V 小さくつぶやいてみましょう。「ま、それくらいどうってことないか」


 人間小さなことにこだわっていては大成しないものですよ。ちょっとくらい変だったって、まあまあ、目くじら立てずに穏便にやればお互い楽しくやれるってもんですよ。それが、御大人てもんです。

 

1 問題 どうしても消えない


 前項の思考実験で、相対性理論を信奉している人も、エレベーターの中でも重力は消えていないのではないかと、疑問を持っていることがあります。それは潮汐力です。

 地球上で、物体が落下していくときは、地球の中心に向かって落下していきます。

 日本で物を落とすと、真下に落ちます。アメリカで落とすと、やはり真下に落ちます。地球上どこで落としても真下に落ちます。みんな地球の中心に向かって落ちていきます。当たり前のことです。だから、すぐ近くでも、二つの物体を同時に落とすと、互いに近づいていきます。普通にボールを落としたくらいでは人間の目では識別できませんが、厳密に観測するとそうなっています。落下する二つのボールの方向を延長すると、地球の中心で交わります。

 同じ理由で実際に起こっている現象が瀬戸大橋にあります。瀬戸大橋の橋脚は地球に垂直に立っています。でも、橋脚同士は根元どうしの距離が天辺同士の距離より短いのです。逆ハの字になっているのです。それぞれの橋脚が地球の中心に向かってまっすぐ立っているのだから当然の現象です。りんごに爪楊枝をまっすぐ立てながらぐるっと一周させてみると分かります

 この現象が前項で話した自由落下しているエレベーターの中でも起こっているというのです。相対性理論の信奉者もそういうのです。エレベーターの中は重力が消えているからそういう現象は起こらない、となぜか突っぱねないのです。エレベーターの中は重力が消えているから、光はまっすぐ進むという人がです。

 したがって、エレベーターの中のリンゴと観測者は互いに近寄っていくらしいです。無重力で、何の力も加わっていないとしたら、こんなことは起こらないはずです。体も、りんごも質量があるので、少しは引力があって引き合うのですが、そのときは、質量の大きいほうが少ししか動きません。潮汐力の場合は質量と関係なくお互いに同じだけ近寄っていくのです。地球の重力がはるかに大きいからです。これは明らかに地球重力の影響なのです。相対性理論を信奉している人もこれは認めています。

 そのほかにも、重力は距離の2条に反比例して少なくなるというので、足と頭では地球に引っ張られる力が違ってきます。そのために体が引き伸ばされるのです。そして、互いに近づく力が働くので、地球に近いほうが押し縮められます。これらを潮汐力といいます。

 自由落下するエレベーターの中でも、この現象が残っているというのです。そうすると、重力が消えていない証拠になってしまいます。

 これには相対性理論者も困ってしまいました。

 

2 考察


そこで解決策としてこんなことを考えたみたいです。

 

(1) 小さくする


 ある人は、小さくしようと考えました。その現象は存在するのだから、仕方がない。そこで、エレベーターを小さくしていこうと考えたのです。どれくらい小さくするかというと、近寄るのや、引き伸ばされるのが観測できないくらい小さくしようというのです。ミクロの世界、あるいは、量子の世界です。そうすれば、観測できないのだから、潮汐作用は存在しないということになるそうです。なんだか変な話ですね。

 でも、これでは何の解決にもなりません。そんなエレベーターの中に、どんなりんごや人が乗って観測しているのか知れませんが、肝心の無重力で浮いていることさえ観測できなくなります。自由落下は、重力を消すことができるという証明になりません。いえるのは、何にも観測できませんでしたということだけです。

 

(2) 空間を曲げる


ア 空間の曲がり方

 やはり、「潮汐力は、どんな自由落下系でも、消せない」ということをまず認めてからはじめます。そして、この現象は、重力によって空間が曲がっているから起こる、ということにしてしまいます。

 そしてこんな例を引き合いに出します。

「赤道上から、2機のジェット機が、真北に向かって飛んでいきます。すると、2機のジェット機は、北極上空でぶつかります。どちらも真北に飛んでいるのにぶつかったのは空間が曲がっているからです」というのです。


イ 本当に曲がっているのか

 このことを、非ユークリッド幾何学などを持ち出してその正当性を論じるのですが、そんな大げさなことを持ちださなくったって、地球は球なのだからジェット機がそのように飛ぶのは当たり前のことです。空間が曲がったわけではありません。ジェット機だからぶつかるので、ロケットならぶつかったりしません。ロケットは、まっすぐ宇宙空間を並んでどこまでも飛んで行きます。ジェット機は宇宙に飛び出せないから、地球の表面に沿って曲がって飛ぶしかないからです。ジェット機は最初から曲がって飛んでいるのです。

 分かりやすくするために、地球儀を持ち出します。まっすぐに切った細長い紙を2枚用意します。それを、地球儀の赤道から北に向かって、垂直に張ります。まっすぐ張ったのに、2本の紙は確かに北極上で重なります。しかし上から見た紙はまっすぐでも、横から紙を見ると、曲がっています、4分の1円を描いて曲がっています。これを真っ直ぐだとどうしていえるのでしょう。

 今度は、真っ直ぐで硬くて曲がらない棒を2本用意します。赤道上から赤道に直角に地球儀の接線上に棒を貼り付けます。この2本の棒は、平行なままでぶつかりません。しかも、どこから見ても、真っ直ぐです。紙で表したのがジェット機の軌跡です。棒がロケットです。紙が表したのは2次元です。棒が表したのは3次元です。紙のほうがぶつかるのは、曲がっている高さという次元を、見て見ぬ振りをして、無視しているからです。

 われわれは3次元に住んでいます。われわれは決して2次元には住めません。たてと横だけで、高さのないものは空想の世界にはあっても、われわれの世界には存在しません。紙も本当は高さを持っています。1本の線だって、立て、横、高さをもっています。そうでなければ、見ることさえできないのです。したがって、判断するときは必ず3次元で判断しなければなりません。理論につごうがいいからといって、一番肝心なところを無視してはだめです。まあ、肝心なところを見ないようにするのは相対性理論者の得意とするところですが。


ウ 現実に照らし合わせる

 もし、このジェット機が飛んだように地球上の空間が曲がっていたら、空間はどのように曲がることになるかを考えてみます。

 南極上空と、北極上空で物を落とします。二つの物体の自由落下の方向は正反対です。この現象が空間の曲がりで起こっているなら、地球の反対側どうしでは、空間は正反対に曲がっているということです。地球の重力でこんなに曲がっていいものでしょうか。

 月でもやはり同じことが起こります。先日見た小惑星の写真では、衛星が写っていました。するとこの小惑星でも、反対側では空間が完全に反対方向に曲がっていることになります。小さな重力でも、空間を見事に曲げることができるようです。

 光を考えて見ます。相対性理論では、光も空間の曲がりに沿って動くということがいわれています。そこで、赤道上の2地点から、真北に、地球の接線上に光を発射します。この光は、空間の曲がりに沿って動くので、ジェット機の飛んだ航跡と同じコースを飛んで、北極上空でぶつかります。この光を横から見ると、地球の表面に沿って4分の1円を描いて北極に到達しています。月で同じ実験をやっても、同じように光は曲がります。月は小さいから、曲がり方は急カーブになります。地球より質量の小さな月のほうが、空間を大きく曲げています。先ほどの小惑星上ではもっと大きく曲がります。

 では、北極を通過した光はどこへ行くでしょう。もちろん南極です。ジェット機の進路を考えたら、空間は地球を取り巻いて、ぐるっと曲がっているのですから。

 光は1秒間に地球を7回り半と子供のころ教わったけれど、本当に地球をぐるぐる回っているとは知りませんでした。私は、「本当は、光はまっすぐ宇宙のかなたへ飛んでいくんだよ」と教わったのですがね。

 

3 結論


(1) どこからおかしくなったのでしょう

 簡単です。空間が曲がっているという前提を置いたところからです。空間は曲がっていないのに、潮汐力を相対性理論と矛盾しないようにするために、無理やり空間が曲がっていることにしたから、現実と食い違ってしまったのです。

 一歩譲って、空間が曲がっていることにしても、エレベーターの中の重力が消えていることにはなりません。エレベーターの中の空間が曲がっているのなら、自由落下中のエレベーターの中も空間を曲げる重力が入り込んでいることになるからです。

 重力が消えているというためには、どうしても、エレベーターの中では潮汐力は消えているという実験結果が要ります。

 

(2) ではどうすればいいか

 残念ながら、今のところ、万有引力を消す方法は見つかっていません。エレベーターに窓をつけなくても同じです。だから、潮汐力を消す方法はありません。もしその方法ができたら、夢の乗り物ができます。昔、そういう乗り物で、月旅行をする空想科学小説を読んだことがあります。

 実際は、潮汐力がエレベーターの中に現れる理由はうやむやのままで、ま、いいだろということにしてしまいます。この実験を中性子星の上でやるとりんごも人も痩せてしまうでしょう。本当のところは、重力は消えていないのだから、うやむやにするしか手はないんです。そうでもしないと、一般相対性理論はしょっぱなからつまずいてしまうことになって一歩も先へ進めなくなってしまいます。

 相対性理論とはそういうものみたいです。つごうの悪いことは、見なかったり、相手にしなかったり、最初っから予防線を張っていたり、言葉上のトリックで丸め込んだり、うやむやにしてぽんと捨てたりします。王様は本当は服を着ていないのだから、言葉巧みにならざるを得ないんです。現実を無視するしかないのです。アインシュタインはよく言います。「この現象が起こることはほとんどないから、観測されることはないだろう」と。王様の服は、実際、観測されることはありません。

 

知らぬは亭主ばかりなり
悪魔の目玉はぎらりと光る
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