野良猫にねらわれないとも限らないからである。

 餌は、市販の小鳥のえさと、安売りのバナナだけである。バナナは、ヒヨドリとメジロが冬の間食べに来ていた。いつのまにか、メジロが来なくなり、5月にはヒヨドリも姿を見せなくなった。ハエと蟻しか来なくなったので、今はバナナは置いていない。寒くなるころ、またヒヨドリが戻ってきたら置いてやろうと思っている。

 小鳥の餌はスズメとキジバトが食べにやってくる。

 キジバトは今3羽来る。つがいの一組と、やもめの1羽である。やもめの1羽も、来たころはつがいだった。ある日、庭に続く畑に鳥の羽が散乱していた。猫にでもやられたのだろう。その日以来1羽になった。いまだにやもめ暮らしである。今つがいのほうも、長くやもめ暮らしをしていた。やはり途中で連れ合いをなくしている。

 スズメはかなりの数が来る。野鳥の会の会員でもあれば数えられるのだろうが、あの騒ぎまわるスズメの数を数えるなんていう芸当は私にはできない。 

 鳥も、種類によって性格が違う。スズメがいちばん人を警戒する。餌台は部屋から数メートル先にあって、サッシのガラス戸からよく見えるようになっている。部屋から見ていると、向こうもこちらを伺っている。最初のころなど、こちらがちょっとでも動こうものなら慌てふためいて飛び立った。今はさすがにそれほどではないが、それでも警戒はしている。

 キジバトは人懐っこい。というよりぼんやりかもしれない。こちらが動いてもガラス戸を開けない限り平気で餌を食べている。最近はかなり近づいても逃げない。

 キジバトは、平和の象徴の仲間だけあってけんかをしない。ほかの鳥が来てもけっして追っ払わない。

 反対に、ヒヨドリは攻撃的である。絶対にほかの鳥を寄せ付けない。スズメやメジロだけでなく、自分の倍もあるキジバトにも攻撃を仕掛ける。キジバトはバナナを食べないにもかかわらずである。つがいで来ても1羽ずつ交代で食べる。二羽並んで仲良く食べている姿を見たことがない。それどころか、満腹になっても近くで見張っていて、ほかの鳥が餌台に来ると飛んできて追っ払う。

 一番体の小さいメジロもその傾向がある。体が小さいのでほかの鳥を追い払うことはできないが、同じメジロは追い払ったりする。

 これは餌の種類によるのかと考えたりする。花の蜜や果物が主食のヒヨドリや、メジロが、闘争的なのに比べ、草の実を主食にしているスズメやキジバトは、仲良く餌を食べている。冬に花の蜜や果物を自然界で探すのは大変だからなのだろうか。草の実も豊富にあるとは思えないが、それでもまだましなのだろうか、キジバトと、スズメはいっしょに食べている。

 腹が減っては情どころではないのはなんとなく分かる気もする。人間界も、富を巡って争いが絶えないのだからお高くも止まっていられないか。

 

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