宇宙論入門第2章

素粒子と宇宙 インフレーションという鍵

(以下「 」内は、「宇宙論入門からの引用}

2 真空の総転移と力の分岐

「真空の総転移」と水の総転移

「総転移とは、水が氷になるように、同じ物質が温度などの変化によってまったく異なった状態になることをいう。」

「真空の総転移」とは「ワインバーグ・サラム理論の真空の総転移は、超伝導のアナロジーである。」

「力の分岐は、真空の「常伝導状態」と「超伝導状態」とで、力の到達距離が変わるために起こる。」として、金属の超伝導と常伝導の関係が述べられている。そして、これが真空にも起こるという。「私たちの現在の真空が、弱い力に対して「超伝導状態になっていると考えた」「弱い力を伝える粒子が大きな質量を持っている状態である。」この「質量は非常に重く、約100ギガ電子ボルトと予想される」

問題2−1

 「真空の総転移が起こったのは、温度にして、1000兆度(エネルギーにして約100ギガ電子ボルト)宇宙誕生からわずか10_=11秒の時期である。ビッグバンモデルで論じられていた元素合成の時代よりはるか以前のことになる。」

考察2−1

 この温度は何の温度なのだろう。元素合成の前だから、物質の温度ではない。100ギガ電子ボルトというのだから何か質量のあるものなのだろうか。もしそうなら、これは、弱い力を伝える粒子1個と同じ質量であるようだ。弱い力は原子の中の世界だから、そんなにたいしたエネルギーではないのがわかる。そこらに転がっている石ころには無数の原子が入っているから、それよりは格段に低いということだ。

 しかし、1000兆度というのは大変な温度だ。これについて考えてみる。

 まず、このように温度を高めた仕組みが明示されていない。

 第2に、何の温度か明示されていない。

 第3に、このエネルギーはどこから供給されたのかも明示されていない。

 1gの水の温度を1度高めるには、エネルギーを加える必要がある。1tの水の温度を1度高めるには、その100万倍のエネルギーが必要である。

 だから1000兆度といっても、何の温度が、どれくらいの質量があるのか(質量があるものならば)というのは重要なことである。また、物質のできる以前の真空が温度を持つことができるのだろうか。もしそうならその仕組みを明らかにする必要がある。もちろん事実の検証も含めて。またそのためにどのようなエネルギーがどのような仕組みで加えられたのかを明示しなければならないはずだ。

結論2−1

 まず、高温であるということと、宇宙が生まれた、ということが前提にある。しかし、この前提には何の根拠もない。思いつきでしかない。仮説にするには、不明な点が多すぎる。

 

 また。「宇宙誕生から」ということは、宇宙がどこかで誕生したということだ。

 宇宙誕生以前は何があったのだろう。宇宙はどこで誕生したのだろう。誕生した宇宙の周りはどのようなものなのだろう。という、空間と、時間の無限の問題は解決されずに残る。

問題2−2

「量子論で考える真空は・・中略・・何もないところに電子と陽電子が対でポッと生まれてきて、それがまた合体して消える。そのような生成・消滅を繰り返している状態が真空である。」

考察2−2

 この、「電子と陽電子が」「生成・消滅を繰り返している」状態は観測されていないので、仮説である。

 「真空ではエネルギーが与えられないかぎり実際の電子・陽電子対を取り出すことができない」とあるように、理論の中では起こっても、自然界では起こっていないということだ。

 また、「量子論では、エネルギーの一番低い状態のことを真空と呼んでいるのである」から、顕微鏡で見てもわからないような小さな真空に、宇宙を生むエネルギーがあるとは思われない。

 したがって、この反応によって、宇宙を生むには、それに見合う大きなエネルギーをほかから真空に加える必要があるということだ。砂粒ひとつ生むのだって、相対論によるとm=E/cなのだから、膨大なエネルギーが要るはずだ。地球一つ作るのだって、天文学的なエネルギーを加えることが必要になりそうだ。

 宇宙誕生のとき真空以外のどこから、エネルギーを加えたのだろ。あるいは「エネルギーの一番低い状態」の真空自体がそのような大きなエネルギーを持っていたのだろうか。これはおいおい明らかになるだろう。

結論2−2

 まず小さな火の玉ありきである。これは、宇宙は膨張しているということから来ている。それは、ハッブル定数である。それは、銀河の赤方偏移から来ている。すなわち、銀河が遠くなるほど赤方偏移しているということ以外に、何の根拠も無いことなのだ。

 膨張している、だから、昔に戻ると一点に集まっていたはずだ、だから高圧力になる。すると高温になる。だから始まりは高温だったはずだ、というのだろうけれど、これでは、始まりは宇宙に大量の星があるという今の宇宙が宇宙誕生の原因になってしまう。現在が原因で過去が結果になってしまう。何もない所から、とつぜん高温の宇宙が生まれた仕組みの説明にはならない。

 だから、始まりは、突然、何の前触れも無く、どことも知れずあらわれた、得体のしれないエネルギーに満ちている。光あれ、と同じことだ。だから、キリスト教は喜ぶのだろう。

 

問題2−3

宇宙の温度を考える

「宇宙が膨張して1000兆度まで温度が下がったとき」(P59)

その前は

「大統一理論の総転移は、宇宙がはじまって10-36秒というとき、温度でいえば、1028度という高温の時代に起こった」(P60)

「真空のエネルギーの驚くべき特徴は、宇宙の体積がどれだけ大きくなろうと、そのエネルギー密度は薄まることはなく、一定であることである。宇宙全体のエネルギーは「体積×真空のエネルギー密度」であるから、体積が急膨張することによって、宇宙全体のエネルギーが何十桁、何百桁と増える。」(P73)

考察2−3

 アとイから一瞬より短い時間で13桁ほど、温度が下がっている。すごいことだ。1の10倍は、10で、違いは9しかないが、1兆の10倍は10兆で、9999999999999の違いがある。大きくなればなるほどすごい差が出る。1000兆の13乗倍の温度が一瞬より短い間に下がったのだという。その仕組みはどのようになっているのだろう。口で言うのは簡単である。文字で書くのも簡単である。たった数行ですむ。それでさえ、数秒はかかるだろう。それが、宇宙全体の温度が、目にもとまらぬ早業で下がったのである。信じがたい現象だ。

 これは宇宙が膨張したためであるらしい。ということは、空気が膨張して、温度が下がる現象と類似している。

 空気の場合は、膨張により、空気の密度が減少するので、エネルギー密度が下がることによって温度が下がる。

 しかし、「真空のエネルギーの驚くべき特徴は、宇宙の体積がどれだけ大きくなろうと、そのエネルギー密度は薄まることはなく、一定である」とあることから、膨張によって空気の温度が下がる仕組みと違う仕組みで温度が下がるようだ。しかし、このあたりのことは説明がないので不明である。

 ただ、ウから考えると、真空が膨張すると、エネルギーも「何十桁、何百桁と増える。」のだから、エネルギーの供給のない空気の膨張と違い、真空の場合は、温度は下がらないはずだ。

結論2−3

 このあたりは大きな矛盾があると思われる。59ページと、73ページという書かれてある場所の違いと、「力の大統一と陽子崩壊」と、「宇宙の「指数関数的」急膨張」ということで、説明する対象が違うから、それに合わせた条件だからそうなったのだろうか。

 力の大統一と陽子崩壊の観測は今のところ失敗しているということだから、温度のほうが怪しいのかもしれない。

 どちらにしろ、この、温度や温度の変化は想像にしか過ぎないから、本当にあったかどうかは怪しいものだ。 

 

問題2−4

「まず総転移が遅れる効果により宇宙は過冷却を起こす。しかし、総転移が起こらないため真空のエネルギーは高いままである。真空が総転移を起こす前の宇宙の状態は、現在の真空よりエネルギーが高い。このエネルギーの差を「真空のエネルギー」と呼ぶ。

考察2−4

 真空のエネルギーには2種類あるようだ。ひとつは、総転移の前後にあるエネルギーの差である。もうひとつは「現在の真空よりエネルギーが高い。」「真空とは、エネルギーの一番低い状態のこと」と表現されている真空そのものの持つエネルギーである。この区別がはっきりしない。

 

結論2−4

 真空にもいろんな種類があるということなのだろうか。これは次でも、関連して。

 

3 宇宙の「指数関数的」急膨張

問題3−1

「真空のエネルギーは、宇宙項と同じように、空間を押し広げる斥力の働きをする」

考察3−1

(1)力の分類

 空間を押し広げる力とはどのようなものなのだろう。今まで知られている、この本でも解説されている4つの力(強い力、弱い力、電磁力、引力)には、空間を押し広げたり縮めたりする力は無い。実際、核爆発の力も、太陽の核融合の力も、空間を押し広げてはいない。もちろん引力も空間を縮めない。プロローグでは、宇宙全体が引力で縮んでいるかのようだが、もしそうならそれは間違いである。何か4つの力以外の別の力が働かなくては空間は縮まない。

 あっさり一言で片付けられることではない。4つの力以外の、第5の力の存在を言っているのだから、その性質や、その、押し広げる仕組みなどをもっと解説し、証拠を提出しなければならない問題である。

(2)実際と比べる

 現在も宇宙空間は膨張しているというのがビッグバン論では定説である。すると、地球の占める空間も膨張しているはずである。すると、私たちの周りでもこの真空のエネルギーが作用しているはずである。それが何一つ検出されていないし、現実への影響もしていない。

結論3−1

 以上から、この真空のエネルギーは、数式の中にはあっても、現実世界には存在しないと思われる。

問題3−2

 「宇宙が素粒子のような小さな大きさから始まったとしよう。」

考察3−2

先に書いたように、

どこで始まったのか。

それ以前はどうなっていたのか。

その外はどうなっているのか。

なぜ始まったのか。

などの問題はここでは書かれていない。

結論3−2

 「〜としよう。」というのは仮説なのだろうか、思いつきなのだろうか。「〜としよう。」で始まるものはどこまでいっても、仮説か、思いつきかお話かである。

 「魔法が本当にあるとしよう」でお話はいくらでも作ることができる。しかし、それはお話から一歩も出ることはできないのと同じである。この問題は関係したところで再度考えたい。

問題3−3

「宇宙が最初この大きさだったとして、倍々ゲームを100回繰り返すと、この宇宙は太陽系を超え、140回繰り返すと、現在見えている宇宙の大きさを越えてしまう。」

考察3−3

 これはいくつかの問題を抱えている。

第1の問題

 この宇宙が膨張していくにはその外に広がる場所がなくてはならない。何にも無い場所、すなわち真空の空間が広がっているのだろうか。それとも何かがびっしり詰まっているものがあるのだろうか。どちらにしろ、この宇宙の外側があるはずである。

 その部分と衝突するこの宇宙の膨張の最前線はどうなっているのだろう。そちらの部分は圧縮されているはずだが、それはどうなっているのだろう。

 このあたりのことは何も書かれていない。

第2の問題 

倍々ゲームについて。

 ビー球を倍の大きさにするのは、そんなに難しいことではないかも知れない。手品師でもやれる。

 では地球を一瞬で倍の大きさにしてみよう。これはかなり困難である。手品師ではとても無理だ。太陽を倍にしてみよう。一瞬で太陽が2個になるのだ。銀河系を倍にしてみよう。1000億の星が、一瞬で2000億になるのだ。そのエネルギーたるや並のものではない。半径五万光年だから、一瞬で五万光年増えるのだ。光速の、15768×10倍の速度以上で物質が移動する。

 宇宙はどうだろう。半径50億光年の宇宙が一瞬で100億光年の宇宙になるのだ。50億光年を一瞬で膨張させるのだ。

 中心あたりでは小さな膨張率でも、端のほうになると光速の15768×1012倍以上の速度になる。kmではない、光速の、である。その加速度はものすごいものだろう。

 小さいものなら簡単である。しかし大きくなるとそうはいかない、さまざまな問題が生じてくる。

 一休のとんちで、褒美に、米一粒から倍々ゲームで、米をもらっていく話がある。最後に払いきれなくなって殿様が謝る話だ。

 ことは大きくなると、払いきれなくなる。最初はゆっくり膨張しても、地球が倍になるときくらいからは、ものすごい加速度になる、あっというまに銀河系の大きさになり、あっという間に宇宙の大きさになるだろう。しかしそこまで膨張を加速するにはどれくらいのエネルギーがいることか。それも、全宇宙の物質の加速である。このエネルギーはどこから供給されているのか。真空のエネルギーというが、真空にそんなにエネルギーがあるわけがない。真空とはエネルギーの一番低い状態であるのだから。

結論3−3

 これも紙に書くなら、数行で事足りる。使うエネルギーはほんの少しだ。キャラメル半個もいらないだろう。しかし、現実に摘要すると、そうはいかない。実際に宇宙のすべての物質を引き連れて倍々ゲームで膨張させるには天文学的数でもはるかに足りないエネルギーがいるのだ。

 言うは易し、行うは難しである。

 実際にこんなことが起こるわけがない。これもたんに面白い思い付きにしか過ぎない。

 

問題3−3

「真空のエネルギーの驚くべき特徴は、宇宙の体積がどれだけ大きくなろうと、そのエネルギー密度は薄まることなく、常に一定である。」

 考察3−3

 これは普通の膨張とは違うようだ。

 空気の膨張と比べてみよう。空気が膨張するときは、全体のエネルギーは変わらないから、空気のエネルギー密度が減るのは前に書いたとおりだ。

 ところが、空間の場合は減らないという。これは膨張ではなく、空間の範囲を広げたときと同じ現象だ。新たに取り込んだ空間のエネルギーがそのまま増えるというのと同じである。

 空間が膨張するのと、境界線だけが、新たな空間を取り込みながら範囲を広げるのと同じ現象になっている。膨張しても、エネルギー密度が下がらない根拠が述べられていない。

 これは元々、真空は何もないから、膨張しても何もない、だから、膨張した部分も、前と同じである、というのかもしれない。としたら、まあ、つごうのいい話だ。

結論3−3

 実際にそうなっているのかどうか、観測で実証しなければならないのだろうが、これも、地球や太陽系では空間膨張が観測されていないので、膨張前と、あとで真空のエネルギーが薄まっていないという実際の確認はできそうにない。実験するといっても、空間を膨張させることは今のところできないから無理だし。

 否定もできないが、証明もできないから、ここしばらくは、仮説か、思い付きの域を出そうにない。

問題3−4

「真空のエネルギーの存在する真空そのものは、あたかもゴムのように、引き伸ばされると、もとの状態に戻ろうとする負の圧力を持つ。真空というゴムを引き伸ばし、そのエネルギーを増大させたのは宇宙の膨張であり、このエネルギーは宇宙の膨張から来ている。つまり真空のエネルギーは、アインシュタイン方程式を通じて急激な宇宙膨張を起こし、それによって自らの全エネルギーを増大させる。この機構によって、単に小さな宇宙の空間的大きさを大きくするというだけではなく、宇宙内部にエネルギーをつくりだしている」

考察3−4

 第1段階は、

 真空のエネルギーは、真空をゴムのように引き伸ばす。すると、ゴムのように引き伸ばされた真空は元の状態に戻ろうとする負の圧力を持つ、ということだ。これはゴムを引き伸ばしたときに生ずる現象と同じだ。

第2段階は、

宇宙は膨張すると、エネルギーが増える。そのエネルギーは、宇宙を引き伸ばし、元に戻ろうとする負のエネルギーを生むととらえた。ここの文は難しい。

 第3段階

 「それによって自らの全エネルギーを増大させる。」

 上の場合だと、縮もうとする負の力と、引き伸ばす力は相殺されるはずだ。ゴムを伸ばすときは引っ張る力がゴムに移動し、縮む力になる。引っ張る力が縮む力に移動しただけで、エネルギーは増えたりはしない。エネルギー普遍の原則である。

 なぜ真空の膨張は「この機構」によってエネルギーを増大させることができるのだろうか。

 先ほどのところでは「この機構」ではなく、空間が膨張すると、膨張した真空の体積分が新たな真空になりその分真空の持つエネルギーが増えるという話だった。

結論3−4

 ニュートンのエネルギー不変の法則は機能しないようだ。エネルギー不変の法則には抵触しないと言っているが、かってにエネルギーが涌いてきているのはたしかだ。普通の物質や、4つの基本的力ではこうはいかない。

問題3−5

「宇宙全体の真空のエネルギーは「体積×真空のエネルギー密度」であるから、」

考察3−5

この式は大丈夫なのだろうか。

「真空のエネルギー密度」は、真空が膨張したときそれにともなって減少しないだろうか。普通の物体が膨張すると、エネルギー密度が減少し、体積が増えても総エネルギーが変わらないので、温度が下がる現象になって現れる。膨張してもエネルギー密度が薄まらないのが真空のエネルギーの驚くべき特徴である、とあるとおり、驚くべき特徴である。しかしそれは本当だろうか。驚くべき特徴なのだから、根拠と証拠を明示しなくてはならない。

 

4急膨張がビッグバンを引き起こす

問題4−1

 エネルギー保存との関係

「重力ポテンシャルの中で物体が落下する」ときと同じである。

「宇宙が急膨張するときは、宇宙を記述する方程式の中で重力ポテンシャルに対応する項が急減少し、エネルギー保存則が成り立っているのである。」

考察4−1

「方程式の中で重力ポテンシャルに対応する項が急減少し」とあるがこの項に対応する現象は何だろうか書いていない。

 石が落下するときは、石の持っていた位置エネルギーが運動エネルギーに変換される。位置エネルギーが減少し、それに見合う運動エネルギーが増加する。石が位置エネルギーを持つためには、誰かが、地表から持ち上げなければならない。その運動エネルギーが位置エネルギーに変化するのである。エネルギー保存則は成り立つ。

 ところが、「宇宙全体の真空のエネルギーは「体積×真空のエネルギー密度」であるから、体積が急膨張することによって、宇宙全体のエネルギーが何十桁、何百桁と増える。」と前項であったが、この増えるエネルギーに対応して、減るエネルギーは記述されていない。総エネルギーが一方的に増えているだけだ。

結論4−1

 エネルギー保存則が成り立っているためには、最初に真空のエネルギー以外の何か膨大なエネルギーが必要になる。それが減少した分だけ真空のエネルギーが増えるのである。その何百桁にと増大した真空のエネルギーに見合うエネルギーが示されていない。

問題4−2

 「急膨張がどの程度続いて総転移が終わるのかは、残念ながら理論的には予言できない。総転移がいつ起こるかは、大統一理論の総転移の詳細によって決まるが、現在のところ、膨張が100桁だったのか1000桁だったのかを決めることはできない。」

考察4−2

 急膨張の終わり。

 これについては様々な意見があり。直径10センチで終わる意見から、今観測される宇宙のはるか先まで急膨張する意見とか。もっとはるかに膨張し、その後もう一度中心に、ビッグバン宇宙ができて広がるとか、さまざまである。

 また、始まりの時期について「総転移がいつ起こるかは、大統一理論の総転移の詳細によって決まる」というが、大統一理論はまだ完成されていない。完成のめども立っていないので、総転移がいつ起こるかを知ることはできないのが現状である。

結論4−2

このことから、急膨張については、始まりも、終わりも、規模も、何一つ決まっていないということのようだ。

5 宇宙空間で背景放射を測る

この章で最も重要な反論です。

問題5−1

 天文衛星COBEによる観測で、「宇宙背景放射が理論の予言どおり完全なブランク分布であることを明らかにした。その温度は二.七三度(絶対温度)であった。ビッグバンの火の玉以外にこのようなブランク分布を示す現象は考えることはできず、ビッグバンモデルはさらに強力な観測的証拠を得た。」

 これについて、第三章の口絵で、天文衛星COBEと、次の衛星WAMPの映した宇宙背景放射の全天マップが掲げられている。

考察5−1

1)ビッグバン背景放射理論と事実の整合性

 「理論の予言どおり、二.七三度であった。」とあるが、背景放射が実際に観測されるまでは、もっとはるかに高い温度を予言していた。20Kとか70Kとかである。背景放射が観測されてから、理論的予言もその温度にあわせたと思われる。理論を現実にあわせて変えたのだから合うのが当然だ。

(2)背景放射の他の理由と事実の整合性

 宇宙の塵の温度という理論では、背景放射が発見される前から、3度前後の温度を何人かの人が、違う観点から予言していた。こちらは理論の予言が先行している。

(3)第3章の口絵の天文衛星COBEと、WAMPの映した宇宙背景放射の全天マップ

 この写真には宇宙のゆらぎ(もやもや)が写っている。このもやもやが、やがて、銀河になり、星になり、銀河団になったという。

 すると、そのもやもやの一部は、天の川銀河になるもやもやである。いえば、天の川銀河の赤ん坊時代の姿である。また、その中には地球の赤ん坊の姿も映っているはずである。

 そんなことが可能であるのだろうか。今、どのようなカメラを使っても、私が、私の赤ん坊の姿を撮ることはできない。62年前(私は62歳)地球があった場所にカメラを向けても、私の姿は映せない。そこには何もない。過去なのだから。

 同じように、どんなにすばらしい人口衛星でも、地球の過去は映せない。もちろん天の川銀河の赤ん坊の姿も。COBEも、WAMPも、タイムマシーンではないのだから。

結論5−1

 宇宙背景放射を、宇宙のちりの出す光と考えると、すべては、既存の証明された物理理論で過不足なく説明がつく。

 しかし、宇宙誕生30万年の宇宙の晴れ上がりの光としたら、新たな、時間の物理理論を構築し、その実際の証拠を提出しなければならない。62歳の私が、自分の赤ん坊のときの姿を写真に撮ることができるという難問である。少なくとも今の科学技術ではそれはできない。

 したがって、宇宙背景放射は、宇宙の塵が出す光であるとしたほうが妥当である。

6 次々と生まれる宇宙

宇宙はいっぱい次々ときのこのように生まれるという考え方だ。

問題6−1

宇宙が真空から生まれ次々にきのこのように分枝していくとする。

考察6−1

真空はどこにでもある。すると、ある日、アンドロメダ銀河のとなりに、一瞬で巨大な宇宙が出現することもあるはずだ。あるいは、太陽のとなりにとつぜん宇宙が出現したり、地球のすぐ横に巨大な宇宙が出現し、次々に枝分かれしていくこともありだ。

 あなたのとなりにはどうだろう。真空じゃないからできない。

そんなことはない。ひじょうに小さな真空がありさえすれば宇宙は十分でき始めるという。だから、原子と原子の間の真空とか、原子の中の真空とかからも、宇宙は発生できそうだ。いろんな力が働いているからだめだといわれそうである。しかし、宇宙を作る真空のエネルギーは、銀河1000億個の物質だって一瞬で造るのだから、地球ごときの力は屁とも思わないはずだ。

 あなたのおなかの中でとつぜん宇宙が誕生したらどうしますか。い俊より、短い間で、あなたは粉々になり宇宙のかなたに飛ばされるから、考える間もないでしょうから、何が起こったかわからないでしょうから、心配無用ですけど。

結論6−1

 いろいろ考えるのは楽しいものです。しかしそれがすべて科学とはいえません。これは空想科学の分野でしょう。

 まあ、無いということも証明できないことですから、論じても仕方がないことですが。

 この後、いくつかの宇宙のでき方が紹介してあるが、どれも、思い付きの段階である。実際の現象で、裏づけできたとき初めて科学になるだろう。

 

第2章終わり

 

宇宙論入門表紙
宇宙論入門第1章の考察