相対性理論とニュートン力学
このあと本文になりますが、そこでは、たびたび、相対性理論と対立する考えとして、ニュートン力学がでてきます。相対性理論者は、相対性理論の重力場方程式とニュートンの万有引力の方程式は、ほとんど同じだからニュートン力学は相対性理論の近似値であり、相対性理論に含まれるといってます。
ブラックホールのように、特殊な場合を除けば、二つの式は同じになるというのです。普通の星ばかりではなく、あの、超巨大な、銀河団の重力でさえ相対性理論の式もニュートン力学の式も一致するので、対立するものではないといっているようです。いわゆる自然現象のほとんどすべてにわたって、大丈夫だというのです。違いは、相対性理論のほうは、ブラックホールも計算できるけれど、ニュートンはブラックホールは計算できないということらしいです。だから、相対性理論のほうが、優位にあるということで、重力場方程式のほうが、万有引力の方程式を含むという主張です。
確かに、今、地球上のほとんどのことはニュートン力学で計算しています。地球以外にも、太陽系のことも、銀河系のことも、230万光年離れたアンドロメダ銀河のことも、要するに、観測できる宇宙の全てのことは、ニュートンの万有引力の法則で計算しています。相対性理論は普通に目や望遠鏡で見える現象には出てきません。ブラックホールの近傍以外はニュートンで正しく計算できるから相対論は使わないと、わざわざことわっている人もいます。(実際に存在するように言われているけれど、西暦2004年末現在、ブラックホールは実際には確認されていません。まだ理論の中だけの存在です。だから、実際にそのような現象が観測されたときに、重力場方程式に合致するのか、万有引力の方程式に合致するのかは今のところ完全に未知数です。推論の域を出ていません)
本当にニュートン力学は、相対性理論に含まれるのでしょうか。私にはそうは思われないのです。二つの考え方はまるで違います。これを同じものとして扱うことはできないと思います。
そこで、二つの理論がどれだけ違っているか、基本となる考え方について表にして見ます。
項目 |
空間 |
光 |
時間 |
重力 |
|||
相対性理論 |
絶対静止はない (相対空間) |
光や、重力で、曲がったり、伸び縮みしたりする
|
真空中の光速度普遍 (観測者に対する速度が普遍) |
重力に影響される |
速度や、重力で変幻自在に伸び縮みする (相対時間) |
消えるときがある |
空間や光や時間も引き寄せる |
ニュートン力学 |
絶対静止がある (絶対空間) |
何物にも微動だにしない
|
真空中の光速普遍 (絶対静止に対する速度が普遍) |
重力には影響されない |
何物にも左右されない (絶対時間) |
消えない |
質量のある物どうしにしか作用しない |
項目 | 考え方 |
相対性理論 | 見え方が物理量に影響する (例) ロケットがどちらが動いているかわからないので、動きは相対的になる 落下するエレベーターの中で、重力が消えたように見えるので、重力が消える。 列車の中と外で、光の見え方が違うので、時刻が変わる |
ニュートン力学 | 見え方は物理量に影響しない。 |
このように、相対性理論とニュートン力学は根本的に正反対の考え方です。というより互いに否定しあう関係です。だから、一方が正しければ、もう一方は必ず間違いです。両方正しいということはありえません。
これで見る限り、ニュートン力学は相対性理論に含まれるということはいえません。以前問題になった、円周率を3にするか、3.14にするかとは根本的に違う問題です。円周率の場合、考え方は同じです。式も同じです。答えも同じです。違いは、同じ答えのどこまでの値をとるかだけです。だから、近似値になります。
しかし、この、相対性理論と、ニュートン力学は、世の中の物理的仕組みに関しての基本的な、すなわち、一番重要な部分の考え方が互いに否定しあう関係になっています。普通の現象を計算するときには式が同じになるからニュートン力学は相対性理論の近似値である、とは絶対にいえません。まして、ニュートン力学は相対性理論に含まれるとはどこをとってもいえません。
もしこれが、中学校や高校の数学のテストなら、「よく答えだけ合ったな。カンニングでもしたか」と言われるのがおちです。ニュートンは、アインシュタインのはるか前に死んでいるので、ニュートンは相対性理論をカンニングすることはできません。一方、アインシュタインはニュートン力学も土台にしているふしがあります(注1)。もちろん科学はそれまでの真実に積み上げていくのだからそれが悪いということではありません。ただ、相対性理論は、ニュートンの考え方を全面的に否定しているのだから、積み上げるというわけにはいかないのじゃないかと思うのです。もし、考え方が完全に違っていても式が同じなら同じことだというのなら、原理なんて何のために存在するのでしょう。上に書いた原理の違いはまるで意味がなくなってしまいます。相対的に動いていようが絶対的に動いていようが、時間が延びようが延びまいが、空間が曲がろうが曲がるまいが、結果は同じなんだから。
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